第98号(2013年1月号[13/1/1発行])

明けましておめでとうございます

リウマチの治療は大きく進歩しました

今は寛解そして治癒を目指せる時代です
患者さんとご家族、そして医療者とで
力を合わせて治療に頑張りましょう

本年もよろしくお願い申し上げます


神戸大学整形外科リウマチ診療グループ一同


年頭所感:2013年 

 昨年末に、神戸大学医学部の2年先輩である京都大学iPS研究所所長の山中伸弥教授が、iPS細胞の樹立に対してノーベル医学・生理学賞を受賞されたのは、本当に素晴らしいニュースでした。山中先生が研究者の道を志ざされたのには、整形外科医として当時治療薬が十分になかったリウマチ患者さんの診療に携わったことがきっかけのひとつになったとお聞きしています。iPS細胞の臨床医学への応用はいよいよこれから始まるところですが、是非、数々の難病の新たな治療や予防方法が開発されますことを、2013年の私の年始の祈りとさせていただきます。

 さて、iPS細胞の今後の展開は非常に楽しみですが、臨床で使用されるのにはまだ相当の時間を要すると考えられています。しかし、幸いなことに、関節リウマチの治療はすでに大きく進歩しており、最初の抗リウマチ生物学的製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)が国内で承認されてから今年で早くも10年になります。リウマチの症状がほぼ完全に消失し、関節破壊が進行しない状態である「寛解」を達成される患者さんも随分と増えてきました。そこで、「寛解」からさらに一歩進んだ、生物学的製剤や抗リウマチ薬を中止しても寛解が維持できている「バイオフリー寛解」や「ドラッグフリー寛解」と呼ばれる「治癒」とほぼ同じような状態が、新たな治療目標となりつつあります。一方で、寛解を達成していても、生物学的製剤や抗リウマチ薬を休薬するとリウマチが再燃してしまう患者さんもおられます。生物学的製剤の経済的な負担の重さは十分に理解できますが、再燃した場合には、リウマチによる関節破壊を進行させず、元気で普通に生活できることを最優先して、治療を速やかに再開いただけますようにお願いします。なお、次世代の抗リウマチ薬の開発は徐々に進んでおり、生物学的製剤以外の新しい治療薬も今後登場する見込みですので、生涯に渡って今日の生物学的製剤を使用し続ける訳では必ずしもありません。10年前と今日でリウマチ治療が大きく異なるように、10年後の治療もまた今日とは異なっていると思われます。

 皆様に、現在の最良のリウマチ治療を適切な時期に必要な期間受けて頂けますように、福田医師、前田医師、整形外科スタッフ、関連病院スタッフ、福祉関係の方々とも連携して、全力で治療に当たっていく所存ですので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


セルトリズマブ ペゴル(シムジア®皮下注200mgシリンジ)承認のお知らせ 

 関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインTNFαを特異的に抑制する生物学的製剤として、インフリキシマブ(レミケード®)、エタネルセプト(エンブレル®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、ゴリムマブ(シンポニー®)の4剤に加えて、セルトリズマブ ペゴル(商品名シムジア®皮下注200mgシリンジ、製造販売:アステラス製薬・ユーシービージャパン)が新たに承認されました。セルトリズマブ・ペゴルは、ペグヒト化抗ヒトTNFαモノクローナル抗体Fab’断片製剤で皮下注射により投与されます。詳細は次号のリウマチだよりでお知らせする予定です。


リセドロネート月1回製剤 (ベネット®/アクトネル®錠75mg)承認のお知らせ

 骨粗鬆症の治療薬であるリセドロネート(ベネット®/アクトネル®)は、従来、毎日あるいは週1回内服する必要がありましたが、この度、月に1回の内服で同様の効果がある月1回製剤(マンスリー製剤)が新たに承認されました。こちらも詳細は今後のリウマチだよりでお知らせする予定です。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、1月は、三浦准教授から、2013年に発売予定のリウマチ治療に使用される新薬に関する講演を予定しています。スタッフ一同、皆様の参加を心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2013年1月-2013年5月)

日時:2013年1月31日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「2013年リウマチ治療の展望」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2013年2月28日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2013年3月21日(木)午後1時-2時(第3週です) 

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「人工関節置換術について」 

講師・司会:三浦 靖史 准教授

  

日時:2013年4月25日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチの足趾変形に対する装具」 

講師:澤村義肢製作所 大西 智樹 義肢装具士

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2013年5月30日(木)午後1時-2時

会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)

演題:「リウマチとお口の管理の必要性」 

講師:西井 美佳 歯科衛生士 

司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


ウイルス性胃腸炎が流行していますので、くれぐれも手洗いを徹底していただきますようにお願いします。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2013.1.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


翌月のリウマチだよりはこちら

リウマチだよりのリストに戻る

神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)