第183号(2020年2月号[20/2/1発行])
新型コロナウイルス感染症について
報道等ですでにご存じのことと思いますが、中国湖北省武漢市において発生が報告された新型コロナウイルス感染症は、日本を含む世界各国で発生が報告されています。世界保健機関(WHO)は国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当すると1月31日に発表し、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症を、感染症法に基づく「指定感染症」と、検疫法に基づく「検疫感染症」に指定しました。予防法としては、一般的な衛生対策としての、咳エチケットや手洗い、うがい、アルコール消毒などが推奨されています。リウマチ患者の皆様におかれましては、これまで同様に感染予防の対策を行っていただけますようによろしくお願いいたします。なお、詳細な情報につきましては厚生労働省のホームページを参照ください。
経口JAK阻害薬ウパダシチニブ(リンヴォック®)錠7.5mg、15mgが
承認されました
ヤヌスキナーゼ(JAK)は細胞内でシグナル伝達に関わるチロシンリン酸化酵素のひとつであり、JAK阻害薬はJAKを抑制することで種々の炎症性サイトカインを抑えて抗リウマチ作用を発揮します。JAK阻害薬は低分子量化合物の分子標的薬であるため、同じ分子標的薬であってもタンパク質でできている生物学的製剤と異なり経口で服用できること、また、生物学的製剤のTNF阻害薬やIL6阻害薬が特定のサイトカインのみを抑制するのに対して、複数のサイトカインに対して作用するという特徴を有しています。先行するJAK阻害薬として、トファシニチニブ(ゼルヤンツ®)が2013年に、バリシチニブ(オルミエント®)が2017年に、ペフィシチニブ(スマイラフ®)が2019年にそれぞれ承認されていますが、この度、4剤目のJAK阻害薬としてウバタシチニブ(リンヴォック®)が承認されました。リンヴォック®の適応症は、「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」であり、「用量用法は、通常、成人には15 mgを1日1回食後に経口で投与する。患者さんの状態に応じて7.5mgを1日1回投与することができる。」となっています。今後、薬価収載を経て発売される見込みですが、リンヴォック®を服用される患者さんを対象とした全例調査が先行のJAK阻害薬と同様に実施される予定です。薬価及び当院での採用については、当リウマチだよりでお伝えさえていただきます。
乾燥組換え帯状疱疹ワクチン「シングリックス®筋注用」の発売が
開始されました
帯状疱疹は、小児期に水痘(水ぼうそう)に罹患した際に体内の神経節に潜んだ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が、ウイルスに対する免疫が低下した際に活動を再開して発症する疾患で、身体の左右どちらかの神経の走行に沿って帯状に、赤い発疹や水疱とピリピリした疼痛が生じます。帯状疱疹を発症してしまった場合には、抗ウイルス薬による速やかな治療が重要ですが、患者さんによっては皮膚の症状が治ったあとも長期感に渡って強い疼痛が続く帯状疱疹後神経痛が生じます。帯状疱疹に対しては予防接種がありますが、本邦で従来使用されてきた乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」(製造販売:阪大微生物病研究会、販売:田辺三菱製薬)は生ワクチンであることから、免疫抑制剤で治療中のリウマチ患者さんは、接種による発症リスクがあるために接種を受けることができませんでした。
一方、2018年に承認された乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)(シングリックス®筋注用、製造販売:グラクソ・スミスクライン)は、遺伝子組換え技術を用いてVZVの糖タンパクE抗原を合成しアジュバントを添加したサブユニットワクチンと呼ばれる不活化ワクチンの一種であるため、免疫抑制剤で治療中のリウマチ患者さんでも接種を受けることができます。しかし、海外での需要に生産が追いつかず、承認後未発売の状況が長く続いていましたが、今年の1月にようやく本邦での発売が開始されました。
シングリックス®の効能・効果は帯状疱疹の予防で、接種の対象は50歳以上の成人、用法・用量は0.5mlを2カ月間隔で2回、三角筋に筋肉内注射します。メーカー希望価格は16,500円/本(接種にかかる手技料及び消費税が別途必要です)で、定期接種ではなく任意接種のため接種に対する助成はありません。当院での採用については、当リウマチだよりでお伝えさえていただきます。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の診療科や医療機関で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、検査結果やお薬手帳などをできるだけご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、新規の参加者優先で、また、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご理解とご協力のほどよろしくお願いします。なお、教室では、診察はできませんので、受診をご希望の場合には、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診下さいますようにお願いいたします。
さて、2月の教室では、三浦准教授から、若い患者さんとご家族に向けてライフイベントに関する講演をさせていただきますので、年齢にかかわらずご参加いただけましたら幸いです。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2020年2月-2020年6月)
日時:2020年2月6日(木) 午後1時30分-2時30分(第1週です)
会場:外来診療棟4階第2会議室(通常と異なりますのでご注意ください)
演題:「若いリウマチ患者さんとご家族へ:就職・妊娠・出産・育児のお話」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2020年3月5日(木) 午後1時30分-2時30分(第1週です)
会場:外来診療棟4階第2会議室(通常と異なりますのでご注意ください)
演題:「人工関節置換術など整形外科手術による機能再建」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2020年4月16日(木) 午後1時30分-2時30分(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「知っておきたい関節リウマチの豆知識」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2020年5月14日(木) 午後1時30分-2時30分(第2週です)
会場:外来診療棟4階第2会議室(通常と異なりますのでご注意ください)
演題:「リウマチ患者さんと装具」
講師:澤村義肢製作所 岡田 佳奈 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2020年6月18日(木) 午後1時30分-2時30分(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチとお口の管理の必要性」
講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士
司会:三浦 靖史 准教授
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2020.2.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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