第76号(2011年3月号[11/3/1発行])
 いよいよ春一番が吹き、厳しかった冬とお別れができそうです。ただし、暑さ寒さも彼岸までという言葉がありますが、まだしばらく寒暖の差が激しい日が続きますので、皆様、くれぐれも体調を崩されないようにご自愛くださいますようにお願いします。

メトトレキサート成人用量の増量が承認されました
 2月23日に関節リウマチに対するメトトレキサート(リウマトレックス®、およびメトレート®などの後発品)の成人用量の増量が厚生労働省により承認されました。これにより、①メトトレキサートは必要に応じて週16mg(2mgカプセル(錠)を週当たり8カプセル(錠)まで)まで増量して使用することができること、②関節リウマチに対する第一選択薬として用いることができること、の2点が、これまでの用法・用量から変更になりました。これらは海外では普通に行われている使用法であり、当整形外科リウマチ外来では、従来から患者さんの病態に応じて必要な場合には、メトトレキサートの週8mgを超える使用や、第一選択薬としての使用を積極的に行っていますが、今後は公式に承認された使用法として処方させていただくことができます。
 また、内服方法も、これまで、週当たりのメトトレキサートを通常2日間にかけて3回に分けて内服していただいていましたが、1回で全て内服あるいは1日のうちに2回に分けて内服することも新たに認められました。メトトレキサートの増量を行うことにより、従来の用量では十分な効果が認められなかった場合や、当初有効であったのに効果が弱くなってきた場合にも、抗リウマチ作用を発揮することが期待されます。一方で、使用量の増加に応じて、骨髄機能の抑制、免疫機能の低下による易感染性、肝機能障害などの副作用が発現する可能性がありますので、これまでも毎回の受診日に実施しておりますが、自覚症状に変化がなくても定期的な血液検査を受けて頂く必要があります。そして、特に重要なこととして、メトトレキサートの用量や内服法の変更を患者さんご自身の判断で勝手に行ってはいけません。必ず、主治医が定めた用量や内服法に従って頂くようにお願いします。
 メトトレキサートは、現在使用可能な最も抗リウマチ作用の高い内服薬のひとつで、費用対効果は非常に高いのですが、点滴や注射で投与される生物学的製剤を一緒に使用することで、多くの患者さんで骨関節の破壊の進行をほぼ停止できるようになりますので、メトトレキサートの増量が承認されたことで、生物学的製剤の必要性が無くなるわけではありません。
 さらにこれまでも繰り返しご説明しておりますが、風邪やインフルエンザ、胃腸炎などの感染症にかかったら、その病気が治るまでメトトレキサートの内服は必ず休んでください。リウマチの状態が安定していれば、メトトレキサートの内服を数週間休んでも急には悪くはなりません。また、メトトレキサートの内服を休んだ週には、葉酸製剤(フォリアミン®)を内服する必要はありません。メトトレキサートを休まなければならないことを忘れてしまっている、あるいは知っていてもリウマチが悪くなるのが心配でそのまま飲み続けている患者さんを未だお見かけします。メトトレキサートを休まなかったために風邪がなかなか治らなかったり、こじらせて肺炎になってしまう場合もありますので、くれぐれも内服を休むようにお願いいたします。
整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者の方もご参加いただけます。
 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。皆様の参加を心からお待ちしております。
 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ、かかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
 さて、3月のリウマチ教室では、三浦准教授より新年度・新学期に向けて若い患者さんにとって大きな課題である就職や妊娠・出産・育児に関する講演を予定しております。皆様、是非ご参加下さい。
2011年3月-6月の整形外科リウマチ教室の予定
日時:2011年3月24日(木) 午後1-2時(第4週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職と妊娠について」
講師・ 司会:三浦 靖史 准教授

日時:2011年4月21日(木) 午後1-2時(第3週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「関節リウマチと装具」(講師と演題が変更になりましたので、ご了承ください)
講師:澤村義肢製作所 副島 里佐・戸石 大介 義肢装具士
司会:三浦 靖史 准教授

日時:2011年5月19日(木) 午後1-2時(第3週です) 
会場:外来診療棟4階第2会議室(会場が異なります)
演題:「リウマチの手術」
講師・司会:三浦 靖史 准教授 
日時:2011年6月30日(木) 午後1-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチに対する運動の効果:海外における取り組み」
講師:リハビリテーション部 井上 順一朗 理学療法士
司会:三浦 靖史 准教授

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ

第5回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにご参加ください。
日時:2011年3月26日(土) 午後2時-4時30分 ( 午後1時30分開場 )
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題:
「リウマチのお薬のポイント④ ステロイドについて」  神戸海星病院 薬剤部 濱名 則子 管理薬剤師
「 リウマチの食事のポイント」  神戸海星病院 栄養部 松岡 良平 管理栄養士
「身体の上手な使い方⑤ 足踏みで身体メンテナンス」  神戸海星病院 リハビリテーションセンター 阿部 渉 理学療法士
「 新しい抗リウマチ薬について」 三浦 靖史 准教授
参加費は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201

 皆様、気温が上昇して外出しやすくなりましたら、屋外で体を動かして健康作りに励みましょう。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)