特別講演 1日目

明和政子先生 (京都大学大学院教育学研究科)

    

 1992年にミラーニューロンが発見されて以来,関連領域の関心を巻き込みながら膨大な数の研究が蓄積されてきた.しかし,いまだ解決できない問題がある.『ミラーニューロンはどこからやってくるのか― ”Where do mirror neurons come from?” 』,行為の知覚―運動特性を統合して表象するシステムは,いつ,どのように成立するのか,という問題である.現時点で,ミラーニューロンの個体発生についてはいまだほとんど解明されていない.本講演では,ヒトのミラーニューロンシステムの個体発生を中心に,これまで明らかにされてきた研究の到達点を紹介する.さらに,ヒトのミラーニューロンシステムが「自他分離表象」の獲得とそれを基盤とする種特有の社会的認知機能の発達に果たす役割について考察する.

    

特別講演 2日目

尾崎まみこ先生 (神戸大学大学院理学研究科)

 様々な刺激に誘発される動物行動の多くは「快・不快」を基準に切り替えのスイッチがはいる。個の生存や種の維持を保証する「刺激―行動パラダイム」を概観すると、個の生存や種の維持に益する刺激と行動に「快」感を、これに反する刺激と行動に「不快」感を生得的に関連づける遺伝的な仕組みとともに、後天的な快不快の枠組みを新たに形成する柔軟な仕組みがみえてくる。本来危険を伴う億劫な摂食という行為も、有益な刺激においしさという付加価値を覚える感覚システムを持つことによって楽しみに変えることができるし、社会性動物においては仲間といることに安心を覚える感覚システムにおいて、それに反する相手を敵として排撃するメカニズムが潜んでいる。     
 この講演では、昆虫をモデルに、摂食行動と仲間認識の2本立てテーマとして、好き嫌いからみた行動発達と、できれば進化という問題も少し考えてみたい。