第74号(2011年1月号[11/1/1発行])
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申し上げます
整形外科リウマチ診療部門一同

年頭所感:夢
 初夢に見ると縁起が良いものとして「一富士、二鷹、三茄子」 とことわざにありますが、皆様はどのような初夢をみられましたでしょうか。ノーベル平和賞受賞者のキング牧師が、有名な”I have a dream!”の演説をした1963年にはアスピリンかステロイドしかなかったリウマチの治療薬は、アメリカ初の黒人大統領が誕生した21世紀には大きく進歩して、生物学的製剤(バイオ新薬)の登場により「リウマチを寛解させること」は、すでに夢ではなく現実となりました。
 ただし、「寛解」という概念と、患者さんお一人お一人が考えておられる「治った」という概念に少し違いあるように思います。「寛解」とは、「病気による症状がほぼ消失して、臨床的にコントロールされた状態」を言います。そして、炎症と自他覚症状が改善した状態(臨床的寛解)、関節破壊が停止した状態(構造的寛解)、身体機能が維持された状態(機能的寛解)の3つ全てが導入された状態を「完全寛解」と呼び、今日の治療目標になっています。
 患者さんの中には、とりあえず症状が改善すれば十分と考えてそれ以上の治療を望まない方もおられるのですが、関節破壊を防止し、将来、身体に不自由が生じないことを考えて、治療を行う必要があります。また、一旦関節破壊が生じて身体機能が制限されていると、標準的薬物療法であるメトトレキサートと生物学的製剤の併用療法といえども効果には限界があり、検査値は改善しても患者さんは治っていると実感できない場合もあります。もちろん、薬物療法と組み合わせて人工関節手術とリハビリテーションを実施することにより、身体機能に制限があっても飛躍的に改善する場合もありますが、完全寛解に至るためには、早期診断と関節破壊が生じる前の早期からの積極的な治療を行うことが何よりも重要です。
 近年、完全寛解から更に一歩進んで、 生物学的製剤あるいは抗リウマチ薬を中止しても寛解が維持できている状態(バイオフリー寛解、ドラッグフリー寛解) に至る患者さんも出てきていますが、まだ、どのような患者さんが薬を中止しても大丈夫かは十分に分かっていません。一方で、合併症の存在、高額な医療費、地方での専門医不足、副作用の発現などのさまざまな理由により、重症にも関わらずメトトレキサートや生物学的製剤が使用できない場合もあります。ですので、進歩したと言ってもリウマチ治療は画一的ではなく、患者さんの病状や社会的事情を十分に考慮して治療方針を決定する必要があります。そのためには、患者さん自身がリウマチについての正しい理解を深めることが極めて大切です。
 このリウマチだよりに「リウマチの根治療法」を書けるようになることが、私の現在の夢です。これは、いつかは必ず現実になることと信じていますが、その日が来るまでは、現在ある最良のリウマチ治療を時期を逸さずに導入して、完全寛解、あるいは完全寛解に準じる状態にまで改善していただけるように、福田医師を初め、整形外科と各科のスタッフと協力して、全力を尽くしてリウマチ患者さんの治療と啓発に当たっていく所存ですので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者の方もご参加いただけます。
 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。皆様の参加を心からお待ちしております。
 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ、かかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
 さて、年始1月のリウマチ教室では、三浦准教授より2011年に期待されるリウマチ治療の新展開に関する講演を、2月は整形外科外来の川島副看護師長よりリウマチのケアについて、3月は三浦准教授より新年度・新学期に向けて若い患者さんにとって大きな課題である就職や妊娠・出産・育児に関する講演を、それぞれ予定しております。寒い時期ですので、皆様、体調の許す範囲でご参加下さい。
2011年1月-3月の整形外科リウマチ教室の予定
日時:2011年1月27日(木) 午後1-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「2011年:リウマチ治療の展望」 
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2011年2月24日(木) 午後1-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチのケア」
講師:川島 良子 整形外科外来副看護師長
司会:三浦 靖史 准教授	

日時:2011年3月24日(木) 午後1-2時(第4週です)
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「若いリウマチ患者さんへ:就職と妊娠について」
講師・ 司会:三浦 靖史 准教授	

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ

第5回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにご参加ください。
日時:2011年3月26日(土) 午後2時-4時30分 ( 午後1時30分開場 )
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題:
「リウマチのお薬のポイント④ ステロイドについて」  神戸海星病院 薬剤部 濱名 則子 管理薬剤師
「 リウマチの食事のポイント」  神戸海星病院 栄養部 松岡 良平 管理栄養士
「身体の上手な使い方⑤ 足踏みで身体メンテナンス」  神戸海星病院 リハビリテーションセンター 阿部 渉 理学療法士
「 新しい抗リウマチ薬について」 三浦 靖史 准教授
参加費は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201

 それでは皆様、寒い日が続きますので、くれぐれもご自愛下さいませ。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)