第2世代形質転換植物の開発  現在、商品化されている遺伝子組換え食品は、除草剤抵抗性、害虫耐性、耐病性等の性質を付与した形質転換植物由来であり、欧米で開発されたものがほとんどです。これらはいわば第1世代の形質転換植物であり、生産者にとっての利便性は高いのですが、消費者にとっては価格などの点でもそれほど大きなメリットはありません。また、安全性に対する消費者の不安が大きく、日本では遺伝子組換え作物の商業栽培は実施されていません。今後は、消費者にとって明瞭なメリットを有する、いわゆる第2世代の遺伝子組換え植物である高付加価値作物を新規に開発し、実用化することが重要です。このような考えをもとに、私達は上記の基礎的研究を踏まえていくつかの形質転換植物の開発を計画しています。
 その一つとして、果実に大量発現するククミシン遺伝子の強力なプロモーターを利用して、異種有用タンパク質を果実に発現する形質転換植物の開発を進めています。例えば、ペプチドホルモン、サイトカイン、食べて効くワクチン等の医薬品や、バイオマスの利用に必要な有用酵素等の有用タンパク質をトマトやスイカに大量発現させ果汁に分泌させて回収、精製する技術の開発を進めています。分子農業、あるいは分子育種といわれるこの方法では、コストが嵩む大型の発酵タンクや原料を必要とし汚染物質を排出せざるを得ない工業的方法とは異なり、無尽蔵の太陽エネルギーを利用し環境にやさしい緑の植物により畑で有用タンパク質を生産することができます。既に、ヒトのインターフェロンα遺伝子を導入したトマトの作出に成功しました。今後、このシステムで様々な遺伝子を果実に発現・蓄積させる計画です。