Did Short-Term Preseismic Crustal Deformation Precede the 2011 Great Tohoku-Oki Earthquake? An Examination of Stacked Tilt Records
2023年にフランスのグループにより出版された論文で、GNSSデータにもとづき、2011年東北地方太平洋沖地震発生の直前2時間前から、震源付近での加速的な先駆すべりがあったと解釈される地殻変動を見出したという報告がなされました。一方、その研究と同じデータを使い、GNSSデータに含まれる特有のノイズを低減した場合、その加速的な地殻変動は見られなくなった、とする報告も別のグループから出されています。我々は、その先駆的な地殻変動の有無を検証するため、GNSSとは独立な観測データである、防災科研Hi-net併設の高感度加速度計による傾斜記録を用いて調査しました。その結果、はじめの論文で主張されているような加速的な地殻変動は見られませんでした。これは、東北地方太平洋沖地震の前に、傾斜計データのノイズレベルを超えるような大きな前兆的なすべりがなかったことを示しています。これに基づき、本震直前にあったかもしれない先駆的なすべりの規模の上限に新たな制約を与えることができました。
Long-term slow slip events with and without tremor activation in the Bungo Channel and Hyuganada, southwest Japan
2015-2016 および 2018-2019 の期間に豊後水道から日向灘の地域で発生した長期的スロースリップイベント (SSE) のすべり過程を、独自の観測を含むGNSSデータに基づいて推定しました。両者のすべり領域が深部微動帯までのびているかどうかと、微動活動の活発化の有無が対応することを見出しました。また 2018-2019 の期間には、豊後水道の(1)大分県付近から南方向の宮崎平野地下にすべりが進展し「宮崎平野SSE」につながったこと、(2)同様に大分県付近から東方向の足摺岬周辺域まですべりが進展したこと、など、これまでに指摘されていなかったすべり伝播の経路が明らかになりました。