第66号(2010年5月号[10/4/30発行])
 新緑あふれる時候となりましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。今春は気温差の激しい日が続いておりますので、風邪など引かれませんように、くれぐれもご自愛ください。
若いリウマチ患者さんへ:(3)妊娠について
 [前号から続く] ご夫婦の双方に問題がなければ、妊娠や出産、その後の育児などが、リウマチに与える様々な影響をご説明の上、妊娠に備えて抗リウマチ薬の制限を開始します。メトトレキサート(リウマトレックス®)は催奇形性を持ちますので休薬して通常3ヶ月、最短でも次回の月経が来るまでは受胎しないようにしてください。レフルノミド(アラバ®)は体内に存在する時間が長いので、レフルノミドを吸着して排泄を促進するための特別な薬を使用する必要があります。ブシラミン(リマチル®)やサラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)は妊娠に際して禁忌とはされてはいませんが、もともとの抗リウマチ作用が強くないため、継続して服用する必要があるかどうか、主治医と良く相談してください。胎児に最も安全な抗リウマチ薬はステロイドですので、抗リウマチ薬を制限中はステロイドを中心にした治療を行いますが、ステロイドは関節破壊を抑制する作用はほとんどないのと、特有の副作用があるために、疾患活動性が高くてたくさんのステロイドを使用せざるを得ない場合には、さまざまな問題が生じてしまいます。そこで、生物製剤のエタネルセプト(エンブレル®)を使用しながら受胎される患者さんも最近では報告されるようになってきました。また、妊娠中はリウマチが軽くなる場合が多いと考えられていますが、実際には抗リウマチ薬の中止の影響もあって悪化する場合もあることから、ステロイドのみで治療が不十分な場合には、やむを得ず、エタネルセプトを妊娠中も使用することがあります。出産後には、妊娠中に抑制されていた免疫力が高まってリウマチの再燃が予想されることから、遅滞なくリウマチ治療を再開する必要があり、抗リウマチ薬の再開に際して授乳を中止して頂く必要があります。さらに、育児は、健康な人にとっても大きな負担が心身にかかりますので、リウマチ患者さんの子育てには、配偶者の協力とご家族の理解がより一層重要になります。
 周産期死亡率と妊産婦死亡率の低下ならびに出生率の低下とともに、妊娠や出産は問題がなくて当たり前という誤った風潮もありますが、リウマチの有無にかかわらず、絶対に安全な妊娠や出産はありません。しかし、お子様を授かったときも授からなかったときも、プラス思考で考えて頂ければ、皆様の人生に何らか得られる物があるのではないかと思います。
 リウマチの原因は未解明のため、根治療法はまだありませんが、今日の強力な治療を活かせば、リウマチはもはや普通に生活できる病気のひとつです。若い患者さんのニーズに応じて、就職や妊娠について最大限のサポートをこれからも行ってまいりますので、悩み事がありましたら、主治医まで是非ご相談ください。[完] 

