補論 住民参加の新しい試み
■神奈川県藤沢市の例
神奈川県藤沢市では,1996年より「市民電子会議プロジェクト」を組織し,翌1997年より市民電子会議室の実験を開始した。
■藤沢市の市民電子会議室の特徴
1.「市民エリア」という市民が主催するオープンな会議室と「市役所エリア」という市が主催する会議室の2つの会議室があること
2.運営委員会を設置し,運営委員を公募していること
3.各会議室には世話人と進行役が存在し,運営委員会と連絡を取り合っていること
4.会議室(掲示板)とメーリングリストを連動させるなど,意見交換の仕組みについて工夫を凝らしていること
■参加者
市役所エリアには,当初,市内在住者,市内在勤者,市内在学者のみが参加できるようになっていたが,運営委員会でルールを改正し,「市内」という参加資格の制限を撤廃した。
■市民の反応
市民電子会議室が運用されて2年半経過し,市では電子会議室についてのアンケートを行い,314名の回答者を得ている。市民電子会議室で発言したことがあるが12.5%,市民電子会議室を見たことがあるが18.9%で,その他の68.6%の人は市民電子会議室を知っているが見たことはない,市民電子会議室を知らないになっている。市民電子会議室を見ないといった回答を寄せた中では,「市民電子会議室での意見交換の必要性を感じない」,「電子会議室の話題・テーマに興味がない,つまらない」,「会議室で発言することにプライバシーなどの点で心配」などの理由が挙げられているが,もっとも多い理由が,「関心はあるが忙しい,時間がない」というものであった。にもかかわらず,市民電子会議室に期待する役割は大きく,「行政関連の情報が入手できること」,「行政に市民の声を反映させること」,「行政計画や施策について,市民の間で議論できること」,「市民相互のネットワークづくり」などに対して多くの期待が寄せられている。ただし,市民電子会議室について市民が問題だと考えているのは,「議論の前提となる情報が少ない,情報公開が不十分または遅い」,「通信コストや市民電子会議室の使い勝手といったシステムの問題」,「結論や意見反映の可能性が不明確」といったようなこれまで指摘されてきた点が挙げられている。
■行政と住民の間のコミュニケーション
◇電子会議室利用の利点
・時間の制約を気にせずに済む
・発言した内容が記録として残る
・途中から参加した場合も過去の発言を遡って参照することができる
・これまでの行政主体の情報提供から住民側からの情報提供ならびに住民の積極的な市政への関与の可能性が広がる
・世界中に会議室の内容が公開されているので,行政と住民の間に緊張関係が生じ,行政側,住民側共に責任ある発言が期待できる
◇電子会議室利用の問題点
・住民側の意見がどう扱われているかが不明確である
・住民側の意見の集約がどのように行われているかが分かりづらい
・差し迫った回答を求めている案件に対しての行政側からの返事が遅い
・参加者数の少なさと共に,発言者数が少ないので,会議室のいわゆる常連のメンバーの意見が支配的になる
◇受動的参加と能動的参加
◇多用な参加形態
◇参加を促す方策
■情報提供側(自治体)の問題
・情報提供自体の位置づけ
・ハードウェア,ソフトウェアの整備
・情報発信の技術をもった職員の育成
・運営体制の整備