ご挨拶

 アフリカも、日本も、そして世界も大きく変動するなか、私たちのアフリカの 開発・貧困削減に関する認識とアイデアも不断に更新を迫られています。皆さん、如 何お過ごしでしょうか。
 さて、この度、高橋基樹及び高橋基樹研究室のサイト を新設することになりました。旧サイトは、ゼミ生諸君に担当してもらっている部分はともかく、私がさぼっており、またサイトの扱いになれていないために、情報を大幅に更新しないままにしておりました。この際思いきって全体的な更新を図ったものです。
 旧サイトについては、上のような情けない状態だったにもかかわらず、予想を超える多くの方に参照していただき、驚いております。現代社会におけるインターネットの重要性を実感した次第です。今後は、その重要性を肝に銘じて、情報の拡充・更新につとめたいと思います。

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 今年になって8年越しで書いてきた拙著『開発と国家―アフリカ政治経済論序説』(勁草書房)を上梓することができました。是非ご一読頂ければ幸いです。同書の出版で、一区切りが付いたと安堵するとともに、反省すべき点も見出しています。その反省を出発点として、研究の新たな次元に足を踏み入れてゆきたいと思っております。
 また、3月にはケニアに出張し、長年訪ねようと思っていた2つの場所に行くことができました。ひとつはリフトバレー州の急傾斜地です。高低差1000mの断崖と言ってもよい傾斜に、人口圧力を背負った人々がしがみつくようにして暮らしている場所です。そこで小生の指導学生第1号である柴田梨恵子さんが、JICAプロジェクトの専門家として活躍してくれています。この場所は、実は、カレンジン民族に属する集団が別の集団の家畜を奪う事件が頻発してきたところとしても有名です。実際に足を運んでみると、所有権とは何か、民族とは何かを考える材料が、たくさん埋まっている場所であることが感じられました。事情が許せば、その材料を掘り出す作業を進めてゆきたいと思います。
 もう一つの場所は、ケニア最大のスラム、キベラです。ここでマゴソ・スクールというノンフォーマル学校を運営する早川千晶さんの案内でキベラをめぐりました。キベラの中の路地は当然舗装はなく、折からの雨でぬかるんだ地面には、長靴が深くめり込みました。そのときに感じられたのは、泥ではなく、明らかに何か月か放置され、堆積した、ポリ袋やその他の廃棄物でした。貧しさとは、単なる指標ではなく、こうした感触を通じて向き合っていかなければならない、と地域研究者として心を新たにしました。また、その実感を得たので、なおさら、困難な状況のなかで立派に学校を運営しておられる早川さんたちの努力の尊さ、マゴソ・スクールの子どもたちの笑顔の明るさの重い意味を感じた次第です。「成長するアフリカ」にばかり焦点が行きがちですが、その陰で取り残されている広範な大衆の痛みと、そして喜びを忘れてはならないと思うのです(マゴソ・スクール紹介のサイトはこちらです)
 今後もうこうした経験や、折に触れて考えたことを、ご披露してゆきたいと思います。ただ、「肩肘はらず」「頑張り過ぎず」が継続の秘訣であることを忘れないようにしてゆきます。
 それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
 末尾になりましたが、これまでのサイトの建設・運営に多大な貢献をしてくれた木曾三流さん、今回のサイト新設を取り仕切ってくれた"しし"さんはじめ、サイト運営に関して私をサポートしてくれてきた多くのゼミ生諸兄姉に心から感謝申し上げます。

 2010年5月7日 高橋基樹