研究集会:「微分ガロア理論, モノドロミー保存変形とパンルベ方程式 」
Abstracts
梅村浩(名古屋大学名誉教授)
I, II: 一般ガロア理論と可積分性への応用 I, II (90分×2)
一般ガロア理論は簡単な原理に基づいた自然な理論であることを説明する。 その応用として、コンパクトリーマン面上の離散力学系(代数曲線から自 分自身への上の有理写像の合成の定める力学系)の可積分性の理論的な定 義を提案する。

IIIa,b: 一般微分ガロア理論入門 (60分×2)
一般微分ガロア理論の基本的なアイディアを19世紀からの発展を説明する。 代数方程式、微分方程式を比較しながら、それがどのようにして現代化され るか解説する。

IV: Groupoid と ガロア理論(90分×1)
Groupoid は自然で有用な言語であることを説明する。その導入が一般微分 ガロア理論を非常に明晰にする。様々な例をあげる。

V: 微分ガロア理論とPainlev\'e方程式の定義について(60分 or 90分)
よく知られたように、Painlev\'e方程式は線型方程式のモノドロミー保存 変形から生じる。その類似として、非線形方程式のガロア群不変変形が考 えられる。 不思議な数学者Drach のアイディア「Painlev\'e方程式はガロ ア群不変変形から生じる」を論じる。

森川修司(名古屋大学)
I: Picard-Vessiot 理論と淡中圏(90分)
線型微分方程式のガロア理論は体の拡大によっても淡中圏によっても定義 できる。この二つの方法について解説する。

II: 非線型差分方程式のガロア理論とその例 (60分)
非線形差分方程式の一般ガロア理論について説明する。この理論は広い応 用を持つものと思われる。

岩崎克則(九州大学)
指標多様体上の有限軌道とパンルヴェ VI の代数解
パンルヴェ VI 方程式の代数解の分類は現在のところ未解決である。 この講演では,パンルヴェ方程式の非線形モノドロミーと指標多様体 上の写像類群作用の力学系をリーマン・ヒルベルト対応を介して結び つけ,前者の代数解と後者の有限軌道の分類問題を同時に考察する。 実は両者は等価であり,一方のみを扱うより,両者相携える方がより 生産的である。特にあるクラスの代数解の分類を,代数幾何に始まり 初等幾何に終わるようなやり方で解決する。問題の完全解決にはまだ 距離があるが,代数解のあり方は以前に比べてずっと明らかになって きたと思われる。

齋藤政彦(神戸大学)
接続のモジュライ空間とモノドロミー・ストークス係数保存変形 (90分)
非特異射影曲線、またはコンパクトリーマン面上の 確定および不確定特異点を許す接続のモジュライ空間の構成と それに対して定まるモノドロミーやストークス係数を対応させる 写像、すなわちリーマン・ヒルベルト対応の性質について述べる. また, モノドロミー・ストークス係数保存かれパンルヴェ性をもつ 微分方程式が得られる事を示し, ガロア理論との関係を探る.