■報告者(共同報告の場合は代表者)
□氏名(ふりがな):杉野昭博(すぎのあきひろ)
■報告題目(40字以内):母よ!殺すな 2012 ― 新聞記事データベース
■発表要旨(2,000字以内)[註、文献、図表等を含む]:

1991年以降に発生した親(親族)による障害児殺しの事件を、新聞記事検索エンジン(聞蔵、ヨミダス、毎索、産経)で調べ、事件発生年、事件発生地、加害者、加害者の年齢、被害者(加害者との関係)、被害者の年齢、障害の種類、無理心中の有無を表にまとめ、さらにグラフ化し、経済、社会、政治などの指標(自殺率、高齢化率、失業率など)と照らし合わせて考察する。

【事件発生件数】
1991年から2012年5月現在までに報道された事件数の合計は126件だった。1991年〜1994年にかけて、親(親族)による殺害事件の件数は平均2件だった。しかし、1995年にその3倍である6件が発生する。それ以降は、平均5件で推移するが、2003年には一旦減少した後2004年には9件に、2006年には16件へと急激に増加した。2006年以降は増加と減少を繰り返しながら全体としては減少傾向が見られる。

【被害者の障害種別】
報道された126件の事件の被害者は129人だった。2名の障害者(キョウダイ)が殺害された事件が3件あるため、被害者数は事件数よりも3人多い。被害者129人について、報道された障害名を行政上の障害種別によって身体、知的、精神の3障害とその他に分類した。ただし、「発達障害」については、2004年までは「知的障害」に分類し、発達障害者支援法が施行された2005年以降は「発達障害」として分類した。
障害種別分類の結果は、知的障害が58人で被害人数が最も多く、次に精神障害が21人、身体障害が20人である。また、発達障害が7人、心身障害5人、脳障害2人、肝機能障害1人であった。報道記事が「障害」としか載せていない被害者が15人いたが、これらについては「障害種別不明」とした。

【被害者の男女比】
 性別不明の2名を除くと、127人の被害者の男女比は、男性が76人(60%)で、女性が51人(40%)であり、男性の数が女性の数を上回った。

【被害者の年齢】
 計129人の被害者を、1歳未満、10歳未満、10代、20代、30代、40代、50代、60代以上という8つの年齢区分に分けて集計した。その結果、1歳未満が4人(3%)、10歳未満が17人(13%)、10代が14人(11%)、20代が37人(29%)、30代が29人(22%)、40代が16人(12%)、50代が6人(5%)、60代が5人(4%)、年齢不明が1人(1%)、という結果になり、20代と30代の被害者が半数を占めている。

【加害者の種類】
加害者が母親なのか父親なのか、または夫婦での犯行だったのかを集計した結果、母親による単独犯行が72件、父親による単独犯行が38件、夫婦による犯行が9件、その他7件となった。全126件の事件のうち約6割が母親による単独犯行である。母親による事件関与が多い理由として、父親は仕事に出ていることもあり、介護の負担が母親にかかりやすいことが考えられる。

【加害者の年齢】
 計135人の加害者を、30歳未満、30代、40代、50代、60代、70代以上という6つの年齢区分に分けて集計した。その結果、30歳未満が6人(4%)、30代が16人(12%)、40代が9人(7%)、50代が40人(30%)、60代が38人(28%)、70代が26人(19%)となり、50歳以上が8割近くを占めている。

【無理心中の有無について】
 126件の事件において、「無理心中」、無理心中を図ったが未遂におわる「未遂」、図るまでに至っていない発言のみである「死のうと思った」、「後追い自殺」、「心中なし」の5つに区分し、集計した。「心中なし」が5割、なんらかの形で死を考えているその他の4項目で残りの5割を占めている。

【失業率について】
1990年代の失業率は、1993年から徐々に上がり始め、1997年からはさらに急上し、2002年にピークを迎えている。2002年以降は徐々に低下していくが、2009年に前年のリーマンショックの影響で再び上昇する。

【高齢化率について】
1990年には、12%、その後5年ごとに、14.5%(1995年)、17.3%(2000年)、20.1%(2005年)、23.1%(2010年)と、ほぼ一定の比率で上昇している。2010年には高齢化率がおよそ23%であることから、我が国は「超高齢社会」である。報道された事件のなかにも、加害者や被害者双方の年齢が高齢化している様子がうかがえる。

【発生件数と自殺率の比較】
失業率や高齢化率などのさまざまな資料と照らし合わせた結果、事件発生件数と関連性がみられたのは、自殺率であった。両方とも1995年を境に増加傾向にあり、障害者殺害件数においては、1994年までは、3件未満であったが、1995年に6件と増加してから、年によって増減はあるものの、全体的に件数が多くなった。自殺率も、1994年までは、20%未満であったが、1995年以降は、25%前後で推移している。