第123号(2015年2月号[15/2/1発行])
生命の重さを
 生命が軽んじられたような心痛む事件が国内外で相次いでいます。世界保健機関(WHO)が「健康とは、身体的、精神的そして社会的にあまねく安寧な状態にあることであって、単に病気がないとか弱くないとかいうことではない」と「世界保健機関憲章」で示していますが、身体的、精神的に加えて社会的にも安寧な状態を築くために、生命の重さを大切にするのは当然のこととして、微々たることであっても自分に何ができるかを改めて考えたいと思います。犠牲になられた方々とご家族の皆様に深くお悔やみを申し上げます。
骨粗鬆症の治療と検査について
 近年、関節リウマチの治療は大きく進歩しましたが、骨粗鬆症の治療も着々と進歩しています。昨年5月には、日本骨代謝学会から「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」の2014年改訂版が発表され、ステロイドを治療に使用している患者さんへの骨粗鬆症治療薬の使い方に新たな指標が示されました。また、治療薬自体も、骨吸収を阻害する代表的な治療薬であるビスホスホネートについては、従来の毎日、週1回製剤に加え、4週あるいは1ヶ月に1回といった使用間隔が比較的長い経口製剤、点滴製剤、静脈注射製剤、さらには経口ゼリー製剤など、使用間隔と使用方法の多様化が進んでいます。また、骨を増やす作用を有するテリパラチドについては、自己注射を2年間毎日続ける薬と、週に1回の皮下注射を1年半続ける薬の2種類が使用可能です。一方で、強力な骨吸収の阻害作用を有し、6ヶ月に1回の皮下注射を行うデノスマブ(抗RANKL抗体)を使用する患者さんも増えつつあります。デノスマブの使用に当たっては低カルシウム血症の予防のために、カルシウムとビタミンDの合剤などを服用する必要があります。このほかに、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、活性型ビタミンD3もそれぞれ複数の種類の薬が使用されています。
 このように治療薬の進歩は続いていますが、骨粗鬆症の治療は薬だけでは不十分で、骨の言わば材料となるカルシウムやタンパク質などの摂取、適度な運動、そしてビタミンDを皮膚で活性化させる日光浴など、多様なアプローチが必要です。そして、適切な治療のためには適切なタイミングでの評価、すなわち、定期的な骨塩定量検査を受けて頂くことが欠かせません。当科では定期的なレントゲン撮影に合わせた骨塩定量検査を推奨しておりますので、1年以上検査を受けておられない患者さんにおかれましては、是非、積極的に受けていただけますようによろしくお願いいたします。

風邪症状がある場合はマスクを着用してください
 昨年末から寒い日が続いておりますことから、風邪やインフルエンザを罹患される患者さんが増えています。風邪やインフルエンザが疑われる場合には、速やかにかかりつけ医を受診していただくようにお願いします。なお、受診に際しては周囲の患者さんにご配慮いただき、マスクを着用の上、各医療機関の指示に従って診察待ちをしていただけますようによろしくお願いいたします。

新規抗リウマチ薬の治験に関するご案内(再掲)
 国内外で開発が進められている新規の抗リウマチ分子標的薬(JAK阻害薬)の第3相試験を、昨年9月より開始しております。すでに治験に参加いただいている皆様、また、治験について問い合わせを頂いた患者さんならびに医療関係者の皆様、ご協力誠にありがとうございます。今回の治験は2つの異なった試験から構成されており、募集枠にはまだ空きがあります。治験薬に関する詳しい資料を用意しておりますので、治験に関心をお持ちの皆様には、主治医まで是非、ご相談いただけますようにお願い申し上げます。
 
整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者も参加いただけます。
 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。
 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、希望される皆様とお話できますように、お一人当たりの相談時間はある程度で限らせていただいておりますので、質問を予め準備しておいていただけますように、ご協力のほどよろしくお願いします。また、教室では、診察そのものはできませんので、リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、診療をご希望の場合には、整形外科のリウマチ外来を、現在の主治医またはかかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
 さて、2月の教室では三浦准教授から、若いリウマチ患者さんが直面される学業、就職、結婚、妊娠、育児などのさまざまなライフイベントへの対応に関する講演を行う予定としております。寒い時期ではありますが、体調に無理のない範囲でご参加いただけますように、スタッフ一同、お待ちしております。
整形外科リウマチ教室のスケジュール(2015年2月-2015年6月)
日時:2015年2月26日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」 
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2015年3月19日(木)午後1時-2時(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチの手術と人工関節置換術」
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2015年4月30日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「靴型装具について」  
講師:澤村義肢製作所 岡田 佳奈 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授

日時:2015年5月21日(木)午後1時-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチとお口の管理の必要性」
講師:歯科口腔外科・医療技術部 歯科部門 西井 美佳 歯科衛生士  
司会:三浦 靖史 准教授

日時:2015年6月25日(木)午後1時-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチ患者に対する運動療法と関節保護」 
講師:リハビリテーション部 松野 凌馬 理学療法士
司会:三浦 靖史 准教授

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ

寒い日が続きますので、くれぐれも皆様ご自愛くださいますようにお願いいたします。
リウマチだよりやリウマチ教室に対するご意見ご要望は、お手紙で外来受付スタッフにお渡し頂くか、郵便、または、ホームページより電子メールでご送付下さい。
連絡先:〒650-0017神戸市中央区楠町7丁目5-2神戸大学整形外科リウマチ診療グループ宛
発行:神戸大学整形外科リウマチ診療グループ© 発行日:2015.2.1. 文責:三浦 靖史 禁無断転載・引用

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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)