<第2回公開講演会>

この度,神戸大学にて,溝上慎一先生の公開講演会を開催いたします。
溝上先生は,青年や大学生の自己や生き方研究をご専門となさっており,  著書や論文など多数の業績がある方です。
また,神戸大学の出身者でもあります。
関心のある方は,どなたでも参加は自由です。
周りの方々にも是非お声をおかけ下さい。
多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。

日 時: 2003年2月13日(木)16:00〜18:00
  (講演会終了後,JR六甲道駅近くで懇親会を開く予定です)
場 所: 神戸大学発達科学部 F256室
  (JR六甲道駅もしくは阪急六甲駅から,市バス36系統「鶴甲団地」行きで, 「神大発達科学部前」下車)
題 目: ポジションワールドで発展させる自己研究
講演者: 溝上慎一(京都大学高等教育教授システム開発センター)
司 会: 谷 冬彦(神戸大学発達科学部 発達基礎論講座)
参加費: 無料

●講演概要
 自我や自己の概念が混乱しているといわれて久しい。心理現象を実体化しその範囲を 同定するのは言葉であるからこの言葉使いが混乱しているということは、いいかえれば、 自己を見る世界観が混乱しているということである。したがって、私がおこなってきた 自我や自己の概念整理は、言葉遊びではないし、単なる関連する文献の整理でもないと 信じている。自己の世界観の整理が、心理学の実証的研究にどのような影響を与えるの かを本講演では示したいと思う。しかし、扱う研究のテーマを度外視して、自己の世界 観が一般化レヴェルで整理されるはずはない。したがって、本講演で示す整理も、講演 者の研究テーマである青年や大学生の自己や生き方研究を進めていく上で、という前提 でおこなわれる。
 自我や自己の概念整理の基底に据えるという意味で、Hermans,H.J.M.の「対話的自己 (the dialogical self)」の理論を紹介する。対話的自己論とは、「ポジション (position)」と「声(voice)」といった概念ツールを用いて、自他の分別を文脈と してもつ一個存在としての生の経験体を「自己(self)」と置きつつも、その自己の 世界にさまざまな「私」「他者」「モノ」が主体ともなり客体ともなって存在してい ることを理論的に示すものである。
 当日は、できるだけ実証的データを示しながら上記のことを概説する予定であるが、 上記の関心は、実証的分析結果が研究の成果を促す類のこととは発想が逆であるので、 その点一般の方には違和感があるかもしれず留意されたい。心理現象やデータを読む 世界観の構築が研究を発展させるという点に立脚して、話を聞いてもらえれば有り難い と願う。

●講演者略歴
1994年3月 神戸大学教育学部卒業
1996年3月 大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了
1996年4月 京都大学高等教育教授システム開発センター助手
2000年4月 京都大学高等教育教授システム開発センター講師(現在に至る)
2000年6月〜2001年5月 文部省在外研究員(オランダ・ナイメーヘン大学)


●主要研究業績
溝上慎一 1995 WHY答法による将来の生き方基底因 心理学研究, 66, 367-372.
溝上慎一 1997 自己評価の規定要因とSELF-ESTEEMとの関係−個性記述的観点を考慮する方法としての
  外在的視点・内在的視点の関係− 教育心理学研究, 45, 62-70.
溝上慎一 1999 自己の基礎理論−実証的心理学のパラダイム− 金子書房
溝上慎一 2000 自己理解の「表現」における他者の視点参照の効果 性格心理学研究, 8, 101-112.
溝上慎一 (編) 2001 大学生の自己と生き方−大学生固有の意味世界に迫る大学生心理学− ナカニシヤ出版
溝上慎一 2002 アイデンティティ概念に必要な同定確認(identify)の主体的行為−実証的アイデンティティ研究の再検討−
  梶田叡一 (編) 自己意識研究の現在 ナカニシヤ出版 Pp.1-28.
溝上慎一 2002 自己評価の規定要因と人との関係性−自己評価の高低における関係性の構造の違い− 
  梶田叡一 (編) 自己意識研究の現在 ナカニシヤ出版 Pp.153-170.
溝上慎一 (編) 2002 大学生論−戦後の大学生論の系譜をふまえて− ナカニシヤ出版


主  催 : 神戸大学 Human Science Society(HuSS)
        神戸大学発達科学部 研究推進委員会

<問い合わせ先>
〒657-8501
神戸市灘区鶴甲3-11
神戸大学発達科学部
発達基礎論講座
谷 冬彦
ftani@kobe-u.ac.jp



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