表紙カバー帯付き
 
 
まえがき
第1章 社会調査とは
第2章 調査を始める前に
第3章 測定尺度の作成
第4章 社会調査と科学的研究
第5章 調査の方法と計画
第6章 調査票の設計
第7章 標本調査の考え方と標本抽出の方法
第8章 調査データの整理から結果の報告へ
索 引





 画像をクリック! 出版社に直接注文すると、送料無料で購入できます

『社会調査法の基礎』「まえがき」より
 この本は、社会調査をするときには適切な方法で行うことができる
ように、社会調査の結果やそれを基にした解釈、説明に接したときに
はそれらを鵜呑みにして物事の判断を誤ることのないように、社会調
査の考え方と進め方についてまとめたものです。
 社会調査は、やろうと思えば誰でもできます。その意味では料理に
たとえることができるかもしれません。料理の達人は料理法を究めた
人ですが、料理法を究めなければ料理ができないわけではありません。
しかし、料理をする上で必要な最小限の知識と技術がなければ、形の
上では料理と言えるかもしれませんが、とても食べられないひどい料
理になってしまいます。そればかりか、下手をすると健康を害する料
理を作ってしまうことになりかねません。社会調査にも同じことが言
えます。料理と違って、健康や生命に直接被害を与えることはないで
しょうが、間違った方法で実施した社会調査は、ひどい害毒をまき散
らすことになります。
 調査をした結果だからとかデータに基づいているからというと、何
となく科学的に思えて、言われていることをつい疑いもなしに受け入
れてしまいがちです。しかし、本当のところは、調査をしたからとか、
調査から得られたデータに基づいているからというだけでは、少しも
科学的でもなければ信頼できるというわけではありません。
 社会調査で恐ろしいことは、でたらめな方法でも調査をすれば必ず
データを集めることができ、データがあれば必ず分析することができ、
分析すれば必ず結果が出ることです。そして、結果が出れば、それを
どのようにでも解釈し、説明することができることです。そのような
結果や解釈、説明を鵜呑みにしてしまうことは物事の判断を誤ること
になります。
 調査ばやりとも言われる今日、さまざまな領域で多種多様な社会調
査が行われています。そして、それらの結果は、テレビや新聞、イン
ターネットを通じて日々報じられています。私たちは、それらの結果
から多くの知識を得たり、意識的あるいは無意識的にそれらの結果に
依拠して物事を判断していることが少なくありません。大袈裟に言え
ば、社会調査を抜きにしては何ごとも語れない時代であるとも言えま
す。
 こうした時代には、調査する側には適切な方法で調査をする責任が
ますます強く求められるのは当然のことですが、もう一方で、その結
果を知らされる側にも求められることがあります。それは、その調査
が適切な方法で行われた調査であるか否かを見抜き、調査結果に惑わ
されたり騙されれないようになることです。その意味では、社会調査
法の基礎を身につけることは、いまや現代人に求められる教養の一つ
に加えられるべきであると考えます。
 2003年に社会調査士資格認定機構(現・一般社団法人社会調査協会
:http://jasr.or.jp/)が発足し、各大学で科学的な社会調査を担え
る専門家−社会調査士−を育成するようになったことは、まさに時代
の反映と言えます。社会調査協会によれば、資格取得者は既に全国で
優に 5,000名を超えています。彼ら/彼女らの今後の活躍によって社
会調査の水準向上と社会調査への国民の理解が深まることが期待され
るところです。
 この本は、社会調査協会によって認定された授業科目の一つとして
私が神戸大学発達科学部人間行動学科で担当している社会調査法の授
業を基にしています。これまでの社会調査関係の講義や演習、実習、
個別指導の経験や私自身の調査経験から、ぜひとも理解しておいてほ
しいところや初学者がつまずきやすいところを平易に説明するように
心がけました。そのために、冗長と感じられるところや、逆に簡潔す
ぎて物足りないと思うところもあるかもしれません。しかし、社会調
査を実施するときや社会調査の結果に基づいた論文や報告書、報道に
接するときに留意すべき基本的事項の大部分は盛り込まれていると考
えています。本書が、社会調査の考え方と進め方を身につける一助に
なれば幸いです。


2017年に第2版を出版しました。誤植を修正し、取り上げている情報を最新のものにしました。