■地方自治の本旨

 住民自治:住民自らが自らの地域のことを考え,自らの手で治めていくこと
 団体自治:地域のことは,地方公共団体が自主性・自立性をもって,自らの判断と責任の下に地域の実情に沿った行政を行っていくこと

■事務の種類

■シャウプ勧告における地方自治

シャウプ勧告(Shoup Recommendation)(1949年)

(1)行政責任明確化の原則

 「可能な限りもしくは実行できる限り,三段階の行政機関の事務は明らかに区別して,一段階の行政機関には一つの特定の事務がもっぱら割り当てられるべきである。そうすれば,その段階の行政機関は,その事務を遂行し,かつ一般財源によってこれを賄うことについての責任を負うことになるであろう。」

(2)能率の原則

 「それぞれの事務は,それを能率的に遂行するために,その規模,能力および財源において準備の整っているいずれかの段階の行政機関に割り当てられることとなろう。」

(3)市町村(地方公共団体)優先の原則

 「地方の自治を考えて,それぞれの事務は最下級の適切な行政機関に与えられることとなろう。市町村が適切に遂行できる事務は,都道府県または政府に与えられないという意味で,市町村には第一の優先権が与えられるであろう。第二には都道府県に優先権が与えられ,中央政府は,地方の指揮下では効果的に処理できない事務だけを引き受けることになるであろう。」

■国と地方の経費負担区分

現行地方財政法

  1. 地方団体またはその機関がその事務を行うために要する経費は,全額その地方団体が負担することを原則とする。
  2. 1の経費のうち,国・地方の相互に利害関係がある一定の事務に要する経費(e.g. 義務教育費・生活保護費・保健所費・老人保険費・児童保護費・児童手当)・国民経済的な見地から行われる大規模な建設事業に要する経費・災害復旧等の事務に要する経費については,国がその全部または一部を負担する。
  3. 1の経費のうち,もっぱら国の利害のために行う事務に要する経費については,地方団体はその負担の義務を負わず,国が負担する(e.g. 国会議員選挙・国勢調査等国の統計調査・外国人登録)。
  4. 国が自ら行う事務に要する経費については,国は地方団体に対し負担させてはならない(e.g. 国の機関の設置や維持運営に要する経費,警察庁・防衛庁・海上保安庁に要する経費,司法・行刑に要する経費,国の教育・研究施設に要する経費)。ただし,2に掲げた大規模な建設事業・災害復旧等の事務に要する経費については,地方団体が負担することがあるものとする。

■地方の歳入

1998年度決算(単位:100万円,%)

都道府県

市町村

純計額

地方税

17237391

31.1

18684792

34.5

35922183

34.9

地方譲与税

128611

0.2

466599

0.9

595210

0.6

地方交付税

9272814

16.7

8776051

16.2

18048865

17.5

利子割交付金

-

-

169319

0.3

-

-

地方消費税交付金

-

-

1301466

2.4

-

-

ゴルフ場利用税交付金

-

-

64372

0.1

-

-

特別地方消費税交付金

-

-

44520

0.1

-

-

自動車取得税交付金

-

-

342463

0.6

-

-

軽油引取税交付金

-

-

122067

0.2

-

-

小計(一般財源)

26638816

48.0

29971648

55.3

54566259

53.0

分担金,負担金

849536

1.5

792642

1.5

828234

0.8

使用料,手数料

1058738

1.9

1321737

2.4

2380475

2.3

国庫支出金

10111065

18.2

5546477

10.2

15657542

15.2

交通安全対策特別交付金

52778

0.1

34750

0.1

87528

0.1

都道府県支出金

-

-

2581084

4.8

-

-

財産収入

301241

0.5

493617

0.9

794858

0.8

寄附金

36676

0.1

122700

0.2

156431

0.2

繰入金

1373845

2.5

1859709

3.4

3233554

3.1

繰越金

829501

1.5

1270125

2.3

2099626

2.0

諸収入

5586181

10.1

2879268

5.3

7928782

7.7

地方債

8664970

15.6

6562013

12.1

15135612

14.7

特別区財政調整交・納付金

-

-

739999

1.4

-

-

歳入合計

55503347

100.0

54175770

100.0

102868902

100.0

■財源面でのコントロール(再論)

