第86号(2012年1月号[12/1/1発行])

明けましておめでとうございます

リウマチの治療は年々進歩しています

寛解を、さらには治癒を目指して
共に頑張って参りましょう

本年もよろしくお願い申し上げます

整形外科リウマチ診療部門一同


年頭所感:2012年

 昨年は東日本大震災と福島第一原発事故という未曾有の大災害に多くの皆様が胸を痛められたことと思います。震災で犠牲になられた方々とご家族、そして原発事故により今も避難されている方々のことを思い、一日も早い原発事故の収束、被災地の復興、そして何より被災者の皆様が心の安らぎを得られますことを、私の2012年の年始の祈りとさせていただきます。

 さて、21世紀に入って今年ですでに12年目になりました。子どもの頃に想像していた21世紀は、SFで描かれているようにエアカーが空を飛び、月に人が住んでいるような社会だったように思います。現実の21世紀は、スマートフォンやハイブリッドカーと科学技術は確かに進歩して便利になりましたが、20世紀から解決が先延ばしされてきた社会や経済の様々な問題が、さらに難しいものとなって私たちを取り巻いています。しかし、幸いなことに、21世紀に達成された医学の進歩の恩恵は大きく、特にリウマチ治療におきましては、生物学的製剤(バイオ新薬)により、症状がほぼ完全に消失した状態である「寛解」に達することが、今では普通のことになりました。

 その、リウマチの寛解の概念が、昨年、「症状がない状態」から、より高い「関節破壊が進行しない状態」に変更されました。高められた「寛解」から、さらに一歩進んで、生物学的製剤あるいは抗リウマチ薬を中止しても寛解が維持できているバイオフリー寛解やドラッグフリー寛解と言われる「治癒」とほぼ同じような状態を目指した治療を、皆様とともに目指して行きたいと考えております。

 一方で、経済的な理由により治療が制限される患者さんがおられる現実があり、昨年から報道されている高額療養費制度の改正については、良いニュースはまだ飛び込んできておりません。一刻も早い解決を願いたいと思います。

 ひとりでも多くの患者さんに、最良のリウマチ治療を適切なタイミングで導入して、寛解あるいはそれに準じた調子の良い状態で過ごして頂けますように、福田医師、前田医師、整形外科スタッフ、院内外の医療・福祉関係の方々とも連携して、全力を尽くしてリウマチ患者さんの治療に当たっていく所存ですので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新規生物学的製剤治験のご案内(更新)

 整形外科リウマチ診療部門では、昨年から、国際共同で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤の治験の第3相試験を行っております。この生物学的製剤は、主にBリンパ球に作用するBAFFというサイトカインに対して特異的に結合する抗体製剤で、高い有効性が期待されています。

 製薬会社と医療従事者だけでは、新しいリウマチ薬を誕生させることはできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって初めて可能になります。治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに様々な配慮がなされています。皆様のご協力をいただけましたら幸いです。

 治験に参加頂ける人数には制限があり、締め切りが徐々に近づいて来ておりますので、治験に興味をお持ちになられた患者さんは、早めに主治医までお申し出いただけますように、お願い申し上げます。なお、治験に参加いただくには、一定の条件を満たす必要がありますので、せっかく、お申し出を頂いても、ご参加いただけない場合もありますので、その際はどうかご了承ください。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科リウマチ診療部門では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。皆様の参加を心からお待ちしております。

 講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。さて、1月のリウマチ教室では、2012年以降に期待されるリウマチや関連疾患への新薬などの展望について三浦准教授から講演させていただく予定です。皆様のご参加を心からお待ちしております。


2012年の整形外科リウマチ教室のスケジュール

日時:2012年1月19日(木) 午後1-2時(第3週です)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「2012年リウマチ治療の展望」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年2月23日(木) 午後1-2時

会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチ患者さんが行っている日常生活の工夫」 

講師・神戸大学医学部保健学科看護学専攻 長谷 祐里さん、白鳥 千寿さん

司会:三浦 靖史 准教授


日時:2012年3月22日(木)(第4週です)午後1-2時

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職と妊娠について」

講師・司会:三浦 靖史 准教授

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


寒い日が続いており、ウイルス性胃腸炎も流行しておりますので、くれぐれもご自愛ください。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療部門宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療部門© 発行日:2012.1.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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