12月8日
第4章 地方公共支出の経済学
<復習>
家計 企業 政府 が経済には存在する。(3つの経済主体)
→市場を通じて行動する
各経済主体の行動目的
・家計 効用最大化を目的にして行動する
・企業 利潤最大化を目的にして行動する
・政府 何かの最大化を目的にして行動する
→何を最大化するか?
住民のため? 政府自身のため? 見解の相違がある
p69 図4−1
生産可能性曲線production possibility curveと社会的無差別曲線(厚生関数)を公共財・サービスX,Yについて描いている。
→地方公共団体の目的は,「最小の経費で最大の効果をあげること」である。
これは生産可能性曲線と社会的無差別曲線が接する点で実現する。
公共財の組合わせを生産可能性フロンティア上にもってくること=生産の効率性
その中で最大の満足をもたらす組み合わせを選択する=配分の効率性
・効率性の区分
(1)生産の効率性 生産可能性曲線上で実現する効率性
(2)配分の効率性 利用可能な資源を使って生産できるXとYの組合せの中でどういう生産の組合せを実現するかは政府自らが判断しないといけない
→これは,住民全体の効用(満足)を最大化するようにする。
例)ある社会に住民が2人しかいないとき,この2人の効用を最大化する
(=社会全体の効用を最大化する)ようにする
Ua=Aさんの満足,Ub=Bさんの満足,とすると,社会全体の効用Wは次の式で表される。
W=W(Ua,Ub) この式を社会的厚生関数と一般的に呼ぶ。
<復習>
1)ベンサム型の社会厚生関数
W=Ua+Ub 無差別曲線は直線になる
2)ロールズ型社会厚生関数 社会で最も不遇な人の厚生を最大化する
W=min(Ua,Ub) 45度線で屈折するような無差別曲線になる。
3)バーグソン=サムエルソン型社会厚生関数
W=W(Ua,Ub) 原点に対して凸になるような無差別曲線
<point>
生産可能性曲線と社会厚生関数との接点(交わってはいけない)が効率的な点である。
↓
ただし,この接点は地方によって異なる可能性は十分ある。
∴地域により財に対する選好は違うと考える方がより一般的である。
しかし,現在では中央政府により集権的に選好が決められているので,
本来,地域住民の求めている公共サービスの供給が行われていないかもしれない。
その観点からは,地方分権化が望ましいという結論が得られる。
<問題点>
→この社会厚生をどのように調べるか(測るか)?
これができないと,政府が望ましい公共財の供給水準を知る事ができずに,本来の効率的な供給水準を実現できない
∴政府が社会厚生を判断できないと,効率性を実現できない(非効率性)可能性も残る
生産要素 労働・資本・(土地)が普通考えられる
労働 w
資本(機械) r
費用面から政府の生産性を見ると図4−2となる。
<経済学の復習>
等産出量曲線(等量曲線)isoquant curveとは?
→この場合,生産関数としてY=F(K,L)を考え,生産曲面を描く。
この時,ある生産量を確保するときのKとLの組み合わせを示すのが等(産出)量曲線となる。
◎X非効率性
X=unknown(原因不明)の非効率性
元来は社会主義国の生産性の低さの理由の説明の為に使われた
<考え方>
→生産可能性曲線が原因不明の理由によって内側へシフトしてしまう
<考えられる原因>
→労働者のincentiveに与える影響
⇒もし,働いても働かなくても給料が同じだけもらえるなら,勤労のincentiveがなくなり,
生産可能性曲線が内側へシフトしてしまう
(復習)資本主義社会では,生産に貢献した分に対する報酬を受け取る(=限界生産力原理)
<問題>
→どのくらい内側にいくのか?
