- ■田中グループ tanaka@kitty. ※アドレスの後ろに kobe-u.ac.jp を付けてください。
【Parallel Metabolic Pathway engineering (PMPE)
糖を使い分けて微生物の増殖と物質生産を独立してコントロール】:田中G
微生物を用いたモノづくりでは、原料のバイオマスを微生物が自身の増殖に利用してしまうことが問題となっています。微生物がバイオマスを取り込んでも、目的のモノが作られずに微生物自身が増えてしまうだけ、ということがよくあります。しかし微生物が増えないように代謝を改変してしまうと、微生物は元気がなくなりモノを作らなくなります。この増殖とモノづくりの間のジレンマがこれまでの大きな問題でした。
私たちのグループでは、物質生産と菌体増殖をコントロールするParallel Metabolic Pathway Engineering(PMPE)という新しい技術を開発しました。このPMPEを用いると、モノづくりに適した炭素源はモノづくりに、それ以外は微生物の増殖にまわすことができるようになり、芳香族化合物や医薬品、化成品原料などの生産性を大きく向上させることができます。
PMPEを用いると、微生物の代謝を分けてそれぞれ独立させることにより、グルコースは全て目的物質の生産に、キシロースは微生物の生育、維持のために使われます。グルコースは生育、維持のためには一切使われないため、収率を大きく向上させることができます。

PMPEは、代謝をそれぞれのユニットとして考え、それぞれをまるでブロックのように組み合わせることで微生物の代謝を制御することができます。複雑に絡まって制御されている生物の代謝を様々なユニットごとに分断し、原料となる糖を使い分けるように再構築していきます。ユニットとしての区切り方、その組み立て方は数え切れないほどたくさんあります。まるでレゴブロックを組み立てるように代謝を改変していくことで、様々な有用化合物を効率よく生産する技術の開発を目指しています。

- Fujiwara, R., Noda, S.*, Tanaka, T.*, Kondo, A. (2020/01) Metabolic engineering of Escherichia coli for shikimate pathway derivative production from glucose–xylose co-substrate, Nature Communications, 11: 279
<プレスリリース>
- 2020/01/14 Research at Kobe, 微生物に糖を目的別に使い分けさせる新技術でポリマー原料の生産性向上に成功
◆本研究に関する問い合わせ先◆
田中 tanaka@kitty. ※アドレスの後ろに kobe-u.ac.jp を付けてください。
【細胞表層工学を用いたバイオマス資化性微生物の創製】:田中G
微生物の表層にバイオマス分解酵素を提示させることで、微生物にバイオマス資化能を付与することができます。その微生物は酵素を表層に発現してバイオマスを分解します。そして生じたグルコースを取り込んで様々な有用物質を生産します。しかし、その技術は出芽酵母に限られていました。
私たちのグループでは、出芽酵母以外の様々な有用微生物、大腸菌、コリネ菌, 分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe) に利用できる細胞表層工学技術を開発してきました。これら微生物の表層にバイオマス分解酵素を提示させることで、バイオマスを分解して増殖することに成功しています。特に、βグルコシダーゼを提示することで、セロビオース(セロオリゴ糖)を炭素源としてグルコースと同等の増殖レベルを達成しています。これにより前処理化が不十分なバイオマスでもグルコースと同じように使えるようになり、最終的にはバイオマスを用いた物質生産のコストダウンを目指します。
- Tanaka, T., Kondo, A. Biotechnology Advances, 2015, 33, 1403-1411
- Tanaka, T. et al. ACS Synthetic Biology, 2014, 3(7), 446-453
- Tanaka, T., et al., Applied Microbiology and Biotechnology, 2013, 97(10), 4343-4352
◆本研究に関する問い合わせ先◆
田中 tanaka@kitty. ※アドレスの後ろに kobe-u.ac.jp を付けてください。
【有用化合物の前駆体を蓄積するシャーシ株の創製】:田中G
代謝工学に基づいた生産経路の設計、最適化、微生物ゲノムの改変などにより微生物を用いて様々な有用物質を生産することができます。しかし、その多くはグルコースを原料としています。これは、これまで代謝工学=細胞内代謝の改変による生産性の向上、表層工学=バイオマス分解活性の向上、と、これら2つのアプローチは別々に考えられてきたことが1つの原因です。本研究では、代謝改変された微生物にバイオマス分解酵素を提示することで、グルコースだけでなくバイオマスからも様々な有用物質を生産することが可能になります。
私たちのグループでは、代謝工学と表層工学を融合させた新しい技術の開発に取り組んでいます。細胞表層にバイオマス分解酵素を提示することで、バイオマスからも、そして予想外にもグルコースからも生産性が向上することを新たに見出しました。続いて、バイオマス分解酵素の提示により、細胞内の代謝が変化していることがわかりました。中でも重要な代謝中間体、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、アセチルCoAの蓄積量に大きな変動が見られました。これらは有機酸、アミノ酸、アルコール、脂質、カロテノイド、テルペノイドなど様々な有用化合物の前駆体となります。表層提示技術と代謝工学をうまく融合させることで、自分が作りたい化合物の生産量を向上させることができます。これらの知見をもとに、作りたい目的化合物に応じた前駆体を蓄積するシャーシ株の開発を目指します。
- Matsumoto, T., Tanaka, T., Kondo, A. Bioresource Technology, 2017, 245, 1362-1368
- Ozaki, A., et al., Metabolic Engineering Communications, 2017, 5, 60-67
- Matsumoto, T., et al., ACS Synthetic Biology, 2016, 5(11), 1284-1289

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