第42号(2008年5月号[08/5/7発行]) 
 天候と日程に恵まれた今年のゴールデンウィークを、皆様は、いかがお過ごしになられましたでしょうか。行楽に出かけられて、あるいは、ご家族が帰省されて、少しお疲れになられた場合は、1週間程度、のんびりと過ごして、疲労回復を図ってくださいますようにお願いします。また、温かく湿度が比較的低い5月には、リウマチの調子が好転する場合が多いのですが、くれぐれも、無理せず、頑張り過ぎず、でも、適度に運動もして、マイペースで体調を維持なさってください。また、外出の機会が増えるこの時期も、冬場と同様に、帰宅時のうがいと手洗いをしっかりと行ってくださいますようにお願いします。
日本リウマチ学会参加報告
 4月23日から26日まで、東京で第52回日本リウマチ学会学術集会が開催されました。整形外科からは、リウマチ診療グループ医師全員が出席して発表を行いました。学会において、昨年12月に報道されましたエタネルセプト(エンブレル®)の副作用について、日本リウマチ学会の特別調査委員会から、「死亡率は科学的に見て高くはない」との主旨の見解が発表されました。もちろん、 エンブレル® に限らず100%副作用のない治療薬はありませんので、学会で得た最新の知見に基づき、より一層の注意を払った上で、適切な最新のリウマチ治療を皆様に提供できますように、最大限の努力をして参ります。
抗リウマチ新薬承認のお知らせ
 4月16日に、2種類の新しい抗リウマチ薬が厚生労働省から承認されました。ひとつは、リウマチの関節炎を悪化させる、炎症性サイトカインのひとつであるインターロイキン6の受容体を抑制する、ヒト化抗体製剤トシリズマブ(商品名アクテムラ®、製造販売:中外製薬)です。この薬は、国内で開発された、世界初のインターロイキン6受容体の阻害剤であり、これまで、キャッスルマン病という病気に対してのみ、使用が承認されていましたが、関節リウマチに対する効能追加が、認められました。
 もうひとつは、エタネルセプト(エンブレル®)やインフリキシマブ(レミケード®)と同様に、炎症性サイトカインであるTNFαを抑制する、完全ヒト型抗体であるアダリムマブ(商品名ヒュミラ®、製造販売:アボットジャパン・エーザイ)で、海外では、既に承認されており、関節リウマチを始め、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎などの疾患の多くの患者さんに対して使用されています。どちらの新薬も、エンブレル®やレミケード®と同様に、生物学的製剤という特定のタンパク質のみに作用する薬剤であり、高い有効性を示す一方で、非常に高価であることが短所です。アクテムラ®は、通常4週間に1回の点滴、ヒュミラ®は、通常2週間に1回の皮下注射により投与しますが、どちらも、レミケード®とは異なり、エンブレル®同様に、メトトレキサート(リウマトレックス®)の併用を必須とはしません。これらの新薬は、従来の抗リウマチ薬や生物学的製剤で十分な効果が得られなかったり、副作用のために使用できなかった場合の有用な治療法として、大いに期待されています。院内では、アクテムラ®は6月より、ヒュミラ®は、少し遅れて使用可能になる見込みですので、追って、皆様にお知らせ致します。

歯医者さんに行きましょう(再掲)
 歯科には、歯が痛くなったときに行けばよいとお考えではないでしょうか。リウマチの痛みと炎症を和らげるために、消炎鎮痛剤を常時服用しているリウマチ患者さんは、虫歯や歯周病の痛みに鈍感になっています。そのため、痛みを感じないうちに、ひどい虫歯や歯周病になってしまっていることが、残念ながら、しばしばあります。そこで、特に症状がなくても、半年に1回程度、歯の定期健診と歯石の除去を受けることが、とても重要です。この春こそは歯科を受診して、虫歯や歯周病の予防と早期治療を行いましょう。詳しくは、4月号を参照ください。 

診療遅延ならびに一部代診のお詫び
 電子カルテ導入による診療の遅延は、システムの整備が遅ればせながら進むとともに、徐々に改善しつつありますが、先日来、報道されておりますとおり、神戸大学内で発生した不適切な遺伝子組換え実験問題への対応のために、遺伝子組換え実験安全委員会委員である三浦准教授の外来を一時的に休止せざるを得ない状況が生じております。診療の遅延と一部代診により、皆様に大変なご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、関節リウマチの皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より、整形外科リウマチ教室を開催しております。教室は、毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。ただし、事情により、最終週に開催が困難な場合には、第3週目(5週目まである場合は4週目)に変更させて頂きます。また、神緑会館を使用できない場合には、会場が変更になります。お手数ですが、最新のリウマチだより、あるいは、大学病院ホームページで、日時と会場を予めご確認の上、来院いただけますように、お願い致します。
 講演は、予約不要、参加費無料ですので、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる方も、ご自由に参加下さい。教室では、療養に役立てて頂くために、関節リウマチの治療法、健康維持法や、保健制度など、様々な話題を取り上げております。参加頂いている皆様は、リウマチ教室を、患者相互や、患者と医療従事者の交流の場として活用されておられますので、初めての方も、安心してご参加ください。
 講演後に、時間が許す限り、個別の療養や治療に関する相談に応じておりますが、診察そのものは、リウマチ教室ではできません。リウマチかどうか分からない場合などは、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、お願いいたします。
 5月のリウマチ教室は、リハビリテーション部の杉山幸一理学療法士に、腰痛・膝痛を減らす運動についての講演を行って頂く予定です。6月は、薬剤部の矢島空弓薬剤師に、リウマチのお薬についての講演を、7月は、三浦准教授から、若いリウマチ患者さん向けに、リウマチ治療と妊娠についての講演を行う頂く予定です。是非、ご出席ください。

 気持ちの良い天候が続いておりますが、思いがけず暑い日もありますので、外出時には、熱中症に十分にご注意ください。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)