レミケード®ならびにヒュミラ®効能追加のお知らせ
 本年1月に、抗ヒトTNFα抗体製剤インフリキシマブ(レミケード®、田辺三菱製薬)に、すでに承認されているクローン病、関節リウマチとベーチェット病に加えて、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、および乾癬性紅皮症の4種類の乾癬に対する効能・効果が追加され、同時に、抗ヒトTNFα抗体製剤アダリムマブ(ヒュミラ®、アボットジャパン/エーザイ)に、関節リウマチに加えて、尋常性乾癬および関節症性乾癬に対する効能・効果が追加されて、どちらも4月中旬より当大学病院で使用が可能になりました。さらに4月に、レミケード®に強直性脊椎炎に対する効能・効果が新たに追加され、6月中旬より強直性脊椎炎の患者さんにも当大学病院で使用できるようになる予定です。乾癬ならびに強直性脊椎炎でお悩みの患者さんは、これら生物製剤の適応につきまして、主治医までご相談ください。
整形外科リウマチ教室のご案内
 整形外科では、リウマチ患者の皆様とご家族に、関節リウマチについての理解を深めて頂いて、日常生活の中で、より良い療養ができますように、2003年より整形外科リウマチ教室を毎月、開催しております。教室は、事前申し込み不要で参加費無料です。整形外科に通院中の患者さんだけではなく、他の医療機関や診療科で治療を受けておられる患者さんとご家族もご参加いただけます。初めての方も、安心してご参加ください。講演後に、個別の療養や治療に関する相談の時間を設けております。ご希望の方は、病気の状態が良くわかりますように、できるだけ検査結果やお薬手帳などをご持参ください。
 5月のリウマチ教室では、産婦人科医である保健学研究科の松尾教授に、関節リウマチが発症しやすい年齢でもある更年期の女性に生じる様々な体の変化に関する講演を行って頂きます。6月はリハビリテーション部の井上順一朗理学療法士より、リウマチの関節破壊予防に大切な関節保護に関する講演を予定しています。皆様の参加を心からお待ちしております。
整形外科リウマチ教室スケジュール(2010年5月-6月) 
日時:2010年5月27日(木) 午後1-2時
会場:外来診療棟4階第2会議室(整形外科外来前エレベーターで4階に上がって、左方向に進む)
演題:「更年期で変わる心とからだ」 
講師:松尾 博哉 教授 (神戸大学大学院保健学研究科)        司会:三浦 靖史 准教授
日時:2010年6月24日(木) 午後1-2時                      会場:神緑会館1階多目的ホール
演題:「関節リウマチにおける関節保護」 
講師:井上 順一朗 理学療法士(附属病院リハビリテーション部)    司会:三浦 靖史 准教授
神戸大学医学部附属病院での患者教室のお知らせ 

(社)日本リウマチ友の会 第38回兵庫支部大会講演のご案内
 日本リウマチ友の会第38回兵庫支部大会で講演をさせていただきます。会員でない方もご参加頂けます。
日時:2010年6月27日(日) 午後1時-4時
会場:神戸市勤労会館 2階多目的ホール (〒651-0096 神戸市中央区雲井通5丁目1-2) 三宮駅から東へ徒歩5分
演題:「リウマチ診療の新しい考え方」
     神戸大学大学院 医学研究科 客員教授・神鋼病院 膠原病リウマチセンター長 熊谷 俊一 先生
         「若いリウマチ患者さんへ:就職・結婚・妊娠に際して」
     神戸大学大学院 医学研究科整形外科/保健学研究科 三浦 靖史 准教授

第3回神戸海星病院リウマチ教室のご案内
 関連病院である神戸海星病院との共催で、4ヶ月毎に土曜日にリウマチ教室を開催しています。大学病院での平日のリウマチ教室に参加することが困難な皆様は、こちらにご参加ください。
日時:2010年7月3日(土) 午後2時-4時30分 ( 午後1時30分開場 )
会場:神戸海星病院 北棟6階 大会議室 (〒657-0068 神戸市灘区篠原北町3丁目11-15)
演題:
    「リウマチと骨粗鬆症」 神戸大学 医学研究科整形外科/保健学研究科 三浦 靖史 准教授
    「リウマチのお薬のポイント(2):骨粗鬆症の薬について」神戸海星病院 薬剤部 濱名 則子 管理薬剤師
    「身体の上手な使い方(3):関節の保護」神戸海星病院 リハビリテーションセンター 阿部 渉 理学療法士
      「リウマチ患者さんが使える医療制度」神戸海星病院 地域医療連携部 来栖 由季 医療ソーシャルワーカー
参加費は無料ですが、定員60名ですので、事前に電話でお申し込みください。
申込先:神戸海星病院 地域医療連携部  電話:078-871-5201

 今月は教室や講演のご案内で一杯です。暖かくなりましたので、是非、ご出席下さいね。

翌月のリウマチだよりはこちら 
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