第111号(2014年2月号[14/2/1発行])
暦の上では立春を過ぎれば春ですが、一年で最も寒いこの時期、皆様はいかがお過ごしでしょうか。風邪をきっかけに体調を崩されないように、くれぐれもご自愛くださいますようにお願いします。
さて、iPS細胞に続いて、今度はSTAP細胞(stimulus-triggered acquisition of pluripotency cells:刺激惹起性多能性獲得細胞)の作成の成功が先日来、大きく報道されています。このように生命科学の進歩は留まることなく続いており、いずれは再生医療を初めとする治療医学に大きな進歩をもたらすことが期待されます。一方で、リウマチの治療は11年前に生物学的製剤が登場して以来、すでに劇的な進歩を遂げ、寛解に至る患者さんがすっかり増えましたが、生物学的製剤には治療費用などの様々な課題も存在しています。また、昨年には初めての経口で服用できる低分子量の分子標的薬トファシチニブ(ゼルヤンツ®)が発売されましたが、その評価が定まるには今しばらく時間がかかりそうです。いずれにしても、リウマチの治癒が可能になる日まで、病状に応じた最適なリウマチ治療を積極的に受けていただきますようにお願いします。
在宅自己注射について
患者さんが自分で注射を行う在宅自己注射は、長期にわたって頻回の注射が必要な薬剤について、患者さんの利便性の向上という利点と、病状の急変や副作用への対応の遅れという欠点を総合的に勘案して認められています。糖尿病に対するインスリン製剤の自己注射は良く知られていますが、現在ある7種類の抗リウマチ生物学的製剤のうち、エタネルセプト(エンブレル®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、セルトリズマブペゴル(シムジア®)、トシリズマブ(アクテムラ®)、アバタセプト(オレンシア®)の5薬剤と、骨粗鬆症の治療薬であるテリパラチド(フォルテオ®)は自己注射を行っていただくことが可能です(発売開始後1年が経過していない皮下注製剤ついてはお渡しできる薬が2週間分に限定されています)。抗リウマチ生物学的製剤は、手指の変形や機能の障害がある患者さんでも注射を打ちやすいように、自動注射器(エンブレル®、アクテムラ®)や、補助グリップなど、様々な工夫がされています。自己注射が上手くできるようになるまで何度でも看護スタッフによる指導を外来で受けていただけますので、自己注射に自信がない場合には遠慮なく看護スタッフ及び主治医にご相談ください。
診療の遅延に関するお詫び
1月より院内の電子カルテが更新されております。また、電子カルテだけでなく受付方法など大学病院の診療に関わるシステムも変更されています。新しいシステムでは診察の待ち時間が分かり易くなるなど患者サービスの向上が期待されていますが、電子カルテにメーカー間で統一された形式がないため、更新に際して、注射、薬、血液検査、レントゲン撮影などを再度入力しなおす必要があり、電子カルテ入力に相当の時間を要しています。さらに、電子カルテにはいくつか不都合な点が見つかっており、全ての問題が解決されるのにはまだ時間を要する見込みです。幸い、三浦准教授の水曜日の外来の医療秘書の入力業務補助は、今月中には元に戻る見込みです。診療に際して長時間お待たせしておりますことを深くお詫び申し上げますとともに、今しばらくご理解とご協力をいただけますように切にお願い申し上げます。
研究にご協力頂きありがとうございました
昨年、皆様にご協力をお願いしました、「超音波検査を用いた足関節炎の評価に関する研究」と「リウマチ患者さんの口腔ケアに関する調査」の二つの研究を無事に完了することができました。ご協力頂きました皆様に心から御礼申し上げますとともに、今後もリウマチの治療やケアをより良くするための研究を続けてまいたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、2月の教室では三浦准教授から、若いリウマチ患者さんに関わる就職や妊娠、育児に関する講演を行う予定としております。教室には年齢に関わらずご参加頂けますので、皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2014年2月-2014年5月)
日時:2014年2月27日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2014年3月20日(木)午後1時-2時(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「手術療法:人工関節置換術について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2014年4月17日(木)午後1時-2時(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「関節リウマチと装具」
講師:澤村義肢製作所 岡田 佳奈 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2014年5月29日(木)午後1時-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチとお口の管理の必要性」
講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士
司会:三浦 靖史 准教授
風邪に加えインフルエンザや感染性胃腸炎も流行していますので、うがいと手洗いにお務めくださいね。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2014.2.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
翌月のリウマチだよりはこちら
リウマチだよりのリストに戻る
神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)