第97号(2012年12月号[12/12/1発行])

 山々の紅葉はまだまだ美しいものの、12月に入って寒さは一気に厳しくなってきました。年末の買い物など、寒風が吹く中、外出される機会も多いのではないでしょうか。先月号でインフルエンザウイルスと肺炎球菌に対するワクチンをご紹介しましたが、リウマチ患者さんにとって、ワクチン接種以外の冬対策も重要ですので、改めて説明させて頂きます。


冬を健康に過ごすために

バランスの良い栄養と十分な睡眠を取りましょう

 冬の味覚といえば鍋料理や脂ののったお魚料理など、さまざまな美味しい料理が思い浮かびます。もちろん、何か特定の食べ物を食べたり、あるいは食べなかったりすることで風邪を引くことを予防できたり、リウマチが良くなる訳ではありません。それより旬の食材を活かして、タンパク質、炭水化物、脂質の三大栄養素に加えて、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれた適度な量の食事を、バランス良く規則正しく食べることが大切です。ただし、腎臓病や糖尿病、脂質異常症などで食事療法を指導されている患者さんは、指導に従って頂くようにお願いします。また、夜更かしを避けて、十分な睡眠を規則正しく取っていただくようにお願いします。

くれぐれも無理は避けましょう

 大掃除やお正月準備の買い物などは、元気なご家族に手伝って貰って、自分は指示する側に回りましょう。年賀状も一度にたくさん書かないようにお願いします。どうしても自分でしなければならないことは、完璧にできていなくても気にしないで、適当に手を抜くようにしてください。

うがいと手洗いをしっかりと行い、マスクを活用しましょう

 外出している間にウイルスや細菌に接触しているかもしれませんので、帰宅された際には、まず、うがいと手洗いをしっかりと行ってください。うがいや手洗いは十分に時間を掛けて行うことが大切です。うがいに当たっては、うがい薬を使用して頂きたいのですが、水だけでもある程度の効果は期待できます。手洗いは、殺菌効果のある手洗い用石けん(ハンドソープ)を使用して、指先や指の間も念入りに行って下さい。また、特に免疫不全の状態でなければマスクを常時使用する必要はないのですが、周囲に咳をしている人がおられる場合や、病院や人混みに出かける場合にはマスクを着用しましょう。なお、マスクの最大の効果は、ウイルスや細菌を吸い込まないことでなく、周囲にまき散らさないことですので、風邪を引いた際にはできるだけ外出は避け、どうしても外出しなければならないときや医療機関を受診する際には、周囲の人に移さないように必ずマスクを着用しましょう。

部屋の乾燥を防ぎましょう

 エアコンなどの暖房器具を使用すると、室内の空気がどうしても乾燥してしまいます。乾燥した空気によってのどや鼻の粘膜が乾燥すると病原体に対する抵抗力が弱くなってしまうとともに、乾燥した空気の中ではウイルスは遠くまで飛ぶことができますので、乾燥していると風邪やインフルエンザを引きやすくなります。そこで、暖房する際には加湿器を使って部屋を加湿しましょう。加湿には、室温がより暖かく感じられるというメリットもあります。また、暖房の方法にかかわらず、換気を定期的に行って下さい。

厚着を避けて運動しましょう

 リウマチに限らず、体が冷えると関節痛や神経痛がひどくなる場合が多いので、高齢の方は厚着をしがちです。しかし、靴下やズボンを重ね着することにより、下肢の運動が制限されるとともに、足裏の感覚が分かりにくくなることから、転倒しやすくなって、最悪の場合、骨折をしてしまいます。そこで一室はしっかりと暖房をして、室内ではできるだけ薄着で過ごして頂くとともに、リウマチ体操やダイナミックフラミンゴ体操など、自分でできる運動療法を毎日行って筋力の維持に努めて下さい。

日光に当たりましょう

 冬でも天気が良く晴れて暖かい日には、外出して日光浴をしましょう。日光に含まれる紫外線は、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの皮膚での活性化を促進して骨粗鬆症の予防に効果があります。もちろん、紫外線の当たり過ぎには害もありますが、冬場の短時間の散歩程度では心配される必要はありません。

風邪を引いたらかかりつけ医を速やかに受診しましょう

 咳、鼻水、のどの痛み、発熱などの症状が起きた場合に、自分で風邪だと診断して、市販薬や置き薬で症状を抑えてはいけません。また、次回の病院の受診日まで我慢してもいけません。かかりつけ医の診察を速やかに受けて、必要なお薬を処方して貰ってください。また、普通の風邪だと思っていたのに実はインフルエンザだった場合に、抗インフルエンザ薬(タミフル®、リレンザ®、ラピアクタ®、イナビル®)は、発症後48時間以内に使用を開始しないと効果がありませんので、速やかに受診することは必須です。

風邪を引いたらメトトレキサート(リウマトレックス®)の内服は休みましょう

 風邪やインフルエンザ、感染性胃腸炎などの感染症にかかった場合には、メトトレキサートを継続して内服していたために長引かせてしまったり、こじらせてしまう場合がありますので、その病気が完全に治るまで、メトトレキサートの内服は必ず休んで下さい。リウマチが安定している場合には、メトトレキサートの内服を数週間休んでも急にリウマチが悪化することは通常ありません。


新規生物学的製剤治験の最終のご案内

 整形外科リウマチ診療部門では、昨年から、国際共同で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤の治験の第3相試験を行っております。この生物学的製剤は、主にBリンパ球に作用するBAFFというサイトカインに対して特異的に結合する抗体製剤で、高い有効性が期待されています。

 製薬会社と医療従事者だけでは、新しいリウマチ薬を誕生させることはできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって初めて可能になります。治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに様々な配慮がなされています。皆様のご協力をいただけましたら幸いです。

 なお、当治験の参加申し込みの締め切りは年内を予定していますため、興味をお持ちの場合には、主治医あるいは治験コーディネーターまで、速やかにご相談いただけますようにお願いいたします


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。

 さて、毎年12月は年末のためにお休みを頂いておりますのでご了承下さい。来年1月は、三浦准教授から、2013年に発売予定のリウマチ治療に使用される新薬に関する講演を予定しています。スタッフ一同、皆様の参加を心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2012年12月-2013年2月)

12月は年末となりますので、リウマチ教室はお休みです。


日時:2013年1月31日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「2013年リウマチ治療の展望」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2013年2月28日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


リウマチだよりの発行は今号で9年目に入りました。これからも皆様のお役に立てるように努めて参りますので、今後ともご愛読いただけましたら幸いです。

それでは、楽しいクリスマスと良い新年をお迎えください。皆様のご多幸を心からお祈り申し上げます。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療部門宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療部門© 発行日:2012.12.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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