第140号(2016年7月号[16/7/1発行])
梅雨の体調管理について
昨年の梅雨も決して過ごしやすくはありませんでしたが、今年の梅雨は、豪雨の日、晴れの日、気温の高い日、低い日が目まぐるしく入れ代わり、昼間と夜間の気温差も激しいため、体が気候の変化についていけずに、リウマチ患者さんに限らず体調を崩してしまっている方を多く見かけます。また、高い湿度は、リウマチのこわばりや関節痛を悪化させてしまうため、この時期、より一層の体調管理に気をつけていただく必要があります。さらに、今年は猛暑が予想されていることから、熱中症の予防も考慮した、十分な水分とミネラルの摂取、外出時の帽子の着用、バランスの良い食事の摂取、気候を考慮した無理のない運動の実施、十分な睡眠時間の確保、うがいと手洗いの励行、汗をかいたら頻繁に着替えて体を冷やさないなど、できる限り、体調の維持管理に努めていただきますようにお願いします。
関節リウマチはこんな病気です(1)
このリウマチだよりをお読みいただく患者さんは関節リウマチのことを良くご存じの方が多いため、関節リウマチに関して説明する機会はこれまで意外と少なかったので、今回、改めて、どのような病気がご説明したいと思います。
関節リウマチはどんな病気ですか?
関節リウマチは関節の内側を覆っている薄い膜状の組織である「滑膜」に生じる炎症性の病気です。手や手指の関節を初めとして、全身の関節に症状が生じ得ます。特徴として、ぴったり左右同じ場所に生じるわけではないのですが、左右両側、複数の関節に生じて、その関節炎が持続しているうちに関節の軟骨や骨が破壊されて行きます。有効な治療が適切な時期に行われないと、関節破壊が進んで痛みは慢性になり、身体の障害が生じて、普通の日常生活を送ることが困難になってしまい、生活の質が大きく低下してしまいます。
どんな人が関節リウマチにかかりますか?
日本における関節リウマチの有病率は人口の0.3%から0.5%程度と推定されています。性別では、女性は男性の約5倍多く、発病年齢は、40-60才台が最も多いので、中年女性の病気のイメージが強いのですが、近頃では寿命が延び、65才以上が人口の1/4を占めるほど高齢者が増加していることもあって、高齢になってから初めて関節リウマチを発病する患者さんも少なくありません。ですので、高齢者の関節痛イコール関節軟骨のすり減りが原因の変形性関節症と決めつけてかからずに、特に関節痛があちらこちらの関節に持続的に生じている場合には、リウマチを疑って検査を受けることが必要です。また、家系内に複数のリウマチ患者さんがおられることがあり、関節リウマチの発病には遺伝的な体質が関与していることが知られています。ただし、家族にリウマチ患者さんがいない患者さんの方がずっと多く、あくまで体質の遺伝であって、病気が直接遺伝する訳ではありませんので、過剰な心配をする必要はありません。
なぜ、関節リウマチになるのでしょうか?
関節リウマチは、遺伝的体質や、年齢、女性ホルモンなどの、患者さん自身に由来する因子と、感染症の罹患、身体的・精神的ストレスなどの発病の引き金となる環境因子の双方が関与して発病すると考えられていますが、治療方法が大きく進歩した今日でも、関節リウマチの発病そのものの仕組みは未解明のままです。
関節リウマチでは、どのようなことがおこっているのでしょうか?
関節滑膜に、T細胞、B細胞、貪食細胞などの免疫に関わる様々な細胞が集まって、慢性の炎症が生じています。これらの細胞が産生した蛋白分解酵素が、関節軟骨や関節周囲の骨を溶かすため、関節が壊れてしまいます。腫瘍壊死因子 (TNF)αやインターロイキン6(IL-6)、IL-1βなどの炎症性サイトカインと呼ばれる細胞間の情報伝達に関わるタンパク質が、滑膜炎が持続的に生じることに重要な役割を果たしていて、これらの細胞と炎症性サイトカインが生物学的製剤など、分子標的薬の治療標的となっています。
(次号にその2を掲載する予定です)
新規抗リウマチ薬Peficitinibの治験に関するご案内(再掲)
抗リウマチ薬として国内外で開発が進められている新規JAK阻害薬Peficitinib(ASP015K)の第3相試験を、当科で実施しています。また、治験を終了された患者さんで一定の条件を満たす場合に、治験薬が承認されるまで継続的に治験薬を使用いただける長期継続投与試験も実施しています。新しい抗リウマチ薬を世に出すためには、患者さんにご参加いただく治験の実施が欠かせません。治験の性質上、ご参加頂ける人数は限られていますが、本治験では、ご参加頂ける患者さんを引き続き募集しております。発病10年以内で、メトトレキサートで現在治療を受けていて効果が十分でない、治験に興味をお持ちの患者さんは、主治医までご相談いただけますようによろしくお願いします。 なお、参加の締め切りは現時点では9月頃の見込みです。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、7月の教室では、野口副看護師長から、リウマチ患者さんにとって大切な足のお手入れ方法に関するお話させていただく予定です。皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2016年7月-2016年10月)
日時:2016年7月21日(木)(第3週です)午後1時-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「足のお手入れについて」
講師:看護部 野口 まどか 副看護師長
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2016年8月25日(木)午後1時-2時30分(時間が異なります)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」
担当:整形外科外来 竹下 副看護師長及び看護部スタッフ、保健学科学生
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2016年9月15日(木)(第3週です)午後1時-2時10分(時間が異なります)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「健康と音楽」
講師:国際医療福祉大学大学院 山崎 郁子 特任教授
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2016年10月20日(木)(第3週です)午後1時-2時分
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチの研究アップデート」
講師:整形外科 前田 俊恒 医師
司会:三浦 靖史 准教授
湿気の多いこの時期、体調管理には十分に気をつけて元気にお過ごしくださいますようにお願いします。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2016.7.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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