<HuSS 第2回研究会>

日時   : 2001 年 5 月 23 日(水) 15:30〜17:30
場所   : 神戸大学発達科学部 F160室
話題提供者: 山口昌澄(神戸大学総合人間科学研究科 D2)
テーマ  : 自己疎外に関する実証的研究

○発表要旨
 疎外はヘーゲルやマルクスに代表される哲学的人間観による把握、フロムやリースマ ンの「社会的性格」論、M.シーマンやD.G.ディーンらの実証研究を経るなかで、社会 をひろく捉える概念として発展してきた。いずれの研究においても共通しているの は、研究者が何らかの「あるべき人間の姿」を想定し、それと現実との差異を問題に しているということである。だが、この「想定」は多分にその当時の道徳的観念性を 帯びたものであり、ここに疎外概念の多義性(分かりにくさ)と疎外研究の衰退の原 因のひとつを帰することができよう。
 一時ほど疎外研究が注目を浴びなくなったというのは、現代社会において疎外が克服 されたことを意味するのであろうか。山口(1999)は現代青年に特徴的とされる価値 観(安楽志向)と疎外との関連を見出しており、現代において疎外は人間の深い場所 に入り込み、一見外からは分かりづらくなっているのではないかと考える。このよう に、疎外は新しい視点から捉えなおす必要がある。
 人間の内なる疎外としては、疎外感があげられるが、疎外感が内的現実としての社会 と自己に関する何らかの差異を問題とするのなら、疎外感との関連を考慮するうえで 現実自己、理想自己、周りに求められる自己のズレといった指標が考えられよう。自 己概念や社会的圧力・規範場面での自己呈示におけるそれらズレと疎外感との関連と いう、疎外の新たな文脈からの把握、また、現代青年において「あるべき自己の姿」 がどのような意味をもつのかを考察することを(今後の)研究の目的として考えてい る。



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