■普通会計と公営企業会計

 地方財政にも国と同様,一般会計と特別会計の区分があるが,特別会計の中には法令で設置が義務づけられているものと地方が任意で設置しているものの2種類があるので,公営事業会計とそれ以外の普通会計に分類して地方財政の状態を把握することにしている。

■地方の歳出

1998年度 目的別歳出決算額(単位:100万円)

都道府県
市町村
純計額

議会費

96,072

506,218

602,257

総務費

3,000,195

6,280,808

8,655,252

民生費

3,835,995

10,774,713

13,445,439

衛生費

1,959,321

4,856,051

6,654,337

労働費

267,276

200,408

457,577

農林水産業費

5,058,889

2,472,259

6,382,433

商工費

4,307,346

2,016,931

6,260,533

土木費

11,654,144

10,782,643

21,972,878

消防費

230,984

1,746,458

1,901,224

警察費

3,456,830

-

3,456,610

教育費

12,437,787

6,268,813

18,608,320

災害復旧費

362,143

258,598

536,240

公債費

5,131,030

5,904,505

10,907,308

諸支出金

44,895

307,076

351,971

前年度繰上充用金

-

5,167

5,167

利子割交付金

169,319

-

-

地方消費税交付金

1,301,466

-

-

ゴルフ場利用税交付金

64,372

-

-

特別地方消費税交付金

44,520

-

-

自動車取得税交付金

342,463

-

-

軽油引取税交付金

122,067

-

-

特別区財政調整交付金

739,999

-

-

特別区財政調整納付金

-

-

-

歳出合計

54,627,111

52,380,648

100,197,545

■予算原則

地方自治法の規定

  1. 予算公開の原則
     予算に関する情報が,住民に対して公開されていないといけないという財政民主主義の基本となる原則
  2. 予算の事前議決の原則
     予算は会計年度が始まるまでに,議会によって議決されなければならないという原則
  3. 会計年度独立の原則
     それぞれの年度の歳出はそれぞれの年度の歳入によって賄わなければならないという原則
  4. 総計予算主義の原則
     歳入と歳出はすべて予算に計上しなければならないという原則
  5. 単一予算主義の原則
     歳入と歳出を計上する予算は,一つでなければならないという原則

■予算編成

◇予算の編成権は地方団体の長に専属している。地方公営企業に関する予算については,公営企業の管理者が原案を作成し,予算の編成権者に送付することになっている。

予算編成方針案の決定(10月下旬まで)
     ↓
   予算要求   (11月末まで)
     ↓
   予算査定   (12月下旬〜1月下旬)
     ↓
  予算書の作成  (2月)
     ↓
    審議    (3月)

予算提出時期:会計年度開始前の30日まで(都道府県および政令指定都市)
       会計年度開始前の20日まで(市町村)

◇首長は予算の編成権だけではなく,議会が予算について行った議決について異議がある場合には,議会に再議を求めることができる。これを長の拒否権と呼んでいる。この拒否権には再議を求めることができる一般的拒否権と,再議を求めることが首長に義務づけられている特別的拒否権の2つがある。
 さらに首長は議会の議決に代わって予算を決定することができる専決処分権をもっている。議会を招集する余裕がなかったり,議会が議決すべきことを議決しない場合に発動できる。

◇年度途中でに当初に成立した予算(当初予算)に,追加や変更を加える補正予算を作成することがある(通常は作成)。

◇その後予算の執行過程を経て,決算に入る。決算では,出納長または収入役による決算の調製,監査委員による審査,議会の認定,知事または自治大臣への報告と住民への公表という段階を経る。地方団体の長は決算書に監査委員の意見をつけて議会の認定に付さなければならない。