地方公共団体の収入

  1. 地方税

    道府県税

    1. 普通税
      (1)法定普通税 道府県民税(個人住民税、法人住民税)、事業税、不動産取得税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税、特別地方消費税、自動車税、 鉱区税、狩猟者登録税、固定資産税 (2)法定外普通税
    2. 目的税 自動車取得税、軽油引取税、入猟税
    3. 旧法による税

    市町村税

    1. 普通税
      (1)法定普通税 市町村民税(個人住民税、法人住民税)、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、鉱産税、特別土地保有税 (2)法定外普通税
    2. 目的税 入湯税、事業所税、都市計画税、水利地税、共同施設税
    3. 旧法による税

  2. 地方譲与税

    1. 消費譲与税
       国税消費税の5分の1。11分の6が都道府県に、11分の5が市町村に、それぞれ人口と従業員数に基づいて配分される。
    2. 地方道路譲与税
       国が揮発油税を徴収する際に国税として地方道路税を徴収し、これを都道府県と市町村に道路の延長・面積を基準に按分して交付。使途を道路に限定した道路目的財源。
    3. 石油ガス譲与税
       国税である石油ガス税の2分の1を都道府県および指定市に道路の延長・面積を基準に按分して交付。道路目的財源。
    4. 自動車重量譲与税
       国税である自動車重量税の4分の1を市町村に道路の延長・面積を基準に按分して交付。道路目的財源。
    5. 特別トン譲与税
       国税であるトン税を徴収する際に特別トン税も徴収し、その全額を徴収地の市町村に譲与するもの。
    6. 航空機燃料譲与税
       国税である航空機燃料税の13分の2が空港関係の都道府県および市町村に譲与される。空港周辺整備のための目的財源。

  3. 地方交付税

     わが国の地方財政調整制度の中心をなす制度である。国と地方公共団体の間の税源配分および地方公共団体相互間の財源の適切な調整のために、国税収入の一部その他をプールし、これを一定の基準にしたがって地方公共団体に交付する制度である。国税3税(所得税・法人税・酒税)の32%、(消費譲与税を除いた)消費税収の24%、たばこ税の25%からなり、これらの額の94%が普通交付税、6%が特別交付税と法定されている。

  4. 利子割交付金、軽油引取税交付金、ゴルフ場利用税交付金、自動車取得税交付金

     いずれも都道府県税として課税された税金から市町村に交付される財源で、都道府県税交付金ともいわれる。利子割交付金は利子所得に5%で分離課税された(徴税費を除いた)収入額の5分の3である。軽油引取税交付金は自動車燃料である軽油に課された軽油引取税の90%が道路面積に按分して指定市に交付される道路目的財源である。ゴルフ場利用税交付金はゴルフ場の利用者に課される税で、収入の10分の7が地元市町村に交付される。自動車取得税交付金は自動車の購入に課される税で、税収の7割が市町村に、3割が道路面積・延長で按分して指定市に交付される。

  5. 分担金・負担金

     地方自治体が行う事業によってとくに利益を受けるものから法令等の根拠に基づいて徴収される。下水道事業、土地改良事業等が代表的な例。

  6. 使用料・手数料

     使用料は地方団体の施設の利用者に対し、経費の一部を負担させる意味で徴収されるものである。手数料は特定の者のためにする地方自治体の事務に要する費用に充てるために徴収されるものである。

  7. 国庫支出金

     国庫負担金、 国庫補助金、国庫委託金に分かれる。

  8. 交通安全対策特別交付金

     道路交通法違反に対する反則金が道路交通安全施設に要する費用に充てるため、交通事故発生件数、人口集中度により配分される。

  9. 都道府県支出金

     都道府県から市町村に交付されるもので、国庫財源を伴い、都道府県の予算によって市町村に支出されるいわゆる間接補助金と、都道府県の単独施策によって市町村に支出されるものとがある。

