第85号(2011年12月号[11/12/1発行])

 12月に入って神戸ルミナリエが始まり、気温もすっかり寒くなって、景色も急に晩秋から冬らしくなったように感じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。これから、忘年会、クリスマス、大掃除、お正月の準備と、師走の名のとおり、誰しもが走り回るような忙しい時候となってきます。今年はマイコプラズマ肺炎が話題になっていますが、これから、インフルエンザや肺炎などが流行してきますので、皆様に楽しい年末年始をお過ごしいただきますためにも、十分な冬対策を実施いただきたいと思います。そこで、恒例ですが、今年も冬の健康維持法についてお話させていただきます。

冬の健康維持法

インフルエンザワクチンを接種しましょう

 地域によりすでにインフルエンザが流行していますので、できるだけ早く接種を受けましょう。

肺炎球菌ワクチンも接種しましょう

 65才以上、あるいは免疫抑制剤による治療を受けておられる患者さんは、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)も接種しましょう(11月号に詳細を記載していますのでご参照ください)。

感染症が治るまでリウマトレックス®は休みましょう

 風邪、インフルエンザ、肺炎、胃腸炎などの感染症にかかった場合には、治るまでリウマトレックス®(メトトレキサート)の内服を必ず休みましょう。

風邪症状が出てきたら速やかにかかりつけ医を受診しましょう

 風邪だと自己診断をして、市販薬で症状を抑えてはいけません。次回の予約日まで我慢するのもいけません。速やかにかかりつけ医を受診しましょう。

うがいと手洗いをしましょう

 外出時にさまざまな病原体に接触しているかもしれませんので、帰宅されましたら、うがいと手洗いをしっかりと実施しましょう。

マスクを活用しましょう

 人混みに出かける場合にはマスクを使用しましょう。ただし、マスクの最大の効果は、病原体を吸い込まないことでなく、周囲にまき散らさないことですので、風邪などで医療機関を受診する際には、必ずマスクを使用しましょう。また、同居の家族が風邪を引いたときには、マスクを使用して貰いましょう。

部屋を加湿しましょう

 暖房により室内の空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜の抵抗力が下がってしまうとともに、ウイルスは遠くまで飛ぶようになりますので、加湿器などを使って部屋を加湿しましょう。

厚着を避けましょう

 寒さを防ぐために厚着、特に、靴下やズボンの重ね履きをすると、足の裏の感覚が鈍くなるとともに、膝や足首の動く範囲が制限されることから、転倒しやすくなってしまいます。暖房費や電力消費量も気になるところですが、部屋ごとしっかりと暖房をして、室内ではできるだけ薄着にするようにしましょう。

低温火傷に注意しましょう

 長時間カイロを貼ったままにしておくと、熱さを感じないのに低温火傷を負ってしまうことがあります。カイロは皮膚に直接当てない、長時間、同一部位に当てたままにしないようにしましょう。

運動しましょう

 冬といっても、天気の良い暖かい日には、外出して適度に運動をしましょう。室内でも、フラミンゴ体操やリウマチ体操などをして身体を動かしましょう。

バランス良い栄養と十分な睡眠を取りましょう

 野菜や果物などビタミンの豊富な食品をバランス良く食べましょう。また夜更かしを避けて十分に睡眠をとりましょう。


テリパラチド酢酸塩(テリボン皮下注用56.5μg®)発売のお知らせ

 骨折の危険性が高い骨粗鬆症の患者さんに対して、骨形成を促進する作用を持つヒト副甲状腺ホルモン(PTH)製剤であるテリパラチド(商品名フォルテオ®、製造販売:日本イーライリリー)が昨年承認されました。フォルテオ®は毎日1回皮下注射を行う必要がありますので、通常自己注射を行っていただいておりますが、同じくPTH製剤のテリパラチド酢酸塩(商品名テリボン®、製造販売:旭化成ファーマ)がこのたび承認され、11月末に薬価収載されました(1バイアル12,971円)。テリボン®は週に1回、医療機関で皮下注射を行います。フォルテオ®は現在でも処方可能ですが、今後、テリボン®の院内での処方が可能になりましたら、リウマチだよりで皆様にお知らせさせていただきます。これらのPTH製剤による骨粗鬆症の治療をご希望の患者さんは主治医までご相談ください。


新規生物学的製剤治験のご案内(再掲)

 整形外科リウマチ診療部門では、現在、国際共同で開発が進められている新規抗リウマチ生物学的製剤の治験を行っております。新しい薬を世に送り出すために、「薬の候補」が持つ、人における効き目(有効性)と副作用(安全性)を調査する「臨床試験」のうち、厚生労働省から「薬」としての承認を得るために行われる試験を、特に「治験」と呼びます。今回、治験の3段階の最後に当たる第3相試験が行われている生物学的製剤は、海外では関節リウマチと同じく膠原病のひとつである全身性エリテマトーデスの新しい治療薬として米国で本年承認されたベリムマブと同様に、主にBリンパ球に作用するBAFFというサイトカインに対して特異的に結合する抗体製剤で、関節リウマチに対しても高い有効性が期待されています。

 製薬会社と医療従事者だけが頑張っても、新しいリウマチ薬を誕生させることは決してできません。リウマチ患者さんやご家族の協力があって、初めて可能になります。治験に際しては、より一層の安全性の確保と、経済的負担の軽減、さらには、効果が不十分な場合の対策などに様々な配慮がなされています。皆様のご協力をいただけましたら幸いです。

 治験への参加に興味をお持ちになられた患者さんは、是非、主治医までお声掛けいただけますように、お願い申し上げます。なお、治験に参加いただくには、一定の条件を満たす必要がありますので、せっかく、お申し出を頂いても、ご参加いただけない場合もありますので、その際はどうかご了承ください。


整形外科リウマチ教室のご案内

 整形外科リウマチ診療部門では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。

 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。皆様の参加を心からお待ちしております。

 講演後に、限られた時間ですが、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。さて、12月のリウマチ教室は年末につきお休みさせていただきますが、年始の1月には、気持ちも新たに2012年のリウマチ治療の展望について三浦准教授から講演させていただく予定です。皆様のご参加を心からお待ちしております。


2012年の整形外科リウマチ教室の予定

*12月は年末につき大学病院でのリウマチ教室はお休みです

日時:2012年1月19日(木) 午後1-2時(第3週です)

会場:神緑会館1階多目的ホール

演題:「2012年リウマチ治療の展望」

講師・司会:三浦 靖史 准教授


神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ


第7回神戸海星病院リウマチ教室のご案内

 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにご参加ください。

日時:2011年12月10日(土)午後2時-4時30分 (午後1時30分開場)

会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)

プログラム:

「介護保険について」 講師:神戸海星病院 地域医療連携部 矢部 育子 医療ソーシャルワーカー

「転倒予防について」 講師:神戸海星病院 リハビリテーションセンター 井澤 克俊 理学療法士

「冬対策について」  講師:神戸大学保健学研究科・整形外科 三浦 靖史 准教授

個別相談・施設見学(ご希望の方のみ)

参加費は無料ですが、定員がありますので、事前に電話でお申し込みください。

申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201


それでは、皆様、楽しいクリスマスと良い新年をお迎え下さい。


リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。

連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療部門宛

発行:神戸大学整形外科リウマチ診療部門© 発行日:2011.12.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用


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