<HuSS 第7回研究会>
日時 : 2002 年 5 月 27 日(月) 16:30〜18:30
場所 : 神戸大学発達科学部 B208
テーマ : 自己認知再考−自己発達研究の課題
話題提供者:
1)赤木和重(神戸大学 総合人間科学研究科 D1) 「自閉症児者における鏡像認知」
2)木下孝司(神戸大学発達科学部 児童発達論講座) 「幼児期における“時間的に拡張された自己”の認知」
○発表要旨
Gallup(1970)によって考案されたマークテスト(ないしはルージュテスト)は,霊長類やヒトの乳幼児の自己認知を測定する課題として広く使われてきた。これまで多くの研究によって,ヒトの赤ちゃんの場合,1歳半から2歳にかけて自己認知が可能になることや,マカクザルはマークテストを通過しないがチンパンジーは通過することなどが明らかにされてきた。
今回の報告では,これまで扱われてこなかった視点からマークテストをとらえ直してみることで,この課題の持つ意味を再検討し,自己意識の発達の検討課題を議論したい。
赤木は,これまで青年期(成人期)の自閉症児者と数多く関わり,彼らの自己発達に関する研究を行っている。その一つとして,青年期自閉症者にマークテストを実施し,自発的にマークに触らない者がいたり,知らぬ間についているマークに戸惑いを示しつつ他者に伝えない者が存在することを明らかにしている。これは,同一の発達段階にいる健常児とは明らかに質的に異なる反応であるという。鏡像をめぐる他者とのコミュニケーション関係,あるいは情動反応に目を向けることで,自己認知の発達に関して新たな知見を加えることができるのか報告する予定である。
木下は,このマークテストに時間的ファクターを加えた実験を行っており,それについて報告する。ビデオを使い,自己映像を遅延して提示する方法を用いると,マークテストの通過が4歳まで遅れるという興味深い事実が明らかになった。その結果を「過去の自己」と「現在の自己」の因果的つながりを理解する能力としてとらえ,「心の理論」や自伝的記憶の発達との関連について議論する予定である。
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