  10. 財産収入

     財産の売り払いや財産の運用によって生じた収入。財産の貸し付け、利子、配当、土地家屋等の売却等による収入が例である。

  11. 寄付金

     住民などから寄付されるもので、強制的に割り当て的に徴収することは禁止されている。

  12. 繰入金・繰越金・諸収入

     繰入金は特別会計等の他の会計からの受け入れ収入である。繰越金は前年度の決算で生じた剰余金の収入で剰余金の半分を下らない額は積み立てられたり、地方債の償還に充てることになっているので、実際はこれらを除いた残額が繰越金となる。諸収入は預金利子、貸付金元利収入、受託事業収入、収益事業収入の他、延滞金、加算金および過料などからなる。

  13. 地方債

     地方公共団体が財政資金調達のため第3者から資金の借り入れを行うことによって負担する債務で、その返済が一会計年度を超えるもの。予算執行上の一時的な資金繰りとして借りられ、当該会計年度の収入をもって償還される一時借入金とは区別される。

  14. 特別区財政調整交・納付金

     東京都と特別区との間における財政調整制度に基づく交付金と納付金である。地方交付税の例に準じて算定を行い、財源超過団体から納付金を徴収し、財源不足団体には交付金を交付する。

一般財源特定財源

 一般財源はその使途に特定の条件が付けられていない収入をいう。特定財源は充当される経費が特定され、条件が付けられる収入をいう。財政統計では一般財源は地方税、地方譲与税、地方交付税(市町村の場合はさらに住民税の利子割・軽油引取税・ゴルフ場利用税・自動車取得税にかかる交付金を含む)に限定している。

自主財源依存財源

 自主財源:地方自治体が収入額を決定して自ら賦課徴収を行うもの。地方税、使用料・手数料、分担金・負担金、財産収入等の雑収入の多くが入る。
 依存財源:国・都道府県から配分される財源で、地方交付税、国庫支出金、地方譲与税、都道府県支出金、各種交付金の他、地方債も入る。

経常的収入臨時的収入

 経常的収入:毎年度継続的に確保できる見込みのある収入。代表的なものは地方税と地方交付税である。ただし、目的税、法定外普通税、適用期限のある超過課税収入分、特別交付税等は臨時的収入に属するものとされる。
 臨時的収入:持続的でなく、一時的・臨時的に歳入となるもの。財産収入のうちの財産売払収入、分担金・負担金、寄付金、繰入金・繰越金、地方債、諸収入のうちの収益事業収入等が入る。


租税の意義

 租税は中央または地方政府が政府支出の財源を調達するために、民間部門から徴収する一方的な貨幣の強制移転である。

租税が個々の民間経済主体に直接的な形で反対給付を与えない

したがって個別的な反対給付に対する請求権を伴う応益収入とは区別される。強制の根拠は政府が持つ課税権にあり、強制移転収入であるから政府資産収入や公債金のような市場性をもたない。課税の基本目的は、政府支出を賄うための財源の調達にあるが、公共政策の役割が増すにつれて経済政策的目的や社会政策的目的などの副次的目的が重要になってきた。

租税の分類

 直接税間接税
  慣用的には、納税者が最終的にも租税を負担すると期待されるもの(所得税など)を直接税とし、立法者が租税の転嫁を予定して、納税者と最終的負担者が異なると考えるもの(消費税など)を間接税とする。しかし、転嫁の有無は直ちには明らかではない。
 これに代わって、担税者の担税力を所得、財産などで直接示すものにかけるのを直接税とし、消費などで担税力を間接に推定させるものにかけるのを間接税とする考えがある。

税率構造

税源と賦課
現在の税制では、まず担税力(taxable capacity)をもつと考えられる税源(sources of taxation)を選び、それを具体的に示すような課税対象となる物件を決める。この物件を課税客体(tax objects)という。そしてこの課税客体を具体的な数量で表す課税標準(tax base)を設定して、それに対して税率を乗じて、税負担額を決めるようになっている。それぞれの税源によって税目(租税の種類)が異なる。租税が課されることを賦課(impactまたはassessment)という。

