第196号(2021年3月号[21/3/1発行])

新型コロナウイルス感染症について(その13)

 草花の芽生えに春の訪れが感じられる3月に入りましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
3月1日に兵庫を含む近畿地方の5府県と福岡県での新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除されましたが、2月28日の時点で、県内の新規陽性者数は26名、累計陽性者数は17,968名、同死者数は530名と決して安心できる状況ではありません。また、兵庫県内ではすでに新型コロナウイルス感染症の変異株が確認されていますが、3月1日に発表された神戸市における変異株サーベイランスの状況によれば、1月1日から28日までの市内での新規陽性者1,962名中677名に対して行った変異株検査では0だったN501Y変異が、2月12日から18日までの122名中79名において12名(15.2%)に認められたことが明らかになり、変異株の割合が徐々に増えてきていることが懸念されています。

ですので、緊急事態宣言が解除された今こそ、感染再拡大(リバウンド)を予防するために、従来通りの個人のできる基本的な新型コロナウイルス感染症予防策、即ち、三密の回避、マスクの着用、手洗いの徹底を行っていただくとともに、特に年度末、年度初めの歓送迎会、花見での宴会、卒業旅行等は控えていただきますようにお願いします。

さて、新型コロナウイルス感染症対策の切り札として期待されている新型コロナウイルスワクチンですが、本邦での初めてのワクチンとして、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名:コミナティ筋注用、製造販売:ファイザー、技術協力:ビオンテック、有効成分トジナメラン)が2月14日に特例承認されました。承認後、国立病院機構、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構(労災病院)において、医療従事者向け先行接種と接種後の健康状況調査が始まっていますが、3月からは、その他の医療機関において医療従事者向け接種が始まる見込みです。65才以上の高齢者向け接種については、4月12日から限定的に始め4月26日の週に全市町村に配送と報道されていますが、接種の実施は各市町村に委ねられていますので、今後の各自治体からの通知を待って対応頂きますようによろしくお願いいたします。

ところで、日本リウマチ学会(JCR)から新型コロナウイルスワクチン接種に関する医師向けの見解が2月15日に出されましたので、一部を紹介させて頂きます。

COVID-19ワクチン接種に関するJCRの見解(2021年2月15日時点、医師向け、一部抜粋)

Q1:COVID-19ワクチンを、リウマチ性疾患患者さんに接種すべきか否か?

A:ワクチン接種は強制ではなく、個人の自由意思による選択であることは最初に強調したいと思います。そのうえで欧州リウマチ学会の見解を紹介します。「すべての人にとってCOVID-19ワクチン接種は賢い選択である」としています。また「リウマチ性疾患患者がワクチン接種を差し控える理由がみあたらない」と踏み込んでもいます。米国リウマチ学会もワクチン接種を強く推奨しています。

Q2:COVID-19ワクチンの副反応は、リウマチ性疾患患者さんで問題になるか?

A:判断の材料となる情報が不足しています。臨床試験の結果では比較的安全性は高いと思われます。ただし本当に安全かどうかはより多くの症例について数年にわたる観察が必要です。

リウマチ性疾患患者さんでとくに注意すべき副反応は、アナフィラキシーショック、原疾患のリウマチ性疾患の悪化の二つであると考えます。ただしファイザー社製mRNAワクチンでアナフィラキシーショックがリウマチ性疾患患者さんで増えるという報告はありません。また理論上はワクチンのアジュバント効果による原疾患の悪化はありえますが、実際に悪化したという報告はありません。欧州リウマチ学会の見解は「現病の悪化はありそうにないがデータが不足している」です。JCRではワクチン調査検討委員会を設置して副反応について情報の収集と解析を進める予定です。


アダリムマブ後続1アダリムマブBS皮下注「FKB」が採用されました

 ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤アダリムマブ(遺伝子組換え)(商品名:ヒュミラ®、製造発売:アッヴィ、発売:エーザイ)の初めてのバイオ後続品、アダリムマブBS皮下注40mgペン0.8mL「FKB」(アダリムマブ(遺伝子組換え)[アダリムマブ後続1]、製造販売:協和キリン富士フイルムバイオロジクス、販売:マイランEPD)が3月から院内・院外処方で採用されました。アダリムマブBS40mg「FKB」の薬価は39,849円で、先行品ヒュミラ®皮下注40mgペン0.4mLの薬価62,620円の63.6%です。後続品への切り替えを希望される患者さんは主治医までご相談下さい。


リウマチ教室のご案内(オンラインで開催しています)

 神戸大学整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中でより良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております(開催週は月により異なりますので予めご確認ください)。関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

さて、昨年3〜5月のリウマチ教室は新型コロナウイルス感染症の流行防止のため開催を中止させていただきましたが、6月から会議システム(Zoom)を用いてオンラインに変更してリウマチ教室を開催しています。さらに9月からはZoomのブレークルーム機能を使用して個別相談も再開しています。当面の間、オンラインでの開催を続ける見込みですので、自宅からご参加ください。3月のリウマチ教室では、三浦准教授から関節リウマチや変形性関節症の患者さんを対象として行われる人工関節置換術についてお話させていただきますので、関節リウマチだけでなく変形性関節症の患者さんも、ぜひご参加ください。

 オンラインでのリウマチ教室は、通常のリウマチ教室への来院が困難な遠方にお住まいの方でも、パソコンあるいはスマートフォンからインターネットへの接続ができればご参加いただけます。参加は無料ですが、通信にかかる費用は参加者負担となりますので、ご自宅等の通信容量に制限のないインターネット環境からの参加をお勧めします。

なお、通常の対面での教室と異なり、セキュリティーを保護してオンライン上のトラブルを防止するために、オンライン教室への参加はメールでの事前申し込み制とさせていただきます。


神戸大学整形外科リウマチ教室(オンライン開催)

日時:2021年3月18日(木)13:30-14:30(第3週です)

演題:「関節リウマチと変形性関節症に対する人工関節置換術のお話」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2021年4月15日(木)13:30-14:30(第3週です)

演題:「リウマチ患者さんのワクチン接種について」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


オンラインリウマチ教室参加申し込み方法

参加申し込み方法:前月のリウマチ教室の終了後から開催前日の17:00までに、「○月オンラインリウマチ教室参加希望」とタイトルを入れ、本文に参加者のお名前を記入して、以下のアドレスまでメールをお送りください。折り返し、Zoomでの参加に必要なリンク、会議IDとパスワードをお送りします。携帯アドレスをご利用の場合、こちらからの返信を受信できない場合がありますので、PC用のアドレスから送信ください。

申し込み先:miura■kobe-u.ac.jp(■を@に変更ください)

開始時間までにZoomのアプリを予めインストールいただけますとスムーズに参加いただけます。

皆様のご参加をお待ちしております。


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-3神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2021.3.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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