■財政の機能

マスグレイブ(Musgrave, R. A.)による財政の役割の分類

1.資源配分機能 「限られた資源を利用して何をどれだけ生産して,どのように消費や投資にまわすか」

消費者→効用最大化,企業→利潤最大化・・・・価格メカニズムにより市場均衡

パレート効率性の達成
→ 他の人の効用を下げることなく,ある人の効用をそれ以上引き上げることの出来ない状態
← 必要条件は,MRS(限界代替率)=MRT(限界変形率)

市場経済がパレート効率性を達成できない→「市場の失敗」(market failure)

市場の失敗の原因
 1)公共財(Public Goods)の存在
 2)独占(Monopoly)の存在
 3)外部性(Externality)の存在
 4)収穫逓増(Increasing Return)の存在
 5)不確実性(Uncertainty)の存在

公共財(public goods)=排除不可能性(Non-excludability)と非競合性(Non-rivalness)の2つの性質を備えた財・サービス(等量消費を特徴とする)。

排除不可能性:費用を支払わない人を消費から排除するのが不可能な,または莫大な費用がかかるような性質
非競合性:ある人の消費が他の人の消費を妨げないような性質

混合財(mixed goods)価値財(merit goods)の存在

2.所得再分配機能

市場機構を通じて実現される所得分配は社会的に最適なものではない。

←生産に対する貢献に応じた分配(限界生産物価値=要素価格)

効用曲線が同じ2人を考え,両者の効用が比較可能であるならば,所得の限界効用の低い人から所得の限界効用の高い人に所得を移転すると社会全体の効用が高まる(効用曲線が同じであるということと2者の効用が比較可能であることが前提)。

3.経済安定化機能

 地方財政はこのうち主に1の資源配分の役割を担う。地方独自の再分配政策を行うと,積極的に再分配政策行う地方からは高所得者が流出し低所得者が流入するので,地方全体の所得が減少し,再分配の基盤が揺るぐ。また地方独自の経済安定化政策も地方自体が貨幣発行権をもっていないことや,当該地方の需要増大が他地方に漏れることから必ずしもうまく機能しない。

→「地方公共財」の供給

■地方公共財と補助金

 便益のスピルオーバーが発生 → 広域の行政主体(国や都道府県)による補助金か当事者間交渉によって解決

■地方分権定理

 OP:公共財供給の限界費用
 D:A地域の住民の公共財に対する需要曲線
 D:B地域の住民の公共財に対する需要曲線

→ 公共財の最適供給量はA地域ではQ,B地域ではQ
→ 国がこの公共財の供給量を一律にQに設定すると,A地域にはABCの厚生ロスが,B地域にはCDEの厚生ロスが発生する。

前提として,(1)DとDが異なっている,(2)地方政府はDとDを知っていて,QとQを供給できる,ことが必要。