第141号(2016年8月号[16/8/1発行])

暑中お見舞い申し上げます

 連日猛暑が続いておりますが、皆様、体調はいかがでしょうか。脱水は熱中症や尿路感染症などの誘因となりますので、くれぐれも水分と電解質を十分に補給していただき、暑い夏を元気に乗り切りましょう。


関節リウマチはこんな病気です(2)

 先月号に引き続き、関節リウマチがどのような病気なのかご説明させていただきます。

関節リウマチではどのような症状が出るのですか?

 関節リウマチの症状は、関節症状と全身症状とに大きく分けることができます。関節症状は、複数の関節に同時に生じる関節の腫れと痛みを特徴とします。発病早期には、主に手指と手首に関節の腫れと痛みが生じて、朝起きた際に手指がこわばって動かしにくく感じたり、握力が弱くなったりします。また、手の症状がなくても、足の腫れや痛みなど下肢の症状が出たり、疲れやすい、全身がだるい、微熱などの全身症状が先に出る場合もあります。

 一方、進行期には、関節炎のある関節の動く範囲が狭くなり、さらにひどくなると関節が壊れてしまって、手指や足部、脊椎に様々な変形が生じてしまいます。関節が壊れてしまうと、炎症が収まっても痛みが続いたり、身体に障害が生じて日常生活がしにくくなってしまいます。また、頸椎がずれて神経が圧迫されると手足の麻痺が生じることもあります。さらに、間質性肺炎、腎臓や腸管のアミロイドーシスなどの、生命に関わる全身症状を伴うこともあります。

どのようにして関節リウマチと診断されるのでしょうか?

 発病してできるだけ早い時期に関節リウマチと診断して、強力な薬物治療を速やかに開始し、関節の破壊を防止することを目的として、アメリカリウマチ学会(ACR) とヨーロッパリウマチ学会(EULAR)が共同して作成し2010年に発表した診断基準が、関節リウマチの診断に広く用いられています。この基準は、他の関節炎の原因となる病気ではなさそう場合に、関節リウマチに特徴的なレントゲン写真像である骨びらんがあるか、なくても、症状のある関節の数と場所、リウマトイド因子(RF)あるいは抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体の値、症状が6週間以上継続しているか、C反応性蛋白 (CRP)あるいは赤血球沈降速度(血沈)の上昇の有無を、それぞれスコア化してスコアの合計が一定以上になる場合に、関節リウマチと診断します。ただし、全てのリウマチ患者さんがこの基準を満たすわけではありませんので、レントゲン写真より早期に病変を見つけることができる関節超音波検査や、核磁気共鳴像(MRI)などの画像検査も用いて診断を行います。


アバタセプト(オレンシア®)皮下注125mgオートインジェクター1mL採用のお知らせ

 6月号でお知らせしました、アバタセプト(商品名オレンシア®、製造販売:ブリストル・マイヤーズ・販売:小野薬品)のオートインジェクター(自動注射器)製剤が、従来のプレフィルド製剤からの切り替えで、院外処方薬として採用されました。8月1日以降にアバタセプトの皮下注製剤を処方する場合には、原則、オートインジェクター製剤での処方となります。なお、オートインジェクター製剤への切り替えに当たっては、再度、自己注射指導を受けて頂く必要がありますので、ご了承くださいますようにお願いします。


新規抗リウマチ薬Peficitinibの治験に関するご案内

 抗リウマチ薬として国内外で開発が進められている新規JAK阻害薬Peficitinib(ASP015K)の第3相試験と、治験を終了された患者さんで一定の条件を満たす場合に、治験薬が承認されるまで継続的に治験薬を使用いただける長期継続投与試験を実施しています。新しい抗リウマチ薬を世に出すためには、患者さんにご参加いただく治験の実施が欠かせません。本治験では、発病10年以内で、メトトレキサートで現在治療を受けていて効果が十分でない患者さんのご参加を募集しております。締め切りは9月頃の見込みですので、治験に関心をお持ちの患者さんは、主治医までぜひ、ご相談下さいますようにお願いします。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、8月の教室では、毎年恒例の、リウマチ患者さんとご家族、竹下副看護師長を中心とした外来看護スタッフ、そして保健学科の学生も加わってのおしゃべり会を開催させていただく予定です。皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2016年8月-2016年11月)

日時:2016年8月25日(木)午後1時-2時30分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」

担当:整形外科外来 竹下 副看護師長及び看護部スタッフ、保健学科学生 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年9月15日(木)(第3週です)午後1時-2時10分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「健康と音楽」 

講師:国際医療福祉大学大学院 山崎 郁子 特任教授 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年10月20日(木)(第3週です)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチの研究アップデート」

講師:整形外科 前田 俊恒 医師

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年11月24日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「冬を元気に過ごすために」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


 夏休みをご家族、ご友人の皆様と楽しくお過ごしください。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2016.8.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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