第91号(2012年6月号[12/6/1発行])

リウマチ治療薬の内服方法について

 5月のリウマチ教室では、宮川薬剤師に薬を正しく使用するための基礎知識について講演いただきました。先日、NHKの番組で「時間治療」という概念が取り上げられて以来、薬の飲み方について質問を受ける機会が増えていますので、リウマチ治療薬の内服方法について皆様にお伝えしたいと思います。

 薬にはそれぞれ決められた内服方法が指示されています(1日2回朝夕食後、あるいは、週1回起床時など)。内服した薬は消化管から吸収され血液中に取り込まれて、一定の濃度に達して初めて効果を発揮します。そして血液中の薬は肝臓で分解されたり、腎臓から尿中に排出されたりして徐々に濃度が低下して効果がなくなりますので、一定の時間の後に再び薬を飲んで頂く必要があります。一般に血液中の濃度が高くなれば薬の効果は強くなりますが、同時に副作用の危険も高くなるため、様々なデータに基づいて効果と副作用のバランスと、吸収や排出の速度を考慮して、薬の用量と用法は厳密に決められています。ですので、患者さん自身の判断で薬をまとめて一度に内服したり、飲む時間帯を変更することは体調に悪影響を与える恐れがありますので、くれぐれもお避け頂くようにお願いします。

 なお、基本的なリウマチ治療薬であるメトトレキサート(リウマトレックス®)の内服方法は昨年変更されて、従来の「1週間のうちの連続した2日間に3回に分けて内服する」用法以外に、全量を週に1回、あるいは、同じ日の2回に分けて内服することも認めらましたが、まとめて内服すると副作用が出現したり、消化管の運動がゆっくりになる夜に内服量が増えると、悪心などの消化器系の副作用が強くなる患者さんもおられますので、用法の変更を行うべきかどうかは主治医と良く相談して下さい。

 国内で初めての抗リウマチ生物学的製剤(バイオ製剤)が承認されて今年で9年目になりました。もちろん、費用の問題で生物学的製剤を使用するのが難しい場合もありますが、メトトレキサートだけでは効果が十分でない場合には、是非、積極的に生物学的製剤による治療を受けることを検討いただきますようにお願いします。


6月は「リウマチ月間」です


 毎年6月はリウマチ月間です。関節リウマチが発症する仕組みと予防法はまだ明らかになっていませんが、発症早期から強力な薬物治療を行うことにより、関節の痛みを和らげるだけではなく、関節破壊の進行を停止させて、発症前とほぼ同様に普通の生活を送っていただけるようにまで、リウマチの治療薬は進歩しています。

 ただし、早期治療を行うためには早期診断が欠かせません。関節リウマチが疑われる症状がある場合に、患者さんがかかりつけ医を速やかに受診していただけるように、社会全体として関節リウマチについての正しい理解を深めることがとても重要です。かかりつけ医が、リウマチ専門医の診察が必要であると判断された場合には、病診連携の仕組みを通じて、私ども専門医の診察を受けて下さい。診断が関節リウマチだと確定した場合には、かかりつけ医と連携して、専門的な治療を遅滞なく開始させていただきます。(ポスター:日本リウマチ財団)


整形外科外来新看護スタッフのお知らせ

5月から平松看護師が新たに整形外科外来に加わりましたのでよろしくお願いします。


新規生物学的製剤治験のご案内(再掲)

 整形外科リウマチ診療部門では、昨年から、国際共同で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤の治験の第3相試験を行っております。この生物学的製剤は、主にBリンパ球に作用するBAFFというサイトカインに対して特異的に結合する抗体製剤で、高い有効性が期待されています。

 製薬会社と医療従事者だけでは、新しいリウマチ薬を誕生させることはできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって初めて可能になります。治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに様々な配慮がなされています。皆様のご協力をいただけましたら幸いです


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。

 講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。さて、6月のリウマチ教室では、澤村義肢製作所の大西義肢装具士に、装具を製作する際に利用できる医療や福祉の制度について講演をしていただくとともに、装具の展示と相談会を開催する予定です。皆様のご参加を心からお待ちしております。


整形外科リウマチ教室のスケジュール(2012年6月-10月)

日時:2012年6月28日(木)午後1時-2時 

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「装具製作にかかわる医療・福祉制度」

講師:澤村義肢製作所 大西 智樹 義肢装具士 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年7月26日(木)午後1時-2時 

会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)

演題:「関節リウマチの運動療法」 

講師:リハビリテーション部 井上 順一朗 理学療法士 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年8月30日(木)午後1時-2時30分(時間が異なります)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「リウマチ患者さんと家族のおしゃべり会」

講師:整形外科外来 小林 久美子 副看護師長及び看護部スタッフ 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年9月27日(木)午後1時-2時 

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「健康と音楽」

講師:東京工科大学医療保健学部 山崎 郁子 教授 

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年10月25日(木)午後1時-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「介護保険を賢く利用するには」

講師:患者支援センター 都成 祥子 ソーシャルワーカー

司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療部門宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療部門© 発行日:2012.6.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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