表紙カバー帯付き
はしがき
第1章 統計解析のねらいと準備
第2章 度数分布と記述統計
第3章 相関と回帰
第4章 類型化と分類
    −判別分析とクラスター分析
第5章 変数の縮約と潜在因子の発見
    −主成分分析と因子分析
第6章 平均を比較する
補 論 出力を他のソフトで編集する
付 表
索 引


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「はしがき」より
 統計解析をしたい、統計解析の手法を身につけることは大事だと思っていても、どのよ
うにしたらよいかわからないという人は少なくないと思います。かつて私もそうでしたし、
これまでにわたしが接してきた多くの学生や大学院生、研究者の中にも、そうした人がた
くさんいました。
 たいていは、統計解析は数学的センスが必要な難しいもので、人文・社会系の人間には
向かないと思い込んでしまって、いわゆる「食わず嫌い」になっているようです。「統計
解析を勉強しようと思い立ったけど、数式だらけでちっともわからないから投げ出した」
とか「Σ(シグマ)の記号を見ただけでゾッとする」という声もよく聞きます。
 しかし、この本を手にしたあなたは安心してください。この本に書かれている通りにや
れば、いままで苦手にしていた統計解析がウソのように簡単に行うことができるようにな
り、統計解析がずっと身近なものに思えるようになるにちがいありません。これは、無責
任な励ましの言葉ではありません。もう30年以上も前のことですが、コンピュータやプロ
グラムのことについて何もわからなかった私が、当時は大型計算機センター(といっても、
知らない人も多いかもしれませんが)でしか使えなかったSPSSやSASといった統計
解析ソフトを入門書を片手に見よう見まねで利用したときの経験から、確信をもって、そ
う言うことができます。そこで、当時の自分を思い出しながら、統計解析に関して全くの
初心者−ウルトラ・ビギナー−がSPSSという便利なソフトを使って統計解析を実際
に行うことができるようになるための入門書になれば、と思いながら書き進めました。入
門書といっても、要点にサラッと触れて、あとは別の本で各自が勉強せよ、ということの
ないように、これ一冊で統計解析の基本を学ぶことができ、SPSSの操作が不自由なく
できるように心がけました。
 SPSSという名称は、Statistical Package for Social Sciences の頭文字をつなげ
たもので、あえて日本語にすれば、「社会科学のための統計計算ソフトの詰め合わせ)」
とでも言えましょうか。もちろん、統計解析は自然科学だろうと社会科学だろうと学問分
野に関わらず行われていますから、SPSSも自然科学系の研究に利用できますし、実際に頻
繁に利用されていますが、「社会科学のための」というところがみそで、そこに秘められ
ているのは、“統計学を苦手としている社会科学系の人のために気軽に使える統計解析ソ
フトの詰め合わせをご用意いたしました”というところでしょうか。もし、多くの社会科
学系の人が統計理論やコンピュータのプログラミングに精通していたら、このようなソフ
トは決して生まれなかったでしょう。各自が自作のプログラムで統計解析を行えば済むか
らです。
 実際、統計解析ソフトの利用者の多くが統計理論や解析のアルゴリズム(計算の方法)に
ついて熟知しているかというと、そんなことはありません。むしろ、その逆であるといっ
た方が事実に近いでしょう。統計解析ソフトは、「統計理論やアルゴリズムについて詳し
くなくても統計解析ができる」ことを目的に開発されてきたからです。そうでなければ、
SPSSやその他の何種類もの統計解析ソフトが現在のように普及するはずはありません。
そういうことですから、この本を手にしてこれからSPSSで統計解析の方法を身につけよう
と思っている人も、気負うことなく気楽な気持ちで始めて下さい。
 もちろん、統計理論やアルゴリズムを知らないよりは知っていた方がよいことは言うま
でもありません。本来ならば、統計理論や各種の分析手法の詳細について学んだ後に統計
解析ソフトを用いることが望ましいでしょうが、この本は、SPSSを使って統計解析を行う
ときの基礎を身につけることを目的にしていますので、統計理論の詳細やアルゴリズムに
までは深入りしません。それらについては、統計解析ソフトを使いながら少しずつ学んで
いく方が理解しやすいでしょう。統計解析ソフトを使い慣れていくと、次第に統計理論や
アルゴリズムに関心が向いていき、それらについて知りたいと思うようになるはずですが、
まずは、統計理論を学ぶことと統計解析を行うこととは別のことだと割り切って始めるこ
とにしましょう。ちょうど、そのメカニズムがわからないままに自動車を運転し、パソコ
ンや携帯電話を使い、デジカメで撮影するように、統計解析ソフトをデータ解析の道具と
して活用できるようにすることを目指しましょう。
 道具を上手に使うことができるようになる秘訣は、「習うより慣れろ」であることは誰
でもが経験的に知っていることです。そして、スポーツや芸術活動でも同じですが、初心
者にとって大事なことは、形から入っていく、あるいは、その通りに真似をしていくこと
です。学ぶ(まなぶ)は学ぶ(まねぶ)=真似る(まねる)と語源が同じです。学ぶことは
真似ることなのです。統計解析ソフトを利用することも、統計解析の方法を身につけよう
とする際に、まずは形から入っていくこと、真似ることだと思って下さい。理屈は抜きと
