第73号(2010年12月号[10/12/1発行])
 つい先日まで猛暑だったはずが、あっと言う間に秋が過ぎ去って、気がつけばクリスマス飾りが街に溢れています。気温の変化の激しさに11月の外来ではかなりの数の患者さんが風邪をひかれていたように思います。昔から「風邪は万病のもと」と言いますが、さまざまな抗リウマチ薬で治療を受けておられるリウマチ患者さんにとっては「風邪は大病のもと」で、こじらせてしまうと肺炎や敗血症により命に関わる危険があります。さらに、冬はインフルエンザの季節でもあります。昨年の大騒ぎが嘘のように話題に上がることが少ないインフルエンザですが、いつ猛威を奮ってもおかしくはありません。そこで、先月のリウマチ教室で取り上げました冬を健康に過ごすための方法についてお知らせします。

冬を健康に過ごすために:冬対策マニュアル
インフルエンザワクチンを接種しましょう
 インフルエンザ対策の基本はワクチンの接種と日頃のうがいや手洗いです。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、抗リウマチ薬や生物学的製剤で治療中の患者さんも、アレルギーなどの他の問題がなければ接種を受けることができます。ただし、ワクチンは接種してから効果を発揮するまで2週間程かかりますので、流行が始まってから接種したのでは間に合わないかもしれません。すでに10月から接種が始まっていますので、お近くの医療機関に申し込みの上、速やかに接種していただきますようにお願いします。今年のワクチンは、昨シーズンに新型インフルエンザと呼ばれたH1N1を含む3つのウイルス株に対するワクチンが組み込まれていますので、昨シーズンのように季節性と新型のワクチンを別々に接種する必要はありません。1本のワクチンを、成人の場合、通常1回接種していただけば大丈夫です。また、できるだけご家族の皆様でワクチン接種を受けてください。なお、インフルエンザワクチンは普通の風邪には全く効果がありません。さらに、ワクチンを接種してもインフルエンザに必ずしもかからない訳でもありませんので、油断はされないようにお願いします。
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)も高齢の方は接種しましょう
 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)の接種を、特に高齢の患者さんや風邪をひきやすい患者さんにお勧めしております。なお、一度接種を受けると少なくとも5年間は効果が継続しますので、インフルエンザワクチンと異なり毎年接種する必要はありません。昨年に接種された患者さんが間違って再度接種されないようにご注意ください。
風邪を引いたら治るまでリウマトレックス®は休みましょう
 風邪やインフルエンザなどにかかってしまった場合には、完全に治るまでリウマトレックス®(メトトレキサート)の内服は必ず休んで下さい。リウマチの状態が安定していれば、内服を数週間休んでも急には悪くはなりません。また、リウマトレックス®を休んだ週には、フォリアミン®(葉酸)を内服する必要はありません。これまでも機会があるごとにご説明していますが、風邪のときにはリウマトレックス®を飲むのを休まなければならないことを忘れてしまっている、あるいは知っていてもリウマチが悪くなるのが心配でそのまま飲み続けている患者さんをしばしばお見かけします。リウマトレックス®を休んでいないために風邪を長引かせてしまったり、こじらせて肺炎になってしまう患者さんもおられますので、くれぐれも内服を休むようにご注意ください。
風邪を引いたら速やかにかかりつけ医を受診しましょう
 咳、鼻水、のどの痛み、発熱などの症状が起きた場合に、自分で風邪だと診断をして、市販薬や置き薬で症状を抑えてはいけません。また、次回の大学病院の受診日までそのまま放置してもいけません。すぐにお近くのかかりつけ医を受診して、必要なお薬を処方して貰ってください。また、普通の風邪だと思っていたのに実はインフルエンザだった場合に、抗インフルエンザ薬(タミフル®、リレンザ®、ラピアクタ®、イナビル®)は発症後48時間以内に使用を開始しないと効果がありませんので、速やかに受診することはとても重要です。
うがいと手洗いを励行し、マスクは上手に使用しましょう
 外出時にさまざまなウイルスや細菌に接触しているかもしれませんので、帰宅時には、うがいと手洗いをしっかりと行ってください。うがいは、うがい薬を使用するか、あるいは水だけで行っても構いません。手洗いは、手洗い用石けん(ハンドソープ)を使用して念入りに行って下さい。また、常時使用する必要はありませんが、周囲に咳をしている人がいたり、人混みに出かける場合などには、状況に応じてマスクを使用しましょう。なお、マスクの最大の効果は、ウイルスを吸い込まないことでなく、周囲にまき散らさないことですので、風邪を引いたら外出は最小限度にして、外出しなければならないとき、医療機関を受診する際には、周囲の人に移さないように必ずマスクを使用しましょう。
部屋の乾燥を防ぎましょう
 暖房器具を使用すると、室内の空気が乾燥してウイルスが遠くまで飛びやすくなります。また、乾燥はのどや鼻の抵抗力を下げるので、風邪やインフルエンザを誘発します。ですので、暖房をする際には、加湿器などを使って加湿しましょう。また、部屋の換気を定期的に行って下さい。
厚着を避けて運動しましょう
 体が冷えると関節痛がひどくなる場合が多いので、リウマチ患者さんはついつい厚着をしがちです。しかし、靴下やズボンの重ね履きなどの厚着をすると下肢の運動が制限されることから、転倒しやすくなって、最悪の場合、骨折を起こしてしまいます。そこで、部屋ごとしっかりと暖房をして、室内ではできるだけ薄着にするとともに、リウマチ体操など自分でできるリハビリテーションを定期的に行って下さい。
低温火傷に注意しましょう
 使い捨てカイロは、痛む関節や腰などを温めて痛みを楽にするのに便利ですし、近頃では、表面が粘着テープになっていて、好きな場所に簡単に貼ることができる製品もあります。一方で、長時間カイロを皮膚に密着させることにより、低温火傷を負ってしまうことがあります。一旦火傷してしまいますと、感染症を合併したり、皮膚潰瘍になってしまったりする恐れがあります。くれぐれも、皮膚に直接当てずに、衣服の上から使用すること、また、長時間、同一部位に当てたままにしないこと、特に、夜間、腰などに貼ったまま寝てしまわないようにお願いします。
日光に当たりましょう
 冬といっても、天気の良い日もありますので、晴れて暖かい日には外に出て日光浴をしましょう。日光に含まれる紫外線は、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの皮膚での活性化を促進する働きがあります。もちろん、紫外線に当たり過ぎると害もありますが、冬場の散歩程度では心配される必要はありません。
予備の薬をご用意下さい
 冬の時期、雪などの悪天候で、予約された外来受診日に通院できない事態が生じる場合がありますので、受診できなくても、1週間後の外来診療日まで薬が切れることがないように、1週間分程度の予備の薬をお持ち頂くようにお願いします。また、予備の薬は、新しい薬を貰われる度に毎回入れ換えて頂き、いつ貰われたか分からない古い薬を保存しないようにお願いします。
バランス良く栄養をとり、十分に睡眠を取りましょう
 特定の食べ物で風邪が防げる訳ではありませんが、野菜や果物などビタミンの豊富な食品をバランス良く食べましょう。また夜更かしも避けて十分に睡眠をとりましょう。

