Sobolev空間の定義の仕方は様々なものが知られているが、本講演では、d次元ユークリッド空間(d>1)においてAlabernら(2012)が導入した、各点周りの円盤上の積分平均による、測度と距離だけを用いて線形空間の構造を用いない定義の、d次元球面上への拡張について、最近得られた結果を紹介する。同様の拡張は、既にBarcelóらが行っているが(2020)、その証明を精査し、動径方向に広範なクラスに属する重み関数（Alabernら、Barcelóらの場合は定数関数に相当する）を課しても結果が成立することが分かった。また、AlabernらのEuclid空間の場合であってもBarelóらの球面の場合であっても、定義には、考えうるすべての半径の円盤上の積分平均を用いているのに対し、球面の場合は、十分小さな半径での積分平均による局所的な量で定義できることが分かった。これはEuclid空間では成り立たない性質であると考えている。Alabernらの証明はFourier変換を用いたものであり、Barcelóらの証明は球面調和関数展開を用いたものである。我々も、後者の手法に従った。本講演は、Ikhsan Maulidi(Universitas Syiah Kuala)との共同研究による結果に基づく。