第96号(2012年11月号[12/11/1発行])
11月に入って朝夕はずいぶんと冷え込むようになり、山々の赤や黄色の彩りも一日一日美しくなってきました。食欲の秋、実りの秋、芸術の秋と楽しみごとの多い過ごしやすい気候ではありますが、秋の深まりとともに、冬も着実に近づいています。イソップ物語ではありませんが、冬が来る前に冬支度をしておくことはとても大切です。リウマチ患者さんが必ずしておくべき冬対策といえば、インフルエンザなどの感染症予防対策です。すでにインフルエンザワクチン接種を受けることを秋の恒例行事とされている患者さんも多いこととは思いますが、本シーズンもお忘れなきようにお願いいたします。
インフルエンザワクチンを接種しましょう
リウマチの治療薬であるメトトレキサート(リウマトレックス®)やタクロリムス(プログラフ®)などの免疫抑制剤、生物学的製剤(レミケード®、エンブレル®、アクテムラ®、ヒュミラ®、オレンシア®、シンポニー®)、ステロイド剤は、免疫を抑制する作用がありますので、薬で治療を受けているリウマチ患者さんは病原体に対する抵抗力が低下気味です。そこで、日頃から感染症予防対策を行って頂く必要があり、うがいや手洗いを欠かさないことは重要ですが、冬場のインフルエンザ流行への対策として、インフルエンザワクチンの接種が強く推奨されます。インフルエンザワクチンや後述の肺炎球菌ワクチンは、ワクチン接種によりその病気に感染する恐れがない「不活化ワクチン」のため、免疫抑制作用を持つ抗リウマチ薬を使用している患者さんでも接種を受けることができます。また、インフルエンザワクチンは接種してから効果を発現するまで約2週間かかりますので、流行が始まる前に接種しておくことが大切です。10月からインフルエンザワクチン接種はすでに開始されていますので、かかりつけ医で速やかに接種を受けていただきますようにお願いします。事情があってかかりつけ医での接種が難しい場合には、大学病院での接種も可能ですので主治医までお申し出ください。なお、インフルエンザワクチンはインフルエンザ以外のウイルスや細菌には全く効果がありませんので、ワクチンを接種したからと油断されず、うがいと手洗いなどの感染予防対策を毎日徹底して実施し、健康管理に努めて頂きますようにお願いします。
肺炎球菌ワクチンについて
2011年の厚生労働省人口動態統計によれば、肺炎は日本人の死因の第3位で、年間10万人以上が亡くなっています。肺炎は細菌やウイルスなど様々な病原体によって生じますが、細菌性肺炎の原因となる頻度が最も高い細菌がその名の通り「肺炎球菌」です。そこで、免疫力が低下しがちな高齢者や免疫抑制作用を有する治療を受けている患者さんには、不活化ワクチンである肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP®)の接種が推奨されています。なお、肺炎球菌ワクチンはインフルエンザワクチンと異なり、一度接種を受けると5年間は効果が継続しますので、毎年接種する必要はありません。また、以前に生涯で一度だけ接種できると説明を受けられた患者さんもおられると思いますが、現在は接種後5年を経過すれば、必要な場合には再接種が可能になっていますので、5年を経過された場合には主治医までご相談ください。
ヒュミラ®の針が細くなります
関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎などに使用されるヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であるアダリムマブ(商品名ヒュミラ®、販売:アボットジャパン・エーザイ)のプレフィルドシリンジの針が、従来の27ゲージ(外径0.40mm)から29ゲージ(外径0.33mm)に、内径はそのままで変更になりました(イラスト参照)。針が細くなった分、刺すときの痛みが少なく、また、刺しやすくなることが報告されています。12月頃に在庫が無く
なり次第、従来の製品から新しい製品に切り替えになりますので、実際に変更になるまでは少しお待ち下さい。
新規生物学的製剤治験の最終のご案内
整形外科リウマチ診療部門では、昨年から、国際共同で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤の治験の第3相試験を行っております。この生物学的製剤は、主にBリンパ球に作用するBAFFというサイトカインに対して特異的に結合する抗体製剤で、高い有効性が期待されています。
製薬会社と医療従事者だけでは、新しいリウマチ薬を誕生させることはできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって初めて可能になります。治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに様々な配慮がなされています。皆様のご協力をいただけましたら幸いです。
なお、当治験の参加申し込みの締め切りは年内を予定していますため、興味をお持ちの場合には、主治医あるいは治験コーディネーターまで、速やかにご相談いただけますようにお願いいたします。
整形外科リウマチ教室のご案内
整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
さて、11月は、三浦准教授による冬場の健康維持の方法に関する講演を予定しています。スタッフ一同、皆様の参加を心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2012年11月-2013年2月)
日時:2012年11月29日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「冬場の健康対策」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
12月は年末となりますので、リウマチ教室はお休みです。
日時:2013年1月31日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「2013年リウマチ治療の展望」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
日時:2013年2月28日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
第9回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
関連医療機関である神戸海星病院との共催で、土曜日にもリウマチ教室を開催しています。大学病院でのリウマチ教室に加えて、こちらにも是非ご参加ください。
日時:2012年11月17日(土)午後2時-4時30分 (午後1時30分開場)
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
プログラム:
演題:「インフルエンザ・肺炎の対策」 講師:薬剤部 濵名 則子 薬剤師
演題:「冬場の転倒には注意しましょう!」 講師:リハビリテーションセンター 井澤 克俊 理学療法士
演題:「冬の健康づくり」 講師:神戸大学保健学研究科/整形外科 三浦 靖史 准教授
個別相談・ワクチン接種(費用がかかります)・施設見学(介護付有料老人ホームコンフォートヒルズ六甲)
参加は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部 電話:078-871-5201
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療部門宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療部門© 発行日:2012.11.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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