神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)
第240号(2024年11月号[24/11/1発行])
今シーズンの新型コロナワクチン接種について
秋も徐々に深まってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。一週間、一日のうちでも気温が大きく変わるこの時期、風邪など引かれませんように、気温の変化に合わせて着る物をこまめに調整していただけますようにお願いします。
さて、近頃、非常に多くの患者さんから新型コロナワクチン接種に関するご質問を頂くようになりました。これは、新型コロナワクチンに関する正しくない情報が世間で流布されているためだと思われます。
頂く質問の大部分は、①「新型コロナワクチン接種を受けた方がよいのでしょうか?」②「レプリコンワクチンの話しを聞いて接種に不安に感じていますが大丈夫でしょうか?」の2つです。
9月号のリウマチだよりで新型コロナワクチンが定期接種となったことはお伝えしましたが、改めて、2024-2025シーズンの新型コロナワクチンについてご説明させて頂きたいと思います。
今年の4月1日から、新型コロナワクチンはそれまでの特例臨時接種から、定期接種に変更されました。「定期接種」とは、予防接種法で接種することが勧められているワクチンで、集団予防と重篤な疾患の予防のために、対象者全員が予防接種を受けるように努める努力義務がある「A類疾病」と、個人予防に重点を置いた努力義務のない「B類疾病」の2種類があり、新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンはB類疾病となります。
また、新型コロナワクチンの定期接種の対象となるのは、65歳以上の高齢者と60歳から64歳までの一定の基礎疾患を有する方(心臓、腎臓、呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に障害を有し、障害により身の回りの生活を極度に制限される、あるいは、日常生活がほとんど不可能な方(いずれも身体障害者手帳1級所持または同程度))です。ちなみに、関節リウマチは一定の基礎疾患には含まれていません。
一般社団法人日本感染症学会、一般社団法人日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3つの学会は共同で以下のような「2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を10月17日に発表しました。この見解では、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の高齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であり、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨します」とされています。
この理由として①COVID-19の流行はこれからも起こること、②高齢者のCOVID-19の重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であること、③流行株(KP.3)に対応した新たな新型コロナワクチンの接種が必要であること(2024年10月から接種に使用されるJN.1対応ワクチンは、JN.1の派生株であるKP.3に対しても効果を持つことが期待されています)が挙げられています。
今シーズンの新型コロナワクチンの接種には5つのワクチンが使用されます。ファイザーのコミナティ®とモデルナのスパイクバックス®は、2021年の接種から広く使用されてきたmRNAワクチンです。武田薬品工業のヌバキソビッド®は、2022年から使用されてきた組換えタンパクワクチンです。これらの3つのワクチンについてはすでに多くの接種実績があります。新たに追加された2つのワクチンのうち、第一三共のダイチロナ®は、国産のmRNAワクチンです。そして、もうひとつが、Meiji Seikaファルマのコスタイベ®です。コスタイベ®は、レプリコンワクチンと呼ばれる自己増幅型の次世代mRNAワクチンです。自己増幅されるのはウイルスの遺伝子の一部であるスパイクタンパク質のmRNAだけで、感染力のあるウイルスや、体内でウイルスとして複製可能なベクターは含まれていません。ですので、コスタイベ®の接種を受けた人が周囲の人に感染させるシェディングと呼ばれる現象は起こりません。にもかかわらず、間違った内容の情報が流布されてしまっています。
ところで、厚生労働省によれば、今シーズンの新型コロナワクチンの供給予定は、mRNAワクチンが、ファイザー、モデルナ、第一三共を合わせて2,527万回分、組換えタンパクワクチンが270万回分、レプリコンワクチンが427万回分とされています。mRNAワクチンの各社のシェアは公表されていませんが、供給予定の約78%がmRNAワクチンであり、昨年のmRNAワクチンに占めたファイザーのシェアが89%と報道されていること、また、ファイザーは一人分のワクチンがシリンジに充填済みのため注射針を取り付けるだけですぐに接種できますが、武田薬品工業と第一三共は2人分、モデルナは5人分が1バイアルに入っていることから注射器に分けて吸う作業する必要があります。また、コスタイベ®は16人分が1バイアルに入っており、他のメーカーのワクチンと異なり溶解液で溶かしてから注射器に分けて吸う必要があることから、多くの医療機関でファイザーのワクチンが使用されることが予想されます。
ですので、レプリコンワクチンの接種に不安を感じられる方は、医療機関で接種に使用されるワクチンの種類を確認の上、接種を受けることをお勧めします。
リウマチ教室のご案内(オンラインで開催しています)
神戸大学整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中でより良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております(開催週は月により異なりますので予めご確認ください)。関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるように心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
10月のリウマチ教室では、栄養管理部の鍛冶管理栄養士からリウマチ患者さんの食事の工夫に関してお話させていただきますので、ぜひ、ご参加ください。
当院への通院の有無にかかわらず、どなたでもご参加いただけます。また、Zoomのブレークルーム機能を使用しての個別相談も行っていますので、お気軽にご参加ください。
なお、教室への参加ならびに個別相談はウェブでの事前申し込み制とさせていただきます。
日時:2024年11月28日(木)13:30-14:30(第4木曜日です)
演題:「健康作りのための身体活動と運動」
講師:リハビリテーション部 松野 凌馬 理学療法士
司会:三浦 靖史 准教授
参加登録先:https://forms.gle/MtZagnDAXMydWs7h9
12月は年末につきリウマチ教室はお休みです

日時:2025年1月23日(木)13:30-14:30(第4木曜日です)
演題:「2025年:関節リウマチ治療の展望」
講師・司会:三浦 靖史 准教授
参加登録先:https://forms.gle/uXmq1oceqTW7eS1Z6

オンラインリウマチ教室参加申し込み方法
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発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2024.11.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用
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