第101号(2013年4月号[13/4/1発行])
春が来ました
春の訪れとともに桜前線は例年よりずっと駆け足で北上しており、入学式の頃まで桜が咲いているか心配になるほどですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。厳しかった冬がようやく終わって、ほっと一息つかれている患者さんも少なくないと思いますが、春の陽気に油断されることなく、体調管理に努めていただきますようによろしくお願いいたします。
さて、3月末に3種類の抗リウマチ薬が新たに承認されました。初めての経口分子標的薬、新しい投与経路、新しい剤形と、いずれもリウマチ治療に新たな流れをもたらすことが期待される薬剤ばかりです。薬価や発売日、採用日等は未だ決まっておりませんが、第一報としてお知らせいたします。
トファシチニブ (ゼルヤンツ®錠5mg) 承認のお知らせ
これまでリウマチ治療に使用されてきた分子標的薬(体内の特定の分子を狙い撃ちすることにより優れた治療効果する薬)は、いずれも高分子量のタンパク質でできており生物学的製剤(バイオ製剤)と呼ばれ、点滴や皮下注射で投与することが必須でした。しかし、この度、リウマチの炎症に重要な役割を果たす細胞内シグナル伝達物質であるヤヌスキナーゼを標的とした分子標的薬として、低分子量の化学物質であるトファシチニブクエン酸塩(商品名ゼルヤンツ®錠5mg、製造販売:ファイザー・販売:武田薬品)が承認されました。トファシチニブは生物学的製剤と異なり消化管で分解されずに吸収されるため、飲み薬として内服できることを大きな特長とし、通常、1 回 5 mgを 1 日 2 回経口で内服します。
トシリズマブの新投与経路アクテムラ®皮下注162mg承認のお知らせ
ヒト化抗ヒトインターロイキン-6(IL-6)レセプターモノクローナル抗体トシリズマブ(商品名アクテムラ®)は、炎症性サイトカインIL-6を標的とする唯一の生物学的製剤として関節リウマチの治療に優れた効果を発揮します。これまで、体重1kg当たり8mgのトシリズマブを4週間毎に通常60分掛けて点滴静注する必要がありましたが、このたび、新しい投与経路として皮下注射製剤であるアクテムラ®皮下注162mgが承認されました。アクテムラ®皮下注は通常2週間毎に投与されますが、自己注射で投与することも可能で、充填済みシリンジとオートインジェクター(自動注射器)の2剤形が用意されています。皮下注射製剤は点滴静注製剤に比べ短時間で投与できることと、自己注射により在宅で治療できることを特長としますが、患者さんのリウマチの状態と生活スタイルに合わせて、皮下注射と点滴静注の投与経路の選択が可能になります(写真)。
エタネルセプトの新剤形エンブレル®皮下注50mgペン1.0mL承認のお知らせ
抗TNF生物学的製剤のひとつであるエタネルセプト(エンブレル®、製造販売:ファイザー・販売:武田薬品)の、ペン型のオートインジェクター(自動注射器)であるエンブレル®皮下注50mgペン1.0mLが新剤形として承認されました。薬剤の中身は従来のエンブレル®皮下注50mgシリンジ1.0mLと同様ですが、ボタンをワンクリックすることで、針先を見ずに簡単に投与でき、また、針刺し防止機能も備えられおり、自己注射をより簡便にかつ安全に実施できるように工夫されています(写真)。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、4月は、澤村義肢製作所の大西義肢装具士から、多くのリウマチ患者さんが悩まれている足趾の変形に対する装具についての講演を予定しています。スタッフ一同、皆様の参加を心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2013年4月-2013年6月)
日時:2013年4月25日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチの足趾変形に対する装具」
講師:澤村義肢製作所 大西 智樹 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年5月30日(木)午後1時-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチとお口の管理の必要性」
講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年6月27日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「関節リウマチのリハビリテーション」
講師:リハビリテーション部 井上 順一朗 理学療法士
司会:三浦 靖史 准教授
第10回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
関連医療機関である神戸海星病院との共催で、土曜日にもリウマチ教室を開催しています。大学病院でのリウマチ教室に加えて、こちらにも是非ご参加ください。
日時:2013年5月11日(土)午後2時-4時30分 (午後1時30分開場)
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題1:「関節リウマチの運動療法〜正しい運動の方法について」
講師:リハビリテーションセンター 中 雄太 理学療法士
演題2:「新しい抗リウマチ薬について」 講師:神戸大学保健学研究科/整形外科 三浦 靖史 准教授
演題3:「リウマチ患者さんの自己注射について」 講師:綾部 美咲子 外来副看護師長
個別相談・施設見学(介護付有料老人ホームコンフォートヒルズ六甲)
参加は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部 電話:078-871-5201
それでは皆様、春の暖かさと花々を満喫なさってくださいね。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2013.4.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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