税率と税率構造
税額は、課税標準に法定の一定比率を掛けて算定されるが、その比率を法定税率(staturory tax rate)または単に税率(tax rate)という。より正確には、税率=課税単位当たりの税額/課税単位である。課税単位は課税標準の単位で、金額(従価税)の他、量である場合もある(従量税)。  所得税の場合、課税所得=所得(Y)−課税最低限(E)で、法定税率をtとすると、税負担(T)は、T=t(Y−E)で、 T/Y=t(1−E/Y)を実効税率(effecitive tax rate)、または平均税率(average tax rate)という。これに対し、限界税率(marginal tax rate)は、t'=△T/△Y=t+(Y−E)△t/△Yのように表せ、変化前の法定税率と課税所得、および法定税率の変化のいかんで変わってくる。  課税客体が変化しても実効税率が一定の水準に設定されている体系の租税を比例税(proportional tax)といい、T=aYで表される。課税客体が大きくなるとともに実効税率が上昇するものを累進税(progressive tax)といい、逆に実効税率が低下する場合に逆進税(regressive tax)という。また、課税客体の大きさに関係なく税額が一定であるものを定額税(lump-sum tax)という。均等割や人頭税がこれにあたり、定額をTとすると、実効税率はT/Yであるから、逆進税の一タイプである。実効税率が逓減的な累進を示しながら一定値に漸近する場合を、とくに累退(degression)といい、比例税で課税最低限が設定されている場合がこれに当たる。

税収の弾性
税収の弾性ETはET=(Y/T)(△T/△Y)=t’/tと書け、比例税の場合には実効税率tが限界税率t’に常に等しいから、税収の弾性は1に等しい。しかし、累進税では所得の増加に応じて税率が上がるから、t’>tであり、逆進税ではその逆でt’<tである。したがって、t’〜tはET〜1と対応しており、税収の弾性の1の値を基準にした大小で累進、比例、逆進を定義できる。定額税の弾性はゼロに等しく、累退税の弾性は所得の増加とともに次第に1に近づくことがわかる。
租税思想の系譜

 国家をどのようなものと考え、国家がもつ財政権と国民が持つ財産権の関係はどうか、そのもとで何が故に国民が租税を支払うかという租税の根拠論を背景に、どのような原理で国民に税負担を配分するかという租税の負担配分論がある。

有機主義国家=義務説」の思潮
国家はそこで社会的利益を追求する家父長的保護機関であるから、国民は国家の存立と維持に必要な限り租税、財産その他の経済手段を提供しなければならないとされる。これが租税義務説(Pflicht-theorie)の内容であって、そこで租税の根拠は、共同体に対する国民の倫理的義務に求められる。

社会契約国家=利益説」の思潮
トーマス・ホッブズに始まる社会契約国家の考え方のもとでは、財産権と財政権の調和が、政府と市民の間の契約によって図られる。このとき、租税は国家が市民に与える給付の便益を根拠として、それの対価として支払うという租税利益説(benefit theory)が成り立つ。  課税の根拠を受益においても、負担配分論として能力説をとるプラグマティズムの流れと、負担配分論としても受益説をよるアカデミズムの流れがある。利益根拠−能力基準配分の論拠は、国家の給付による「一般的利益」と能力基準によって負担される公平な租税との「一般的交換」にある。利益根拠−利益基準配分の考え方は、国家の給付による「個別的報償原理」とその受益基準によって負担される租税との「個別的交換」の論理に基づいている。

