第133号(2015年12月号[15/12/1発行])
 11月は週末に雨の日が多かったせいか、紅葉を楽しむ間もないうちに、気がつけば、もう師走となってしまいました。まもなく神戸ルミナリエも始まり、年の瀬の訪れが六甲おろしの寒さとともに実感されて、何かと気ぜわしくなる今日この頃ですが、皆様、風邪など引かれずに元気にお過ごしでしょうか。
 さて、これから一日一日と厳しくなる冬の防寒対策ですが、温かくなるからと言って、ズボンや靴下を幾重にも重ねて履くと膝や足首の動きが制限されるとともに、足底の感覚が鈍くなって、転倒しやすくなってしまいます。そこで、防寒対策としては、薄くて温かい下着を着用するなどして、必要以上に厚着をされることのないようにお願いします。 

アメリカリウマチ学会参加報告
 11月の上旬に、サンフランシスコで開催されたアメリカリウマチ学会に参加しました。学会では、開発中の新しい抗リウマチ薬として、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)と類似したヤヌスキナーゼ(JAK)などの細胞内シグナル伝達物質を阻害する低分量の薬が複数報告されていた他、現在トシリズマブ(アクテムラ®)しかないIL-6経路を阻害する新たな生物学的製剤であるSirukumabやSarilumab、さらに、日本発の新薬として細胞間情報伝達物質ケモカインのひとつであるフラクトカインを治療標的とした新たな生物学的製剤について発表されていました。また、従来の抗リウマチ生物学的製剤の治療標的であるTNFαに加えてインターロイキン(IL)-17も同時に抑制する二重特異性抗体の開発が進められていることが報告されていました。その他に、トシリズマブ(アクテムラ®)やアバタセプト(オレンシア®)といった抗リウマチ生物学的製剤を他のリウマチ近縁疾患に対して使用した場合の成績も発表されていました。
 学会中は、休診させていただきご迷惑をお掛けしましたことをお詫びしますとともに、今後、学会で得た様々な知見を診療に活かして、患者の皆様の期待に応えたリウマチ治療を実施するように努めて参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

乾癬治療薬セクキヌマブ(コセンティクス®)に関するお知らせ
 新しい作用機序を持つ生物学的製剤であるセクキヌマブ(商品名コセンティクス®、ノバルティスファーマ/マルホ)が、乾癬(尋常性乾癬、関節症性乾癬)の治療薬として本年3月から発売されています。セクキヌマブは、ヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-17Aモノクローナル抗体であり、乾癬の病態に関与するサイトカインのひとつであるIL-17Aに特異的に結合することにより、IL-17Aの働きを選択的に抑制して乾癬の症状を改善します。通常、1回300mgを、最初の5回目までは毎週、以後は4週間隔で、皮下注射します。充填済みシリンジであるコセンティクス®皮下注150mgシリンジ1mLの薬価は73,132円/本で、1回に2本ずつ皮下注射しますので、年間薬価は、治療1年目は2,486,488円、2年目以降は1,901,432円になります。なお、コセンティクス®皮下注150mgシリンジ1mLは当院ではすでに院内採用となっています。

 新規抗リウマチ薬Peficitinibの長期試験に関するご案内(再掲)
 抗リウマチ薬として国内外で開発が進められている新規JAK阻害薬Peficitinib(ASP015K)の二つの第3相試験を、整形外科と膠原病リウマチ内科の両科で昨年秋より実施しています。また、今年の10月からは、これらの治験を終了された患者さんで一定の条件を満たす場合に、治験薬が承認されるまで継続的に治験薬を使用いただける長期継続投与試験を開始しています。新しい抗リウマチ薬を世に出すためには、患者さんにご参加いただく治験の実施が欠かせません。治験の性質上、ご参加頂ける人数は限られていますが、本治験ではまだ人数に余裕がありますため、ご参加頂ける患者さんを引き続き募集しております。なお、参加の締め切りは現時点では来年3月頃の見込みですので、治験に興味をお持ちの患者さんは、主治医まで早めにご相談いただけますようによろしくお願いします。

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
 さて、12月は年末となるため、リウマチ教室はお休みです。来年1月の教室では、三浦准教授から新年の初めに当たって、これからのリウマチ治療の展望についてお話させていただく予定です。皆様のご参加をスタッフ一同、心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2015年12月-2016年7月)
12月は年末につきリウマチ教室はお休みです

日時:2016年1月28日(木)午後1時-2時 
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「2016年のリウマチ治療の展望」  
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2016年2月18日(木)午後1時-2時(第3週です)
会場:外来診療棟4階第2会議室(場所が異なります)
演題:「若いリウマチ患者さんへ:仕事、結婚、妊娠、育児などについて」
講師・司会:三浦 靖史 准教授 

日時:2016年3月31日(木)午後1時-2時 
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチの手術と人工関節置換術」  
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2016年4月28日(木)午後1時-2時 会場:神緑会館1階多目的ホール
日時:2016年5月19日(木)午後1時-2時 会場:神緑会館1階多目的ホール
日時:2016年6月30日(木)午後1時-2時 会場:神緑会館1階多目的ホール
日時:2016年7月21日(木)午後1時-2時 会場:外来診療棟4階第2会議室
くれぐれもご自愛いただき、良い新年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2015.12.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用

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