第46号(2008年9月号[08/9/1発行])
 残暑は多少あるものの、ずいぶんと過ごしやすい気候となりましたが、通院中の皆様は、いかがお過ごしでしょうか。9月は、天気や気温がめまぐるしく変化するため、夏の疲れと相まって、体調を崩しやすい時期ですので、忙しくても、無理はできるだけ控えて、療養いただけますようにお願いします。
 ところで、先日、灘区の都賀川で、集中豪雨による鉄砲水のために5名の方が亡くなるという大変悲しい出来事がありました。兵庫県では、2004年の台風23号により、淡路、西脇、豊岡などの広範な地域で大きな洪水の被害が生じましたが、台風の季節を迎え、近年、増えてきた「ゲリラ雨」とも呼ばれる局地的な豪雨とも相まって、水害に見舞われる危険は常に存在しています。そこで、日頃から、災害時の避難場所や避難方法等について、ご家族で相談し確認しておいていただきますとともに、リウマチや他の薬を持って速やかに避難できるように、薬を常に手元に準備していただきますようにお願いします。
 また、被害はなくても、台風などによる交通機関への影響により、予約日に大学病院を受診できない場合もありますので、日頃から、1週間分程度の予備の薬をお持ちいただけるようにお願いします。なお、予備の薬をお持ちでない場合には、主治医に処方をご依頼ください。

妊娠を希望されるリウマチ患者の皆様へ(連載第1回)
 7月のリウマチ教室で、リウマチと妊娠についての講演を行いましたところ、内容に関するお問い合わせをいただきました。長文になりますため、何回かに分けて内容を紙面でお伝えさせていただきます。
 関節リウマチの治療は、ここ10年の間に、メトトレキサート(リウマトレックス®)、そして、エンブレル®やレミケード®といった生物学的製剤が使用できるようになって格段に進歩し、治療を受けながら、ごく普通に生活される患者さんが増えてきました。その中で、若い患者さんのご夫婦が、赤ちゃんを欲しいと思われる気持ちはとても自然なことですが、ほとんどのリウマチ治療薬は、胎児への影響が心配されますので、薬を使用している間は、妊娠を避けていただく必要があります。もし、妊娠を希望される場合には、胎児への影響がほとんどないとされるステロイドによる治療に切り替えて、それまで使用していた薬の影響がなくなるまでの一定期間待機した後に、妊娠を目指すことが、これまで一般的に行われてきました。しかし、メトトレキサートなどのリウマチ薬を中止することにより、リウマチが悪化して、関節破壊が進行したり、受胎しにくくなってしまう場合もあります。そこで、近年、一部のリウマチ薬を継続しながらの妊娠や出産が報告されるようになってきました。けれども、まだ限られた報告しかなく、確立した治療法ではありませんので、胎児への影響は少ないと考えられていても否定はされていない薬を継続しながら、妊娠や出産に臨むことには、リウマチの治療を控えて、妊娠を目指す以上に強い決意が必要になります。そのため、赤ちゃんが欲しいと考えられた場合には、妊娠について、まずは、配偶者、ご家族、そして、主治医と良く話しあってください。主治医に相談される際には、配偶者にも同席していただいて、患者さんがこれから臨もうとしていることを、配偶者にも十分に理解していただくことが、良い結果を得るために、とても重要です。また、専門医の観点から、現時点で何を最も優先すべきなのか、主治医の率直な意見を伺ってください。例えば、年齢の非常に若い患者さんや、発症早期でリウマチが急速に進行しやすい時期の患者さんは、妊娠を焦るのではなく、まずは強力なリウマチ治療を行い、容体が安定して、薬を少なくしても大丈夫な状態にリウマチをコントロールしてから、妊娠を試みた方が良い場合がしばしばあります。逆に、高年齢の患者さんでは、妊娠に適した時間的余裕が乏しいこともあり、治療を優先して妊娠をあきらめるか、それとも妊娠を優先して治療を控えるのか、苦渋の選択をせざるを得ない場合もあります。そして、妊娠を目指すことを考えられたら、大前提として、万一、患者さんか配偶者かの生殖機能に問題があって妊娠が難しいにも関わらず、リウマチ薬を中止することがないように、患者さんと配偶者の両方が、お近くのマタニティークリニックで、検診を受けてください。(次号に続く)

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、関節リウマチの皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催して参りました。教室は、毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、他の週に変更させて頂いております。また、会場は神緑会館多目的ホールを予定しておりますが、使用できない場合は他の部屋へ変更になります。お手数ですが、最新のリウマチだより、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予めご確認の上、ご来院いただけますように、お願い致します。
 講演は、予約不要、参加費無料ですので、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる方も、ご自由に参加下さい。教室では、療養に役立てて頂くために、関節リウマチの治療法、健康維持法や、保健制度など、様々な話題を取り上げております。参加頂いている皆様は、リウマチ教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場として活用されておられますので、初めての方も、安心してご参加ください。
 講演後に、時間が許す限り、個別の療養や治療に関する相談にも応じておりますので、ご希望の方は、検査結果や薬のリスト、レントゲン写真などをご持参ください。
 さて、9月のリウマチ教室は、三浦准教授から、新たに使用することができるようになった抗リウマチ生物学的製剤が、リウマチを抑える仕組みや、自己注射の仕方などについて講演を行う予定です。10月は、薬剤部の久米治験管理室長と三浦准教授から、開発中の抗リウマチ生物学的製剤の治験について、11月は、沢村義肢の戸石・佐野・小西義肢装具士から、足袋式装具について、それぞれ講演を行う頂く予定です。是非、ご出席ください。
これからのリウマチ教室の予定

整形外科リウマチ教室に関するアンケートへのご協力の御礼
 7月および8月のリウマチ教室に参加頂きました皆様に、整形外科リウマチ教室に関するアンケートに、快くご協力いただきましたことを、深く感謝しております。アンケートの解析が完了しましたら、結果をリウマチ教室及びリウマチだよりでご報告させていただくとともに、今後のリウマチ教室の運営に役立てさせていただく予定としております。本当にありがとうございました。

それでは皆様、ダイエットには気をつけながら、味覚の秋を満喫なさってくださいね。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)