金属錯体化学とヘリシティー誘起 Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 771-775
シクロオクタピロールは8の字型のらせん構造をとる。溶液中では右ねじれと左ねじれは速い平衡にあるが、金属挿入により、不斉を固定化することができる。金属挿入反応の際に、光学活性配位子を共存させると生成物の金属錯体のらせんの向きを偏らせることができた。単核銅錯体から複核銅錯体への金属挿入反応ではらせんの向きは変化しないが、反応速度に差があり、速度論的光学分割の可能となる。DNAのらせんの向きはその構成要素であるデオキシリボース部の不斉炭素によって規制されている。不斉炭素のような不斉要素が全く存在しないらせん構造においてらせんの向きの偏りを実現することが可能になった。その他、種々の多核金属錯体の合成と構造に関する研究を進めている