租税の理想

理想的な租税を選択し、望ましい税体系を作り上げるときの基準。

公平(equity)基準
租税の負担が市民にとって公平でなければならない。
→何を公平の尺度とするか

利益説(benefit theory)
 市民が政府の活動によって享受する便益に応じて課税するのが公平であると考える。人々は政府サービスの対価として租税を支払うという個別報償原理により、便益を基準にして政府サービスと課税の犠牲を交換するという意味で交換論(exchange theory)ともいう。
 利益説が新しい姿で脚光を浴びるようになったのは、公共財論の中においてであり、ボーエンにみられる「自発的交換の理論」はその典型的なものである。
 利益説の長所は(a)租税の根拠と負担配分の原理が便益を基準にして一貫し、論理整合性がある、(b)負担配分が個人の選択に直結するから、民主的功利主義の原則に合致する、(c)政府の収支両面の同時決定を可能にする方式を提供するといった点にあるが、他方、短所としては、(a)便益の測定には効用の可測性が前提となるが、その保証がえにくい、(b)便益の個人への帰属が確定しにくい、(c)租税価格が的確に顕示されるかどうかの問題がある、(d)政府収支の同時決定の理論は現実性に乏しい、などの点がある。

→利益説は課税の根拠論としては重要であるが、租税の負担配分の一般原理とするには、多くの問題点がある。便益の帰属が明確であれば、一部の地方税や、目的税、開発税、公害税、混雑税、その他特別賦金や特定サービスの料金などの応益収入の決定原理として適用される分野が十分にある。

能力説(ability theory)
 市民の負担能力に応じて課税することが公平の基準に合致することになる。公平の尺度は担税力(ability to pay)であるが何が担税力を最もよく表しているかについて問題となる。担税力の尺度をどれにとるにせよ、公平な課税の条件としては二つのことが要求される。第1は、出来るだけ課税ベースが広いことである。第2に、負担配分にあたっては、公平についての二つの細則−水平的公平(horizontal equity)垂直的公平(vertical equity)の実現を図らねばならない。
 しかし、客観的指標で表して、水平的公平と垂直的公平についての的確な判 断を行うことは容易ではない。これについての統一原理を提供するものとして犠牲説(sacrifice theory)が主張される。この説では客観的な税源が何であっても、最終的な税負担は心理的犠牲、つまり効用の損失で捉えられる。従って、犠牲が均等の場合に、その租税が公平であると判断される。単純な能力説が「客観的能力説」といわれるのに、犠牲説が「主観的能力説」と呼ばれるのはこのためである。

効率(efficiency)基準
租税は与えられた情況の下で、生産の最適状態を保証するようなものでなければならない。
(1)課税が中立性(neutrality)を保つこと。→「超過負担」(excess burden)を最小にする。
(2)資源供給の問題。←課税による誘因作用。
(3)所得の安定。

実施(practicability)基準
(1)分配原則
  下のスミスの明確性、便宜性の原則
(2)行政効率
  徴税費最小の原則
  →徴税費(administrative cost)納税費(compliance cost)を最小にする
租税原則

スミスの4原則

  1. 公平性
  2. 明確性
  3. 便宜性
  4. 徴税費最小の原則

ワグナーの4大原則、9小原則

  1. 財政政策(国庫基準)
    1. 租税の十分性
    2. 課税の可動性
  2. 国民経済
    1. 正しい税源の選択
    2. 正しい税種の選択
  3. 公平
    1. 課税の普遍性
    2. 課税の平等性
  4. 税務行政
    1. 明確
    2. 便宜
    3. 徴税費最小

地方税の原則

(1)収入を十分にあげる税であること(十分性
(2)すべての地方団体が普遍的に収入をあげる税であること(普遍性
(3)毎年安定的に収入をあげる税であること(安定性
(4)行政経費の増加に対応する収入をあげる税であること(伸長性
(5)地方税収入を地方団体が自主的に増減できるような税であること(伸縮性
(6)住民が必要な行政経費を負担し合うような税であること(負担分任性
(7)住民が受益に応じて負担する税であること(応益性


          第6章参考文献

米原淳七郎『地方財政学』有斐閣,1977年。
能勢哲也『現代財政学』有斐閣,1986年。
和田八束・野呂昭朗編『現代の地方財政』有斐閣,1992年。

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