割り切って難しく考えないことが上達の早道です。そこで、この本を手にしたら、まずは
パソコンの前に座って、書いてある通りに真似しながら実習してください。
 どのようなソフトでも、それを購入したときにはマニュアル(解説書/手引き書)がつ
いています。SPSSにも、「ユーザーズ・ガイド」というとても詳しいマニュアルがつ
いています。Base Systemと名付けられた基本パッケージには657頁の日本語版「ユーザー
ズ・ガイド」と774頁の英語版「ユーザーズ・ガイド」がついています。そして、SPSS の
プログラムで使う用語やプログラムのしかたについて詳細に説明した1,994 頁もの英文マ
ニュアルもついています。
 それらを読みこなすことができれば難なくSPSSを操作することができますが、マニ
ュアルというのは、どの製品についても言えますが、詳しければ詳しいほど初心者にはわ
かりにくいものです。たいていは一目見ただけで「うえっ」となって全部に目を通すこと
なく投げ出してしまうことになります。詳しい操作方法を解説した分厚いマニュアルは、
使い慣れた人にとっては便利でしょうが、初心者にはちんぷんかんぷんで、かえって興味
を失わせてしまいます。これでは、せっかく統計解析の方法を身につけたいと思い立って
も、統計解析は難しくて手に負えないという印象をあたらめて植えつけられるだけです。
SPSSを使って統計解析を行う基礎を本書で学んだ後に、これでは物足りないと思うよ
うになったら、そうした詳細なマニュアルにも目が向いていくことになるでしょう。その
ときには、あなたは、もう、ビギナーを卒業していることにみなります。
 統計解析に関して誤解されていると思われることについて触れておきましょう。よく、
「統計をいじくったって何がわかるか」とか、「数字だけでは深い意味はわからない」、
「SPSSでちょこっとやったっくらいで分析したなんて言うな」などということが言わ
れます。たいていは、統計解析を苦手にしている人とか、統計解析に理解を示そうとしな
い人の発言です。統計解析を分析の方法として用いている人は、統計解析が万能などと思
っている人は誰もいないでしょう。統計解析が必要であったり、有効な分析と考えられる
場合に統計解析を行っているのであって、何が何でも統計解析をしなくてはならないなど
と考えているわけではありません。
 統計解析−もっと一般的に言えば統計理論−は、どちらかといえば、疑い深くて慎重で、
控えめであることを特徴にしている、と私は思っています。統計理論における確率や誤差、
仮説検定の考え方は、憶測や思いつきと揺るぎない信念で大胆に自説を展開することと正
反対の思考方法だといえます。
 統計解析に馴染んでいくと、さまざまな事象を説明するときに、言ってみれば、おっか
なびっくりというか、こうかもしれない、ああかもしれない、ひょっとすると間違いかも
しれないと思いながらおそるおそる作業を進めていることに気がつくはずです。そして、
統計解析から得られる結果に関しては、「えい、やっ」と言い切ってしまえないもどかし
さを覚えるかもしれません。統計解析なんかしなければ、もっと大胆に自説を主張できた
のに、と思うかもしれません。そう感じるようになれば、あなたは統計解析の真髄に一歩
近づいたことになります。
 最近では、わかりやすいとか簡単に読める本というと、子ども向けの絵本のような「読
まずに見る本」と思われているようです。そして、そうした本でないと多くの人が手にし
てもらえないような雰囲気があります。しかし、初学者がそうした本を必ずしも歓迎して
いるわけでもないことも私は知っています。そこで、「見てわかる」本ではなくて、「読
んでわかる」本になるように努めました。そのために、繰り返しや重複する部分、説明が
長たらしいと思われる箇所もあると思いますが、実習しながら読んでいけば、そうしたこ
とも納得してもらえると思います。
 取り上げた例題やデータは、私の専門が社会学であることから社会科学系のものばかり
ですが、この本で学ぶ統計解析の方法は人文・社会科学、自然科学に関わりなくさまざま
な領域に適用できますから、想像力をたくましくして自分の専門分野の課題やデータに置
き換えて読み進めていってほしいと思います。
 この本で取り上げた解析手法は、SPSSの基本パッケージであるBase System に収録
されているものに限られていますが、その他の解析手法に関しても、この本で学ぶことが
十分に参考になるはずです。また、この本で説明していることは、SPSS以外のさまざ
まな統計解析ソフトの操作や出力の読み方にも参考になるはずです。本書が、統計解析ソ
フトを使いこなしてデータを有効に分析する方法を身につける一助になれば幸いです。
 正誤表(第一刷に関してのみ。第二刷以降は修正されています)

 43頁の図表2−11の「-3μ -2μ -1μ」は、「-3σ -2σ -1σ」。
 3章の92頁の「回帰モデルある」は「回帰モデルである」です。
 2.3章の図表3-28(97頁)と図表6-34(246頁)に不備がありました。修正した図表は、こちらをご覧下さい。
 3.4章の143頁、中ほどに書かれている「判別=」は、「判別=」です。
 5章185章の中段にある「第次産業就業者」は、「第次産業就業者」です。
 6章246頁中段にある「『各グループの分散は等しい』という帰無仮説を棄却できない。」は、
   「『各グループの分散は等しい』という帰無仮説は棄却される。」です。