第36号(2007年11月号[07/11/1発行])
 秋も深まり、山々が、赤や黄色の葉にすっかり覆われるようになってまいりました。秋の行楽シーズンも真っ盛りで、紅葉狩りなど計画されておられる患者様も多いことと思います。11月といっても、天気の良い日には、強い日差しが当たり、気温も上昇するため、外出時には、汗ばんでしまうことも多いと思います。汗をかいたままで放置しておくと、体が冷えて、風邪を引く原因になってしまいますので、こまめに上着を脱いで体温を調整するとともに、汗ふきタオル等を持参してお出かけください。
 インフルエンザの予防接種を受けましょう
 恒例ですが、冬を前にして、インフルエンザ対策をお話したいと思います。関節リウマチでは、本来、体に侵入したウイルスや細菌などの病原体を攻撃する免疫が、誤って自分の関節滑膜を攻撃してしまうことによって関節が破壊されます。そこで、抗リウマチ薬は、免疫を抑制することにより、リウマチを治療していますので、リウマチ治療に伴って、病原体に対する免疫力が弱ってしまいます。そのため、リウマチ患者様は、インフルエンザに罹りやすく、治りにくい、さらに、こじらせて肺炎などになりやすいので、積極的にインフルエンザの予防に努める必要があります。
 インフルエンザ対策の基本は、ワクチン接種による予防です。インフルエンザワクチンは、エーテルやホルマリンで処理された、HAワクチンと呼ばれる不活化ワクチン(死んだウイルスの一部)であるため、リウマトレックス®(メトトレキサート)や生物学的製剤などの、免疫抑制剤による治療を受けているリウマチ患者様でも、接種の副作用として、インフルエンザに罹ってしまう心配はありません。一方、麻疹(はしか)や風疹のワクチンは、生ワクチン(病原性の低い生きたウイルス)ですので、メトトレキサートなどで治療中のリウマチ患者様は、接種を受けることはできませんのでご注意ください。
 専門的な治療に特化した特定機能病院である大学病院では、患者様への予防接種を行っておりませんので、お手数ですが、お近くのかかりつけ医療機関で、接種してもらってください。接種してから効果が出るまで、通常、2週間から1ヶ月ほど要しますので、インフルエンザの流行が始まる前で、ワクチンの在庫が十分にある11月中が、接種に最適です。
 なお、ワクチンの効果は、約5ヶ月程しか持続しません。また、毎年、流行が予想されるインフルエンザの型に合わせたワクチン株を接種しますので、「昨冬に接種を受けたから大丈夫」ということはありません。ですので、昨年に接種を受けられていても、本年も接種を受けていただけますようにお願いします。インフルエンザワクチンの接種には健康保険は適応されませんので、接種に要する費用は、通常、自己負担になります。ワクチン接種の価格は、医療機関、接種を受ける人の年齢、居住する市町村により異なりますので、かかりつけの医療機関の窓口でご確認下さい。ワクチンの2回接種を奨められた場合、医師の指示に従ってください。高齢者やお子様がおられる家庭では、できるだけ、同居のご家族全員が接種されることをお勧めします。インフルエンザワクチンは、特定の型のインフルエンザの予防には役立ちますが、通常の風邪には効果はありませんので、ワクチン接種を受けていても、うがいや手洗いなどによる予防に、日々、努めて下さい。
 万一、インフルエンザにかかってしまった場合には、発病早期であれば薬物による治療が可能です。A型またはB型インフルエンザの場合、タミフル®(リン酸オセルタミビル) 、リレンザ®(ザナミビル) という薬が治療に有効ですが、症状が発現してから、48時間以内に使用を開始しないと効果がありません。また、A型とB型インフルエンザウイルス以外には無効です。これらの薬には副作用も報告されていますので、適応があるかどうか、医師の診察と検査を受けることが必須です。いたずらにインフルエンザ治療薬に頼ることなく、予防に努めることが、何よりも重要であることをご理解ください。

骨粗鬆症治療薬の1週間製剤について(再掲)
 骨粗鬆症治療薬の1週間製剤であるアレンドロネート(ボナロン®/フォサマック®)35mg錠が、10月1日から、新薬に対する2週間分までという処方制限が解除されて、長期の処方が可能になりました。また、リセドロネート(ベネット®/アクトネル®)の1週間製剤である17.5mg錠が、新たに発売になりました(ただし、来年の6月末までは、処方は2週間分までに制限されます)。これらのビスフォスフォネート製剤は、起床時にコップ1杯の水と一緒に内服して、その後30分間は、食事をしたり、横になってはいけないのですが、1週間製剤では、薬の量が従来の7倍になっていて、これまで、毎朝の内服が必要だったのが、週1回だけで済みます。現在、ビスフォスフォネート製剤を内服されていて、1週間製剤への切り替えをご希望の患者様は、主治医までご相談ください。

整形外科リウマチ教室のご案内
 毎月、多くの患者様やご家族の皆様に、リウマチ教室にご出席頂き、スタッフ一同、感謝いたしております。整形外科リウマチ教室は、原則として、毎月最終木曜日、午後1時から2時に、定期的に開催しております。講演の後、個別相談の時間も設けております。予約不要、参加費無料ですので、当院に通院中以外の患者様や、ご家族の皆様も、是非ご参加下さい。教室では、療養に役立てて頂くために、リウマチに直接関連するテーマだけではなく、リウマチ患者様の健康維持や、保健に関する様々な話題を取り上げております。参加頂いている多くの患者様は、患者様同士、患者様、ご家族と医療従事者の交流に活用されておられますので、まだ一度も参加されたことのない患者様も、安心してご参加ください。
 さて、11月は、澤村義肢製作所の戸石大介義肢装具士に、リウマチ患者様の足の悩みに対処するために、様々に工夫された整形靴と足底装具について、講演して頂く予定ですので、足についてお悩みの患者様は、是非、ご参加下さい。

翌月のリウマチだよりはこちら 
リウマチだよりのリストに戻るriumachi_bianri0712.htmlriumachidayori.htmlshapeimage_1_link_0shapeimage_1_link_1

神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)