整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さん、ご家族や医療関係者の方もご参加いただけます。
 関節リウマチの治療や健康維持に関する話題が中心ですが、それ以外にも様々な話題を取り上げております。気軽に参加できる教室となるようにスタッフ一同、心がけておりますので、初めての方も、安心してご参加ください。皆様の参加を心からお待ちしております。
 講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。ただし、教室では、診察そのものはできません。リウマチかどうかわからない場合は、まずは、お近くの医療機関で診察と検査を受けて頂きますように、また、当科での診療をご希望の場合には、水曜日の整形外科リウマチ外来を、できるだけ、かかりつけ医を通じて初診予約の上、受診していただきますようにお願いいたします。
 さて、来年1月のリウマチ教室では、年始のリウマチ教室として2011年に期待されるリウマチ治療の新展開について講演する予定です。是非、ご参加下さい。
2010年12月-2011年2月の整形外科リウマチ教室の予定
*12月は年末につきリウマチ教室はお休みです
日時:2011年1月27日(木) 午後1-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「2011年:リウマチ治療の展望」 
講師・司会:三浦 靖史 准教授

日時:2011年2月24日(木) 午後1-2時
会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「リウマチのケア」
講師:川島 良子 整形外科外来副看護師長
司会:三浦 靖史 准教授	

神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ

第5回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにご参加ください。
日時:2011年3月26日(土) 午後2時-4時30分 ( 午後1時30分開場 )
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題: 詳細は近日中に発表予定ですので、もうしばらくお待ちください。
参加費は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201

 整形外科リウマチだよりも今号で早や7年目を迎えました。リウマチ教室共々、これからも皆様とスタッフとの架け橋にしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは皆様、くれぐれもご自愛いただき、楽しいクリスマスと良い新年をお迎え下さい。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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神戸大学整形外科リウマチだより(Web版)