第191号(2020年9月号[20/9/1発行])

今シーズンのインフルエンザワクチンの接種について

 10月に入ってすっかり秋らしく涼しくなってきましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

さて、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が懸念される今年の冬は、インフルエンザワクチンの接種が強く推奨されています。そのため、例年10月半ばから開始されるインフルエンザワクチン接種ですが、今年は10月1日から開始されました。

今シーズンのインフルエンザワクチンは、A/広東-茂南/SWL1536/2019(CNIC-1909)(H1N1)、A/香港/2671/2019(NIB-121)(H3N2)、B/プーケット/3073/2013 (山形系統)、B/ビクトリア/705/2018(BVR-11)(ビクトリア系統)の4つの株から構成されていますが、B/プーケット/3073/2013 (山形系統)を除く3つの株は昨年度のワクチンから変更になっています。可及的速やかにインフルエンザワクチン接種を受けて頂きますようによろしくお願いします。



新規JAK阻害薬フィルゴチニブ(ジセレカ®)が承認されました

ヤヌスキナーゼ(JAK)は細胞内でシグナル伝達に関わるチロシンリン酸化酵素(キナーゼ)のひとつで、様々なサイトカインの受容体に細胞内で結合していて、サイトカインによる刺激が細胞の核に達して遺伝子の転写を介して、その作用を発揮する経路に欠かせない重要な役割を果たしています。

JAK阻害薬は、このJAKを抑制することで炎症性サイトカインを抑えて、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に対して効果を発揮します。JAK阻害薬は低分子量化合物の分子標的薬であるため、同じ分子標的薬であってもタンパク質でできている生物学的製剤と異なり、注射でなく経口で服用できること、生物学的製剤のTNF阻害薬やIL6阻害薬がそれぞれ特定の炎症性サイトカインだけを抑制するのに対して、複数のサイトカインに対して作用するという特徴を有しています。

JAKファミリーには、JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2の4種類が知られており、JAK3はリンパ球に、JAK1、JAK2、Tyk2は様々な細胞に発現しますが、JAK1はサイトカイン誘導性の炎症性シグナル伝達に、JAK2は赤血球発生に、JAK3はナチュラルキラー(NK)細胞増殖シグナル伝達に、それぞれ重要な役割を果たしていると考えられています。

すでに上市されているJAK阻害薬として、トファシニチニブ(ゼルヤンツ®)が2013年に、バリシチニブ(オルミエント®)が2017年に、ペフィシチニブ(スマイラフ®)が2019年に、ウバタシチニブ(リンヴォック®)が本年2月にそれぞれ承認されていますが、この度、5剤目のJAK阻害薬としてフィルゴチニブ(ジセレカ®)100mg錠、200mg錠(製造販売:ギリアド・サイエンシズ、販売:エーザイ)が承認されました。ジセレカ®は、JAKファミリーのうちJAK1を選択的に阻害することで、増殖シグナルやNK細胞による生体防御への影響を避けて抗リウマチ作用を発揮することが期待されています。ジセレカ®の適応症は、「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」で、「過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に」限って投与されます。用量用法は、「通常、成人には200 mgを1日1回食後に経口で投与、患者さんの状態に応じて100mgを1日1回投与することができる」となっています。今後、薬価収載を経て発売される見込みですが、ジセレカ®を服用される患者さんを対象とした全例調査が先行の全てのJAK阻害薬と同様に実施される予定です。薬価及び当院での採用については、決定しましたら、当リウマチだよりでお伝えさえていただきます。


リウマチ教室のご案内(オンラインで開催しています)

 神戸大学整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中でより良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております(開催週は月により異なりますので予めご確認ください)。関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

さて、3〜5月のリウマチ教室は新型コロナウイルス感染症の流行防止のため開催を中止させていただきましたが、6月から会議システム(Zoom)を用いてオンラインに変更してリウマチ教室を開催しています。さらに9月からはZoomのブレークルーム機能を使用して個別相談も再開しています。当面の間、オンラインでの開催を続ける見込みですので、ご自宅からご参加ください。10月のリウマチ教室は、菅管理栄養士からリウマチの食事療法に関してお話させていただきますので、ぜひご参加ください。

 オンラインでのリウマチ教室は、通常のリウマチ教室への来院が困難な遠方にお住まいの方でも、パソコンあるいはスマートフォンからインターネットへの接続ができればご参加いただけます。参加は無料ですが、通信にかかる費用は参加者負担となりますので、ご自宅等の通信容量に制限のないインターネット環境からの参加をお勧めします。

なお、通常の対面での教室と異なり、セキュリティーを保護してオンライン上のトラブルを防止するために、オンライン教室への参加はメールでの事前申し込み制とさせていただきます。


整形外科オンラインリウマチ教室スケジュール
(2020年10月- 2021年1月)

日時:2020年10月29日(木)13:30-14:30(第5週です)

演題:「知って得する!リウマチの食事療法」

講師:栄養部 菅 里沙子 管理栄養士

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2020年11月19日(木)13:30-14:30(第3週です)

演題:「リウマチの療養に必要な冬対策」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


12月は年末につき教室はお休みです。


日時:2021年1月21日(木)13:30-14:30

演題:「2021年:リウマチ治療の展望」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


オンラインリウマチ教室参加申し込み方法

開催前日の17:00までに、「○月オンラインリウマチ教室参加希望」とタイトルを入れ、本文に参加者のお名前を記入して、以下のアドレスまでメールをお送りください。折り返し、Zoomでの参加に必要なリンク、会議IDとパスワードをお送りします。携帯アドレスをご利用の場合、こちらからの返信を受信できない場合がありますので、PC用のアドレスから送信ください。

申し込み先:miura■kobe-u.ac.jp(■を@に変更ください)

開始時間までにZoomのアプリを予めインストールいただけますとスムーズに参加いただけます。

皆様のご参加をお待ちしております。


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-3神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2020.10.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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