第62号(2010年1月号[10/1/1発行])
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申し上げます
整形外科リウマチ診療部門一同
  
年頭所感:2010年のリウマチ治療
 平成22年が始まりました。昨年を代表する漢字は「新」でしたが、さて、今年はどのような年となるのでしょうか。厳しい景気と国家財政のもとで、ぎりぎりの状況におかれている日本の医療が、少しでも良い方向に向かうことを期待したいと思いますが、たとえどのような状況であっても、医師となった初心を忘れず、患者さんお一人ずつに最良のリウマチ治療を実施できるように全力で頑張る所存ですので、 本年も、リウマチ患者さん、ご家族、そして私たち医療従事者とで力を合わせてリウマチの療養に頑張って行きましょう。
 さて、初の抗リウマチ生物学的製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)が承認されて本年でいよいよ7年になります。今では、免疫抑制剤メトトレキサート(リウマトレックス®)と生物学的製剤(レミケード®、エンブレル®、アクテムラ®、ヒュミラ®)による、関節リウマチに対する積極的な薬物療法は、非常に一般的な治療となっていますが、未だ正確な情報が患者さんやご家族に伝わっておらず、「特殊な治療」、「病気が悪くなってからする治療」、「副作用が強い治療」などと思われていることがしばしばです。もちろん、どのような治療であれ、治療には良い点と悪い点が必ず存在しますが、「インフォームドコンセント(説明と同意)」の目的は、悪い点を強調して治療法の選択を患者さんの責任に帰するものでなく、最も相応しいと考えられる治療の利点と欠点を十分に理解した上で治療を受けて頂き、患者さん自身により副作用を早期に発見することで、早期に適切な対処を行うことを可能にして、治療に伴うリスクを最少にすることにあります。
 発症早期からリウマチの進行を強力に抑制して寛解(リウマチが完全に治まっている状態)に導けば、身体に障害を来たさないで、ほぼ普通の日常生活を送っていただくことが可能です。また、既にリウマチを患われて長期間が経っておられても、人工関節手術などの手術やリハビリテーションと組み合わせて最新の薬物療法を行うことにより、日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)を大きく改善することができます。リウマチが発病する仕組みがまだ解明されていないために、根本的な治療法が開発されるのには、まだしばらく時間がかかりそうですが、昭和の時代から比較してリウマチ治療は飛躍的に進歩しており、リウマチを完治させる治療法の開発も決して絵空事ではありません。今日の生物学的製剤による治療には、確かに大きな経済的負担が生じますが、今日の治療が将来に渡って続くわけではなく、また、徐々に、治療を休んでも寛解状態が継続している患者さんも報告されるようになってきています。そして、すでに生物学的製剤を使用してみたものの期待したほどの効果がなかった場合でも、トシリズマブ(アクテムラ®)のように全く治療ターゲットが異なる薬だと効果がある場合があります。また、本年には、トシリズマブとも違った治療ターゲットを持った新薬アバタセプト(商品名オレンシア®、製造販売:ブリストルマイヤーズ)も承認される見込みですので、これまで、積極的な治療に踏み切れていない患者さんや諦めてしまっていた患者さんも、是非、ご検討いただけましたら幸いです。

新型インフルエンザ第7報:インフルエンザワクチン情報
 当科に通院中の「基礎疾患を有する者(最優先)」に該当する接種を希望されるリウマチ患者さんへの接種はほぼ完了しており、それ以外のリウマチ患者さんも「基礎疾患を有する者(その他)」に該当するため、現在、接種を順調に進めております。まだ接種が済んでいない患者さんで接種希望の場合には、かかりつけ医あるいは当科での主治医にできるだけ早くお申し出くださいますようにお願いします。

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんやご家族、医療、教育関係者の方々もご参加いただけます。
 1月のリウマチ教室では、三浦准教授から、2009年秋にヨーロッパ及び米国リウマチ学会から発表された新しいリウマチ診断基準に基づく早期診断と早期からの積極的な薬物療法に関する講演を予定しています。2月は三浦准教授より、春に向けて新たな一歩を踏み出される若いリウマチ患者さんに向けて、就職、結婚、妊娠などに関する講演を、3月は、神戸学院大学薬学部の上町先生より、かかりつけ薬局の活用に関する講演を、それぞれ予定しています。本年も整形外科リウマチ教室にご期待下さい。
これからのリウマチ教室の予定 

第2回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにもご参加ください。
日時:2010年3月6日(土)午後2時-4時30分 ( 午後1時30分開場 )
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題:「今年のリウマチ治療の展望」 三浦 靖史 准教授
     「リウマチのお薬のポイント①:メトトレキサートについて」神戸海星病院 薬剤部 濱名 則子 管理薬剤師
     「上手な身体の操り方②」神戸海星病院 リハビリテーションセンター 阿部 渉 理学療法士
     「車椅子からの回復体験」 神戸市こころの健康センター 三好 彩 医師
参加費は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201

それでは、本年が皆様にとって素晴らしい一年になりますように心からお祈り申し上げます。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)