「国民経済予算」(national economic budget)と「企画・計画・ゼロベース予算」(PPZBB:planning, programming and zero-base budgeting)の2つの流れがある。
国民経済予算と総需要調整
国民経済の総需要のコントロールを目的とする。
リンダールの複式予算編成(通常予算と特別予算)の提案
→通常予算の余剰を景気調整に使う
(1930年代末のスウェーデンとデンマークで,経常予算と資本予算が分類され,前者に予算平衡化基金が設けられた)
ヒックスの社会会計における政府の位置づけ→政府余剰が積極的な機能的政府予算政策に適合するモデルの提示
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全経済の中で政府予算の機能を位置づける国民経済予算の体系化
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「国民勘定体系」(System of National Accounts)へ(1968年に改訂の新SNA,日本でも昭和45年以後の公式統計が新SNAによっている)
→新SNAにおける政府の分類(一般政府(中央政府,地方政府,社会保障基金),公的企業(中央,地方))
PPZBBと行政管理
フーバー委員会(1949年)の事業別予算(performance budget)
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費用・便益分析の開発を基に計画中心主義に進化したPPBS(計画策定・実施計画・予算編成制度,planning-programming-budgeting system)
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ゼロベース予算,費用・便益分析,ローリング方式,サンセット方式
中期財政計画の策定(日本では「財政の中期展望」)
ワグナー法則(Wagner's law)=経費膨脹の法則
経済の工業化の進展と公共部門の成長との間に密接な機能的関連があって,社会の進歩とともに政府の経済活動は絶対的にも相対的にも増大するという法則。
ピーコック=ワイズマン
長期の趨勢のみを考えるワグナー法則の短所を指摘して,1890〜1955年のイギリスについての観察から,政府活動が段階的な変位を重ねて増大する点を強調して,転位効果(displacement effect)の仮説を提案した。また,それに伴って生じる点検効果(inspection effect)と集権過程(concentration process)を主張。
□行政給付論
公共部門は,政治的要請,市場組織の欠陥の除去または修正,あるいは特定事業計画などの「公益」を実現する主体。公共支出の便益と課税との個別的報償原理を否定。
□公共財論
「公共支出の決定をすべて個人の消費者(投票者)の選択に還元して,公共欲求の充足をも個人欲求の集計と解釈する主観的・経済学的手法をとるのが公共財論である。」(能勢,p.73)
◇公共財需要のボーエン・モデル
個人A,Bは公共財の供給量に対して支払っても良いと考える価格(租税で支払うことになるから租税価格という)をもち,需要曲線を形成する。ある一定量の公共財に対して個々人は異なった価格を表示し,社会的需要曲線は価格について縦に集計したものになる。
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自発的交換の理論(voluntary exchange theory)
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サムエルソンの「The Pure Theory of Public Expenditure」
MRSa+MRSb=MRT → 民間財で測ってAの公共財の限界代替率とBのそれとの和が,限界変形率に等しくなる。
公共財論の意義
(1)消費者主権に基礎をおいて公共支出と公共収入の両者を結びつけて説明したこと,功利主義的な消費者行動の集計として社会的公正の極大と効率基準ないし厚生基準を達成するという分析方法
(2)公共支出決定の経済分析が,現実の政治的決定過程を抜きに考えられている(コルムによる批判)
(3)公共財の評価を各人が正直に顕示することを前提にしているが,ただ乗り(free rider)の問題が起こる可能性がある
(4)利益説で租税を一貫して説明するには租税を目的税化する必要があるが,ノン・アフェクタシオンの原則と抵触する
費用・便益分析
価格による資源配分のメカニズムが存在しないから,これに代わる方法としてサービス供給の費用に比べて便益が最大になるような計画をいくつかの代替案の中から選び出す方法を採らざるを得ない。→費用・便益分析(cost-benefit analysis)
1)代替案の中からもっとも効率的なものを選ぶ問題と,2)公共サービスの便益と費用として何を計算に入れるかという問題がある
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実質的 直接的 有形 無形 間接的 有形 無形 金銭的 |
将来稼得力の増加 学生の満足 犯罪率の低下 文化・知識水準の向上 教師の所得増加 |
直接教育費,放棄所得 余暇時間の減少 生産労働力の減少 −−−−−−−− (租税等の教育費の財源) |
→ 費用と便益が同一の単位で表せるとは限らない
→ 一定費用投入あたりの優等生数というように,行政コストとその効果を対比して示す費用・効果分析(cost-effectiveness analysis)の援用
費用についても,市場評価が出来ないものについては,もし政府が生産するとすれば支払わなければならない機会費用,つまり陰の価格を勘定価格として推定しなければならない
政府支出の便益,費用を短期のみでなく,長期的効果も考慮して現在時点で判断することが望ましい
長期の費用をC,便益をB,割引率をrとすると,
Max V= Σ (Bt-Ct)/(1+r)t
となるような(=純現在価値が最大となるような)プロジェクトを選ぶ方法が最も一般的である。
同一のタームで表示できないような場合には便益・費用比率
B/C=ΣBt/(1+r)t/ΣCt/(1+r)t
の高いものを選ぶ方法を用いるのが適当である。
費用・便益分析の評価
1.便益,費用に何を含めるか。とくに無形の便益,費用の選択と推定,割引率の設定などに議論の余地を多く残している。
2.cost-benefit analysisによる経済効率の基準の設定はいくつかの代替案の提示と最適な政策立案についてのメニューを示すにすぎないことである。最終的な立案には,何らかの政治的な判断を導入することが必要となる。
3.基本的な問題として,費用(収入)と便益(支出)がプロジェクトごとに対応することはない。ノン・アフェクタシオンの原則があるからである。