第108号(2013年11月号[13/11/1発行])
ワクチンを打ちましょう
街路樹の葉が赤や黄に変わり、秋の深まりを感じる今日この頃ですが、11月に入ってからは、朝夕は一段と冷え込むようになりました。寒さは山々を美しく色づかせますが、風邪や感染性胃腸炎、インフルエンザを流行させたり、関節痛や神経痛を悪化させる原因にもなりますので、冬に向けてこれまで以上に、うがいと手洗いを励行し、バランスの良い食生活と十分な睡眠を取ることにより、風邪を引きにくい体作りに務めていただきますようにお願いします。
さて、近年、こちらからインフルエンザワクチンを案内させて頂く前に「インフルエンザワクチンを注射してきました」と報告してくださる患者さんが増えてきましたことをとても嬉しく思っています。リウマチの治療薬であるメトトレキサート(リウマトレックス®)、タクロリムス(プログラフ®)などの免疫抑制剤、生物学的製剤などの分子標的薬、そしてステロイドは、いずれも免疫を抑制する作用があります。関節リウマチは自己免疫と言われる免疫の異常が原因で生じる病気のため、これらの薬で治療をする必要があるのですが、病原体に対する抵抗力が低下気味になります。ですので、日頃から感染症予防対策を十分に行って頂く必要があります。インフルエンザと、肺炎球菌による肺炎に対しては、ワクチンの接種を受けて頂くことにより予防あるいは症状の軽減を図ることができますので、是非、受けて頂くようにお願いします。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは病原体を破壊して処理した感染する恐れがない「不活化ワクチン」のため、上記のような抗リウマチ薬を使用している患者さんでも接種を受けることができます。なお、ワクチンは接種後に効果が出るまでに通常数週間かかりますので、予めに接種しておくことが大切です。
また、2012年の厚生労働省人口動態統計によれば、肺炎は日本人の死因の第3位で、年間で12万人以上が亡くなっています。感染による肺炎は、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマなど様々な病原体によって生じますが、細菌性肺炎の原因となっている頻度が最も高い細菌がその名の通り「肺炎球菌」です。そのため、免疫力が低下しがちな65才以上の高齢者や免疫抑制作用を有する薬による治療を受けている患者さんには、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP®)の接種が推奨されています。肺炎球菌ワクチンはインフルエンザワクチンと異なり、一度接種を受けると5年間は効果が継続します(毎年接種をしてはいけません)。接種後5年を経過して効果が下がってきた場合には再接種が可能ですので、すでに5年が過ぎた場合には主治医までご相談ください。
トファシチニブ(ゼルヤンツ®錠5mg)採用のお知らせ
リウマチの原因となる炎症性サイトカインの細胞内シグナル伝達に関わる、チロシンリン酸化酵素であるヤヌスキナーゼを標的とした、初めての抗リウマチ薬であるトファシチニブクエン酸塩(商品名ゼルヤンツ®錠5mg、製造販売:ファイザー・販売:武田薬品)が、10月中旬に採用になり処方が可能にました。なお、大学病院では院外処方でのみの採用となっています。
ゼルヤンツ®は生物学的製剤と同様に分子標的薬ですが、蛋白質でできている生物学的製剤と異なり、低分子量の化合物であることから、経口で内服できることを大きな特徴とします。ただし、新しい作用機序を持つために副作用の懸念があり、発売後5年間に渡る全例調査の実施が義務づけられています。また、ゼルヤンツ®の年間薬価は1,853,470円と生物学的製剤と同様に非常に高価なことと、発売後1年間は2週間分ずつしか処方できないなど、様々な制限がありますので、ゼルヤンツ®による治療を希望される患者さんは、まずは主治医にご相談頂きますようにお願いします。
リウマチ患者さんの口腔ケアに関する調査への協力のお願い
近年、口腔衛生と関節リウマチの病態に関わりがあるのではないかと考えられるようになってきました。そこで、リウマチ患者さんの口腔ケアに関するアンケート調査を実施させていただきたいと思います。お手数をお掛けしますがご協力いただけますようにどうぞよろしくお願い申し上げます。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、11月は三浦准教授から、冬の健康対策ならびに予防接種に関する講演を予定しています。多くの皆様の参加を心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2013年11月-2014年2月)
日時:2013年11月28日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「冬の健康対策:予防接種はしましたか?」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
12月は年末につきリウマチ教室はお休みです。
日時:2014年1月30日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「2014年、今年のリウマチ治療の展望」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2014年2月27日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
第11回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
関連医療機関である神戸海星病院との共催で、土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院でのリウマチ教室に加えて、こちらにも是非ご参加ください。
日時:2013年11月16日(土)午後2時-4時30分 (午後1時30分開場)
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題1:「冬の過ごし方」 講師:眞鍋 かほる看護師
演題2:「転倒予防のためのリハビリ」 講師:リハビリテーションセンター 中 雄太 理学療法士
演題3:「冬の感染症対策」 講師:神戸大学保健学研究科/整形外科 三浦 靖史 准教授
その他、リウマチ治療に関する個別相談、インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種(費用がかかります)、
施設見学(介護付有料老人ホームコンフォートヒルズ六甲)も実施予定です。
参加は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部 電話:078-871-5201
参加は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部 電話:078-871-5201
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2013.11.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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