→生産に応じた報酬をどのように与えるか(特に公務労働に対して)
2.公共サービスの最適供給
焦点:住民の満足を考える ∴Ua,Ubを考える
公共財を1つだけ(Xとする)考えるとき,どこまで公共財Xを供給すべきか?を考えると,
A(B)さんの公共財の量と効用の関係
公共財の量が増加すればするほどA(B)さんの追加的に得られる効用は低下していく
(限界効用が逓減しているという)
MC=cX ∴MCは傾きcの直線になる
価格 数量
民間財 同一 異なる
公共財 異なる 同一
☆公共財の価格のことを,租税価格ともいう。また,公共財には等量消費の原則がある。
公共財であるので,社会的な限界便益(社会的なMB曲線)はAとBのMB曲線を垂直方向に足し合わせる
(cf.民間財の場合は,水平方向に足し合わせる)
⇒これによって,その財に対する社会的需要曲線が導出できる
↓
そして,社会的なMB=社会的なMCとなる点が社会全体で一番良い公共財の供給量を実現する点となる
例)MSC=MSBa(2000)+MSBb(1000)となっている
→∴民間財のように公共財に価格(租税価格)を付けている事になる
(この例ではAさんは2000円,Bさんは1000円を公共財の対価として支払う)
利益説 租税は公共サービスに対する対価として支払う
∴租税価格の考え方は,利益説に合致する
→このアイデアを発展させたのがリンダ−ルであり,これにより出てきた答えをリンダ−ル解という
・リンダ−ルメカニズムとは?
<仮定>
Aさん,Bさんがいる
道の整備に対して,各人の負担割合を考えると,
Aさん h Bさん (1−h) ←2人の負担割合を合計すると1になるから
ボックスを描いて,A,Bについて横軸を公共財にとると,右下がり(右上がり)の需要曲線が得られる。
均衡点でないと,公共財の需要量が一致しない(2人で)ので,政府が思考錯誤して負担比率を提示する事により均衡点に達成しようとする
<結論>リンダ−ルメカニズムでは,
・最適公共財供給量が決まる
・最適な租税負担割合(最適租税価格)がきまる
∴この2つが同時に決まるというのがこのリンダ−ル解の特徴である
<問題点>
・はたして各人が公共財の需要を正確に表明するか?
→高い需要を表明すると,当然高い租税価格に直面する。それを回避するためウソの需要(選好)を表明したら,どうなるか?
(1)ウソを表明する人数が少ない時
→あまり影響はないかもしれないが,ただ乗り「free rider」という現象が発生する
(2)多くの人数がウソを表明するとどうなるか?
→公共財供給に対する影響は大きくなりそうである
∴
◎まとめ
みんながウソをつき,ただ乗りのインセンティブが働くと,公共財の過小供給につながる
◎利益説に基づいて考えると,このメカニズムは正直であればあるほど損をするというシステムであるので,ただ乗りのインセンティブがはたらく。
→これを改善するメカニズムの1つとして,クラーク・メカニズムがある
(参考)岸本哲也『公共経済学(新版)』有斐閣
cf.ただ乗り←→無理乗り
p75多数決投票
中位投票者理論(median voter theory)
→真ん中の水準で公共財の供給量が決まる(中位と平均は異なる)
困る時
多数決投票によりうまく決まらない時どうするか(p79)
これをうまい事グラフで表すとどうなるか?
縦軸に,選好順序をとり,横軸に政策案をとり選好順序を考える(Musgrave(1984)訳書130ページ参照)
(1)決まる時(多数決で結果が決まる時)
<特徴>ピークが1つだけ
⇒このような選好のことを単峰型選好という。
(2)決まらない時(多数決で結果が決まらない時)
<特徴>ピークが2つあるような選好順序がある
⇒このような選好のことを複峰型選好という(実際は少ないかもしれない)。
設定次第で結果が一意に決まらず,結果が循環する。
→このことを,投票のパラドックスvoting paradoxといい,多数決均衡が決まらない
<解決の方法>
・点数投票 みんなに同じ持ち点をあげ,それを自由に使える
例)持ち点を10点とし,それぞれ3つの政策に対して得点を配分する
Dさんの配分 政策a 3 政策b 5 政策c 2
Eさんの配分 政策a 9 政策b 1 政策c 0
社会全体の得点 12 > 6 > 2
問題
結託取引を許すことが発生する
◎Arrowの不可能性定理
→合理的な想定の下で社会的な順序付け(意思決定)をすることはできない
ニスカネンのモデル
総便益と総費用を縦軸に,公共財の量を横軸にとると,
公共財の供給量が増加すると,限界便益は低下するので,総便益も逓減する
もちろん,総費用は一定倍で増加する
経済学では,限界で見る傾向がある。純便益で見ると官僚は本来望ましい水準より多く予算を取る傾向にある。(国民がいいと思うポイントと官僚がいいと思うポイントがずれる)
→無理乗り
◎レポート課題
どのように住民の選好を知ることができたらいいか?
その方法は?
または,いま行われているような公共サービス供給がどれだけ
住民の好みを反映していると思うか?