第135号(2016年2月号[16/2/1発行])

関節に水が溜まることについて

 関節リウマチに限らず、変形性関節症など、関節に水が溜まる病気で悩んでおられる患者さんは少なくありません。特に膝関節の軟骨がすり減ってしまう変形性膝関節症は、患者数が非常に多く、高齢者の生活の質の低下や、要介護の原因となる主な病気のひとつとなっています。それでは、そもそも、関節に溜まる水とはなんでしょうか。

 関節は、身体を動かす運動器のひとつであり、骨と骨とを連結させて、筋肉とともに、体を動かすことと体を支えることを両立させています。関節は骨、関節軟骨、関節包、靱帯、滑膜などの組織から構成されていますが、このうち滑膜は、関節の袋である関節包の内壁を覆っている薄い膜状の組織で、関節液(滑液)と呼ばれる粘稠な液体を産生しています。器械油が器械を潤滑するように、関節液は関節を潤滑するとともに、血行のない関節軟骨を栄養しています。この関節液が何らかの理由により過剰に産生されて、関節内にたくさん溜まってしまった状態のことを関節水腫(関節水症)と呼びます。

 関節水腫の原因は、①変形性関節症、特発性骨壊死、骨端症などの変性・虚血性疾患、②関節リウマチ、偽痛風、痛風などの炎症性疾患、③もともとは無菌である関節内に病原菌が入って生じる化膿性関節炎、④靱帯損傷、関節軟骨損傷、関節内骨折などの外傷や、血友病により関節内に血液が溜まった関節血症、など様々な病気があります。そのため、高齢者の関節水腫の最も多い原因疾患は変性性関節症ですが、高齢者が関節水腫を来したからといって、変性性関節症と決めつけてはいけません。

 関節水腫に対しては、関節穿刺を行って関節液を採取して、量、色、粘稠度、濁り・血液・脂肪滴・軟骨片・浮遊物・米粒体の有無などを肉眼的に調べ、さらに、検査を行うことで、原因疾患を明らかにすることができます。特に、外傷性、化膿性、関節リウマチ、痛風、偽痛風などでは発赤、熱感、激しい疼痛を伴うこともあり、検査と治療を兼ねて関節液を取ることには大きな意味があります。

 一方で、関節の水を抜くと癖になると心配される患者さんが少なくありませんが、関節穿刺を行うことで関節水腫が慢性化するのではなく、原因となった病気が十分に改善していないために、関節水腫がまた生じてしまうということです。変形性関節症などの変性疾患では、薬物療法だけでは治療が難しい場合も多いのですが、関節リウマチの場合、関節破壊が進行する前であれば、メトトレキサートと生物学的製剤による強力な薬物療法により、関節水腫の改善が期待されます。また、原因疾患と症状によっては、ヒアルロン酸やステロイドの関節腔内への注射も関節水腫に対して有効です。


研究にご協力頂きありがとうございました

 昨年、皆様にご協力をお願いしました、卒業研究学生による「リウマチ患者さんの心と体の健康に関する研究」と「リウマチ患者さんの自己効力感と家族サポートに関する研究」の二つを無事に完了することができました。ご協力頂きました皆様に心から御礼申し上げますとともに、今後もリウマチの治療とケアをより良くするための研究を続けてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。


 新規抗リウマチ薬Peficitinibの長期試験に関するご案内(再掲)

 抗リウマチ薬として国内外で開発が進められている新規JAK阻害薬Peficitinib(ASP015K)の二つの第3相試験を、整形外科と膠原病リウマチ内科の両科で昨年秋より実施しています。また、昨年の10月からは、これらの治験を終了された患者さんで一定の条件を満たす場合に、治験薬が承認されるまで継続的に治験薬を使用いただける長期継続投与試験を開始しています。新しい抗リウマチ薬を世に出すためには、患者さんにご参加いただく治験の実施が欠かせません。治験の性質上、ご参加頂ける人数は限られていますが、本治験では、ご参加頂ける患者さんを引き続き募集しております。なお、参加の締め切りは現時点では3月頃の見込みですので、治験に興味をお持ちの患者さんは、主治医まで早めにご相談いただけますようによろしくお願いします。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、2月の教室では、三浦准教授から、若いリウマチ患者さんに向けた、様々なライフイベントにおけるリウマチとの関わり方についてお話させていただく予定です。若い患者さん限定ではありませんので、皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2016年2月-2016年9月)

日時:2016年2月18日(木)午後1時-2時(第3週です)

会場:外来診療棟4階第2会議室(場所が異なります)

演題:「若いリウマチ患者さんへ:仕事、結婚、妊娠、育児などについて」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年3月31日(木)午後1時-2時 

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチの手術と人工関節置換術」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年4月28日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチって目も悪くなるんですか?」

講師:眼科 長井 隆行 助教 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年5月19日(木)午後1時-2時(第3週です)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「装具のある生活」 

講師:澤村義肢製作所 岡田 佳奈 義肢装具士  

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年6月30日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール


日時:2016年7月21日(木)(第3週です)午後1時-2時

会場:外来診療棟4階第2会議室

演題:「足のお手入れについて」 

講師:看護部 野口 まどか 副看護師長  

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年8月25日(木)午後1時-2時30分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」

担当:整形外科外来 竹下 副看護師長及び看護部スタッフ、保健学科学生 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年9月15日(木)(第3週です)午後1時-2時10分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「健康と音楽」 

講師:国際医療福祉大学大学院 山崎 郁子 特任教授 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2016年10月20日(木)午後1時-2時 会場:神緑会館1階多目的ホール


日時:2016年11月24日(木)午後1時-2時 会場:神緑会館1階多目的ホール


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


 気候が目まぐるしく変わっていますので、風邪を引かれないようにくれぐれもご自愛くださいませ。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2016.4.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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