研 究 紹 介

当研究室では生体膜のモデルとしての油水界面での電荷(イオンおよび電子)移動の研究を行っています。生体膜では,呼吸鎖や光合成電子伝達系などの電子移動や,イオンチャンネルなどによるイオン移動が起こり,生命活動に不可欠なエネルギー生成や情報伝達が行われています。この生体膜での電子やイオンの移動において,生体膜電位が重要な役割を担っていることが分かっていますが,物理化学的観点からの理解は十分ではありません。本研究室では,油水両相に適当な電解質を溶かした分極性油水界面を用いて,生体分子を中心としたイオン移動や電子移動のメカニズムの解明を行っています。また,得られた知見を利用して,油水界面を用いる生体関連分子の新しいセンシング法の開発も行っています。なお,企業との共同研究として,銅酸化被膜の研究も行っています。

【最近の主な研究テーマ】

1)タンパク質の逆ミセル電気抽出

2)油水界面電子移動の反応機構の解明

3)電位変調蛍光法を用いる油水界面吸着種のスペクトロスコピー

4)銅酸化被膜のキャラクタリゼーション


1)タンパク質の逆ミセル電気抽出

 これまで当研究室では,様々なイオンの油水界面移動のボルタンメトリーによる研究を行ってきました。最近,生体ポリイオンであるタンパク質も,逆ミセル形成を利用して電気化学的に有機相へ抽出できることが分かりました。図に示すように,油(ジクロロエタン)相にアニオン性界面活性剤であるAOTを疎水性塩として加えることにより,界面でのタンパク質の“逆ミセル”形成を電気化学的に制御することができます。適当な条件下でサイクリックボルタンメトリー測定を行うと,図のようにタンパク質の界面移動による電流が得られます。このように,電気化学的に不活性なタンパク質でも,油水界面を用いて直接検出することができるようになりました。これは新しいタンパク質のセンシング法の開発につながるものと期待されます。

タンパク質の逆ミセル電気抽出とサイクリックボルタモグラム

神戸大学連携クラブ通信”KI−ACT”メールマガジン(3月)第13号に,本研究の紹介記事が掲載されました。

このページの最初へ

2)油水界面電子移動の反応機構の解明

 油水界面電子移動は,生体膜での電子伝達系の理解において基礎的な知見を与えるものと思われます。これまでの研究から,油水界面での電子移動は界面での分子衝突による“真”のheterogeneousな電子移動と,溶液相中でのhomogeneousな電子移動の生成物などのイオン移動に大別されることが分かっています。最近,このような反応機構のさらなる解明のため,電気化学顕微鏡(Scanning ElectroChemical Microscopy; SECM)を新たに導入し,研究を進めています。

SECM装置

このページの最初へ

3)電位変調蛍光法を用いる油水界面吸着種のスペクトロスコピー

 永谷広久博士(現長崎大工)との共同研究により導入した電位変調蛍光(PMF)法を用いて,ローダミンなどの蛍光分子の油水界面吸着の研究を行っています。この手法では,直流電圧とともに交流電圧を印加した油水界面へレーザーにより光照射し,交流電圧と同調した蛍光成分をロックインアンプにより検出します。これにより,比較的簡便な手法により,界面吸着種のスペクトルの測定に成功しています。この研究は,生体細胞やコロイドの膜電位の検出法への応用を目指しています。

ポルフィリンのジクロロエタン/水界面のPMFスペクトル
[H. Nagatani, T. Ozeki, and T. Osakai, J. Electroanal. Chem., 588, 99-105 (2006)]

このページの最初へ

4)銅酸化被膜のキャラクタリゼーション

 電線のトップメーカーである住友電工と共同で,銅表面の酸化被膜の電気化学的な評価法の開発を行なっています。開発したボルタンメトリー法による分析法は,XPSなどの分光学的手法に比べて簡便であり,また,より定量的に銅表面の酸化物を分析できます。

このページの最初へ


To the Osakai Laboratory Homepage
To 大堺のプロフィール