第99号(2013年2月号[13/2/1発行])
暖かくして冬を元気に乗り切りましょう
1月終わりには神戸でも久しぶりに降雪があり、相変わらずの厳しい寒さが続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。寒さは関節痛や神経痛を悪化させる大きな原因となりますので、電気代、ガス代などが気にはなりますが、できるだけ部屋を暖かくしてお過ごし下さいますようにお願いします。なお、足裏の感覚が鈍くなって転びやすくなりますので、靴下の重ね履きなどの厚着にはご注意ください。また、インフルエンザやウイルス性胃腸炎が流行していますので、免疫抑制作用を持つ薬を使用していることが多いリウマチ患者の皆様は、より一層の注意が必要です。ご家族ともども、外出からの帰宅時には、うがいと手洗いをしっかりと行って頂きますように、重ねてお願いします。もし、感冒様の症状があった場合には、メトトレキサート(リウマトレックス®)の内服は休み、速やかにかかりつけ医を受診くださいますようにお願いします。
セルトリズマブ ペゴル(シムジア®皮下注200mgシリンジ)承認のお知らせ(2)
昨年12月に、関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインTNFαを標的とした5番目の生物学的製剤として、セルトリズマブ ペゴル(商品名シムジア®皮下注200mgシリンジ、製造販売:アステラス製薬・ユーシービージャパン)が日本でも承認されました。シムジア®の効能・効果は、成人に対する既存治療で効果の不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)です。シムジア®が同じくTNFαに対するモノクローナル抗体であるレミケード®、ヒュミラ®、シンポニー®と構造的に異なる点は、レミケード®がヒト遺伝子由来部分と異種由来部分が結合したキメラ抗体、ヒュミラ®とシンポニー®が完全ヒト型抗体であるのに対して、シムジア®は、抗原結合部位(CDR)以外の異種の遺伝子由来の部分をヒトの遺伝子由来に置き換えた「ヒト化抗体」の、Y字型をしている抗体構造の「茎の部分」であるFc領域を除いたFab’断片に、高分子化合物であるポリエチレングリコール(PEG)を結合させたペグ化抗TNF抗体医薬品であることです。TNF受容体とFc領域のキメラ(融合)タンパク質であるエンブレル®とも構造は異なっています。
ペグ化の仕組み
ペグ化はこれまでに、C型肝炎に対するインターフェロンα製剤などで実用化されていますが、PEG を結合されたタンパク質は体内での分解が抑制されてゆっくりとなるため、ペグ化により薬としての効力が延長されます。シムジア®は、メトトレキサート(リウマトレックス®)を併用した場合、併用しない場合の双方で、関節リウマチの症状と身体機能を改善し、関節破壊を抑制することが報告されています。シムジア®は皮下注射で投与されますが、写真の様にリウマチ患者さんが自己注射しやすいように配慮した形状のプレフィルド(充填済み)シリンジで、初回、2週後、4週後は400mg(1回につき200mgシリンジを2本)を、以後は2週間毎に200mg(1本)を使用します。症状が安定した後には4週毎で400mg(2本)を使用することや、医師の判断により自己注射に切り替えることも可能です。なお、シムジア®の薬価は今月中に決定される見込みです。
シムジア®のプレフィルドシリンジ
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、2月は、三浦准教授から、若いリウマチ患者さんのライフイベントである就職や妊娠、育児などに関する講演を予定しています。年齢にかかわらずご参加いただけますので、スタッフ一同、皆様の参加を心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2013年2月-2013年6月)
日時:2013年2月28日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年3月21日(木)午後1時-2時(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「人工関節置換術について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年4月25日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチの足趾変形に対する装具」
講師:澤村義肢製作所 大西 智樹 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年5月30日(木)午後1時-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチとお口の管理の必要性」
講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士
司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年6月27日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「関節リウマチのリハビリテーション」
講師:リハビリテーション部 井上 順一朗 理学療法士
司会:三浦 靖史 准教授
春が来るのが待ち遠しいかぎりですが、終わらぬ冬はありません。くれぐれも体調維持に気をつけて頂き、何かありましたら、速やかに、かかりつけ医または主治医を受診くださいますようにお願いします。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2013.2.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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