第142号(2016年9月号[16/9/1発行])

台風など自然災害に備えましょう

 8月末に東日本を襲った大型の台風10号は、通常の台風と異なるルートを通った結果、東北地方と北海道に大きな被害をもたらしました。犠牲になられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々が一日も早く普通の生活に戻れますように、そして、被災をきっかけとして体調を崩されることのないことを、心から祈っております。

 さて、今シーズンは、関西に台風はまだ上陸していませんが、姫路や淡路などで台風による洪水のため大きな被害が生じたことはそれほど昔のことではありません。また、台風に限らず局地的豪雨で崖崩れや鉄砲水による被害が生じることもありますので、今回の台風をきっかけに、改めて、お近くの避難場所はどこか、ラジオ、懐中電灯、非常用食品などの防災用品が準備できているか、さらには、緊急時の連絡方法など、ご家族と一緒に防災に関する話し合いと資材の確認作業を行っていただきますようにお願いします。さらに、関節リウマチに限らず、高血圧症な糖尿病など、慢性の病気に対して定期的に薬を使用されている患者さんは、避難する際に必要な薬を速やかに持ち出せるように、分かり易い場所にまとめて薬を保管しておいてくださいますようにお願いします。また、自然災害や悪天候に限らず、急な理由により、予約日に受診できない場合に備えて、1週間分の予備の薬を、古くなることのないように、新しい薬と入れ替えながら、常に持っておいてください。もし、予備の薬がない場合には、主治医に処方を依頼してくださいますようにお願いします。


関節リウマチはこんな病気です(3)

関節リウマチはどのように治療するのですか?

①リウマチ治療の目標:

 関節リウマチの治療は、痛みを取り除くこと、関節の破壊を防ぐこと、身体の機能を維持すること、破壊されてしまった場合に関節の機能を再建すること、生活環境を改善して暮らしやすくすることを通じて、患者さんの「生活の質(quality of life: QOL)」を向上することを目的としています。そして、薬物療法が飛躍的に進歩した今日では、病気が治ったのと同じような状態を意味する「寛解」、すなわち、炎症と自覚的かつ他覚的な症状が改善した状態である「臨床的寛解」、関節破壊が止まった状態である「構造的寛解」、身体の機能が維持された状態である「機能的寛解」の3つ全てを満たした「完全寛解」を実現することが目標となっています。

②リウマチ治療の体系:

 関節リウマチによる関節の破壊は、病気にかかっている長さに比例して、一定の速度で進行するのではなく、発病して早期の2年以内に、最も急速に進行することが明らかになっていますので、関節破壊が生じるまでの「治療機会の窓(windows of opportunity)」と呼ばれる早期に、しっかりとした薬物治療を積極的に行うことで関節破壊を来さないように治療することが大切です。このような治療を実現するために「目標達成に向けた治療(treat RA to target: T2T)」と名付けた治療手順、すなわち、適切な治療を行うために、明確な治療目標を設定して、病気の活動性を定期的に評価した上で、評価に応じて治療の調整を行って、「厳格に管理する (tight control)」ことが示されています。


新規抗リウマチ薬Peficitinibの治験延長に関するご案内

 新規JAK阻害薬Peficitinib(ASP015K)の第3相試験と長期継続投与試験を、現在実施しています。新しい抗リウマチ薬を世に出すためには、患者さんにご参加いただく治験の実施が欠かせません。本治験では、発病10年以内で、メトトレキサートで現在治療を受けていて効果が十分でない患者さんの参加を募集しております。締め切りは今月までの予定でしたが、11月までに延長されましたので、治験に関心をお持ちの患者さんは、主治医までぜひ、ご相談下さいますようにお願いします。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、8月の教室では、音楽療法士の山崎郁子先生に東京からお越し頂いて、毎年好評のリウマチ患者さんを対象とした音楽療法を実施させて頂く予定です。なお、当日、音楽療法に関するアンケート調査も実施させていただきますので、ご協力お願いします。それでは、皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2016年9月-2017年1月)

日時:2016年9月15日(木)(第3週です)午後1時-2時10分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「健康と音楽」 

講師:国際医療福祉大学大学院 山崎 郁子 特任教授 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年10月20日(木)(第3週です)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチの研究アップデート」

講師:整形外科 前田 俊恒 医師

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年11月24日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「冬を元気に過ごすために」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


12月は年末につきリウマチ教室はお休みです。


日時:2017年1月26日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「2017年リウマチ治療今年の展望」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


 朝夕は涼しくなってきましたので、風邪などひかないようにくれぐれもご自愛ください。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2016.9.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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