第43号(2008年6月号[08/6/1発行])
 早くも暑い日が増えてまいりましたが、皆様は、いかがお過ごしでしょうか。梅雨前の、気温や湿度の変化が激しいこの時期は、思っている以上に風邪を引きやすいですので、汗をかいたらこまめに着替えていただくとともに、うがいと手洗いをしっかりと行っていただくようにお願いします。

抗リウマチ新薬アクテムラ®が処方可能になりました
炎症性サイトカインと呼ばれる情報伝達物質が体内で過剰に産生されることが、関節リウマチの関節炎の原因となることが知られています。これまでは、炎症性サイトカインのうち、TNFα(腫瘍壊死因子α)を抑制する生物学製剤(エンブレル®とレミケード®)のみが国内で使用可能でした。今回、新たに、別の炎症性サイトカインであるインターロイキン6の受容体を抑制する、ヒト化抗体製剤トシリズマブ(商品名アクテムラ®、製造販売:中外製薬)が、4月16日に厚生労働省から承認されました。アクテムラ®は、すでにキャッスルマン病という病気の治療薬として使用されてきましたので、関節リウマチと若年性特発性関節炎(以前には若年性関節リウマチと呼ばれた小児疾患)に対する効能が追加されたということになります。アクテムラ®は、世界初のインターロイキン6受容体の阻害剤であるとともに、国内で開発された初めての生物学製剤です。病院内の審査を経て、6月より当科でもアクテムラ®の処方が可能になりました。アクテムラ®は、通常4週間に1回、1時間ほどかけて点滴により投与します。アクテムラ(R)は、ヒト化抗体(インターロイキン6受容体に結合する部分以外を全てヒト由来のタンパク質に置き換えた抗体)のため、キメラ型抗体(抗体の約1/4は異種由来のタンパク質)のレミケード®とは異なり、エンブレル®同様に、メトトレキサート(リウマトレックス®)の併用を必須とはしません。ただし、病状により併用する場合があります。アクテムラ®は、従来の抗リウマチ薬や抗TNFα生物学的製剤で十分な効果が得られなかったり、副作用のために使用できなかった場合に非常に有用な治療法ですが、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤と同様に、免疫抑制作用により、感染症への抵抗力が低下するという副作用があります。さらに、アクテムラ®特有の現象として、肺炎などの感染症の症状が顕在化しにくいため、軽い症状だと思って放置しておくと、症状が明らかになったときには重篤化してしまっている場合があります。そのために、アクテムラ®を使用されるリウマチ患者の皆様には、これまで以上に体調管理を気をつけて行っていただく必要があります。また、アクテムラ®は、エンブレル®やレミケード®と同様に、生物学的製剤と呼ばれる生きた細胞を使って合成されるタンパク質の製剤であるため、非常に高価であることも短所です。さらに、アクテムラ®は、継続しての投与が必要です。以上のことから、アクテムラ®の使用開始に当たっては、事前の検査と十分な説明を実施させていただきますので、アクテムラ®による治療を希望される方は、主治医までご相談ください。
今月6月は「リウマチ月間」です。
関節リウマチについての理解を深めて、より良い療養を行いましょう。

 
熱中症に注意しましょう
 梅雨に向けて暑さと湿度が増して、熱中症の危険が増加しています。熱中症は、予防することが何よりも大切ですので、気候や体調を十分に把握して、十分な水分摂取を行い、暑いときには外出や運動を控えるようにし、日中に外出する必要があるときには帽子や日傘で日光を遮るようにお願いいたします。

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、関節リウマチの皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催して参りました。教室は、毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、第3週目(5週目まである場合は4週目)に変更させて頂いております。また、会場はできるだけ良い場所を確保するように努めておりますが、随時変更になります。お手数ですが、最新のリウマチだより、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予めご確認の上、来院いただけますように、お願い致します。
 講演は、予約不要、参加費無料ですので、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる方も、ご自由に参加下さい。教室では、療養に役立てて頂くために、関節リウマチの治療法、健康維持法や、保健制度など、様々な話題を取り上げております。参加頂いている皆様は、リウマチ教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場として活用されておられますので、初めての方も、安心してご参加ください。
 講演後に、時間が許す限り、個別の療養や治療に関する相談に応じておりますが、診察そのものは、リウマチ教室ではできません。リウマチかどうか分からない場合などは、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、お願いいたします。
 6月のリウマチ教室は、薬剤部の矢島空弓薬剤師に、リウマチのお薬についての講演を行って頂く予定です。夏休み時期となる7月は、三浦准教授から、若いリウマチ患者さん向けに、リウマチ治療と妊娠についての講演を、8月は、リハビリテーション部の井上順一朗理学療法士から、健康維持のための運動療法について、9月は、三浦准教授から、新たに使用することができるようになった抗リウマチ生物学製剤について、それぞれ講演を行う頂く予定です。是非、ご出席ください。
これからのリウマチ教室の予定

 湿度と温度が高く食中毒が発生しやすい気候となっておりますため、食品衛生には十分にご注意くださいますようにお願いします。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)